獣姦
異世界にだってエンタメがあるよね。きっと。
ツイッター➡︎飯倉九郎@E_cla_ss
「ってことなんですが、どうしたらいいですか?」
「私はいったい何を相談されているのかしら」
牢屋。
再びそこに戻って来ていた七海が、牢で縛られたファラに尋ねた。
「だから、魔人さんを怒らせてしまったみたいです」
「だから、それがどうしたのよ」
困惑したように、彼女の長い前髪が揺れる。
髪を梳いていないのに、まっすぐに地面に向かって伸びる黒髪は芸術品のようだ。
「いや、確かに僕は恋愛経験はないですけどね。全部少女漫画から得た知識ですけどね。でも悩める女子をぎゅっと抱きしめることで万事解決とか思ってたわけじゃないんです。それはイケメンだけに許されたスキルですから。そこまでおこがましくはない」
「そうね」
「そこだけ肯定しないでください。とにかく、なんと声を掛けていいか分からず、ついやってしまったわけですよ。浅はかにも一番ダメな選択肢をしてしまった。セーブポイントに戻りたい」
七海は何度も何度も壁に頭を打ちつけた。
「魔人が死にたいと、そう言ったのね」
「そうです」
「その短剣で?」
七海の後ろポケットに刺さった碧色の短剣を見てファラは言う。
「はい」
「魔人を傷つけることができる武器……その短剣は、どこで手に入れたのかしら? 何でできているの?」
「あ、そういうのいいんで。僕の悩みを聞いてください」
「探りくらい入れさせなさいよ」
「僕の悩みを聞いてくれたら教えます」
「……はぁ。仕方がないわね。それで?」
「死にたいとすぐに言い出す女性への正しいアプローチの仕方を教えてくれませんか?」
「それだけ聞くとヤバイ女ね」
そう小さくぼやいた後、
「ていうか貴方、アプローチって言った?」
「ええ」
「もしかして、魔人を好きになったの?」
「………………僕、そんなこと言いました?」
「そうとしか聞こえないけど」
「………………いやだなぁ、友達としてですよ。友達として」
「顔が赤いわ」
「………………」
鏡が無いから確認しようがない。
しかし七海は思うところがあったのだろう。さっと視線を逸らして逃げる。
「ありえない……魔人に肩入れするだけでも迫害ものなのに、ましてや恋慕の情を寄せるなんて……汚らわしいわ」
「なんですか。潔癖主義ですか。ファラさんもしかして、付き合ったこととかないですね」
「王家に生まれし宿命。恋愛に現を抜かしている暇などないわ。私の人生はすべて国の為に捧げるのだから」
「それただの政略結婚じゃないですか。人の恋にいちゃもんつける資格ないですよね」
「恋と認めたわね」
「おっと」
誤魔化すように視線を泳がせる七海に、ファラは飽きれたように再度嘆息する。
「なんだか、貴方と話していると、毒気が抜かれるわ……」
「褒められては……いないな」
「私もその短剣に興味がある。魔人を殺せる唯一の希望よ。その情報が得られるなら、どんなことでも喜んで協力するわ」
「本当ですか? じゃあとりあえず全部脱いでください」
蹴られた。思い切り。
「最低ね」
「冗談ですよ。凌辱ものは趣味じゃありません」
「知ってる。趣味は獣姦ものよね」
「魔人さんを獣に分類するんですか……というか、なんでそんな言葉知ってるんですか」
「それじゃあ私が貴方に正しい女性へのアプローチの仕方を教えてあげる。代わりに、成功したらその短剣を私に頂戴」
「待ってください。先に進まないでください。何故あなたのようなお姫様の口から『獣姦』などとい単語が出てきたんですか」
「何、やるの? やらないの?」
「やりますよ。でもその前に――」
「それじゃあさっそく行ってみましょう!」
掻き消された。




