-翼妖異の疵釁の翼-
どうも今日は。うーん、年末年始って本当忙しいですよね。御蔭で余りと言うか全く小説が進んでいません。
むむ・・・。世界の神話や、幻獣図鑑、目を通したいんですけどね。此は時間掛かりそうです。
さて、其は置いといて、今回はハルピュイアさんです。
上半身が人間で翼を含む下半身が鳥。醜く、貪欲で、汚物を撒き散らすと言う正に迷惑しか掛けない悪魔的な鳥です。ゲームとかでも良く下級のモンスターとして出て来ますよね。
でも何か筆者、此の子には愛着があって、可愛いんですよね。名前もハルピュイアやハーピーって、春とかハッピーを連想しちゃって可愛らしいです。だから先の悪事も、一寸質の悪い徒の様な気がして、態と芥をばら撒いて、怒らせつつも、片付けている様を少し離れてじっと見ていてくれるみたいな。何となーくな可愛さを感じます。
そんなハルピュイアさんですが、だからなのか何なのか、今回は割とHappy End。
醜いと語られるハルピュイアですが、其の翼がどんな彩なのか御存知ですか。
とある渓谷に棲む翼妖異には常に付き添う大鷲が居た
大鷲は翼妖異の艶やかな翼を、翼妖異は大鷲の勇敢さに恋をした
二羽は常に隣に寄り添って飛んでいた
其の渓谷の近くには小さな村があった
凱風の強い此の地に棲む者は皆弓矢を携え、鳥を捕らえて生きていた
或る日二羽が渓谷の隙間を縫っていると其処を通り掛かった男は翼妖異の醜さに恐れをなし、直ぐ様矢を放った
翼妖異は直ぐ様大鷲を護ろうと翼を広げた
だが大鷲は其を潜り抜けてしまい、矢を胸に受けて絶命した
嘆きの囀りを上げて翼妖異は男に飛び掛かり、其の心臓を啄んだ
もっと翼が大きければ屹度届いたのに
斃れ、動かなくなった男を踏み締め、翼妖異は男の衣服を剥ぎ取り、捕らえていた鳥の羽根を毟った
そして其等を己の翼に巻き付けた
一回りは大きくなった翼妖異の翼
でも此では未だ未だ足りない
もう大鷲は戻らないと言うのに、失った心の隙間を縫う様に翼妖異は翼を大きくする事に次第に執着して行った
其から翼妖異は屡々村を訪れ、人を襲っては其の衣服や羽根飾りを命と共に奪って行った
村人は翼妖異を警戒する様になり、翼妖異を捕らえようと何度も弓を引いた
だが翼妖異の巧みな翼使いと鋭い動体視力により中々捕らえる事が出来なかった
次第に翼妖異の翼は継ぎ接ぎだらけのちぐはぐな大翼となって行った
余りの重さに蹌踉めく事もあったが、其でも翼妖異は求め続けた
彼を、大鷲を護れる翼を
或る日、翼妖異がとある母子の帯を狙って襲うと、母は子を庇った
だが子が其の隙間を縫って母の前に立ちはだかった
其の為翼妖異の鋭い嘴が深々と突き刺さり、子は命を落とした
帯を奪った翼妖異の目の前で母は子の亡骸を抱いて涕き崩れた
翼妖異は其の光景に知れず彼の大鷲を重ねた
噫、やっと分かった
彼の時、私の翼が足りなかったのではなく、大鷲が私を庇ったのだ
そして彼は余りにも勇敢だった、死を恐れぬ程
そんな彼が褒めてくれたのは私の彼の翼だったのだ
翼妖異は纏っていた偽りの翼を裂いて捨てた
姿を現したのは此迄の日々で傷付き、羽根が抜け落ちてみすぼらしくなった己の翼
そんな翼妖異に一本の矢が放たれた
身軽になった翼妖異には其を躱す事等造作もない
だが翼妖異は敢えて其を自らの胸に受けた
翼妖異の躯は成す術もなく渓谷へ落ち込んだ
もう翼は痺れて動かない
でも分かっている
もう直ぐ此の躯は凱風の様に軽くなって此の旻を舞い、羽搏くだろう
大鷲が愛した此の翼で
然うすれば屹度、彼も彼の旻の彼方から私を見付けてくれる筈だ
薄く笑みを湛えた儘、翼妖異は瞳を閉じるのだった
-Fin-
ね、Happy Endでしょ?え、人間からしたら堪った物じゃないって?もっと早く気付いたらあの子は死ななかったんじゃないかって?あ、いや、子供嫌いなんで別に・・・冗談です。ま、あの子は命を張ってハルピュイアに気付かせてくれたんだから十分ですよ、うん。
後つい発動しますね。恋人(人じゃないけれど)は死んじゃう法則。取り敢えず誰か身近な人が死ねば悲しい物語の出来上がりです。今回のシリーズは割と然う言ったパートナー系に集中してみました。
・・・割と今回の話は筆者的に気に入っています。実は村で死んだ者は渓谷に捨てられると言う背景も考えていたんですが、だからハルピュイアは谷底で今も死肉を食らっていると。でも然う考えるとラストの落下シーン、絶対凱風に乗って腐乱臭が漂い、臭かっただろうな、と。其はムードとして如何よ、と言う事で却下にしました。只此の設定は何処かで使うかも知れませんね。
死は「過程」であって「結論」じゃない。そんな話が好きなので今後も其の方面で行きたい物です。今はユグドラシルでの場面場面にでも焦点を当ててみると良いかも、と思ってたり。又間が空きますけれど、忘れた頃に書けたらなと思います。
では良い物語を。