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黒の瞳の覚醒者  作者: 一条光
六章~目指す場所~
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高くたかく

「えっと、先ず話を聞いてもらう前に、俺の話に信憑性を持たせるために見て欲しいものがあるんですけどいいですか?」

「……その前に、君たちの名前を聞かせてもらえるかな? それとそれが本当に必要な事なら構わないけど、本当に必要なんだね?」

 すっげー変なモノを見る目でこちらを見て来る。この状況じゃ当然なのは分かってるけど、辛いなぁ。こういうのが嫌で外に出られなくなったのに…………ヴァーンシアではほぼ外に居たけど、帰ってきたら引きこもってた時の感覚まで戻って来やがった。視線が怖い…………やらないと駄目だ! あの娘の両親を捜すのだって警察に協力してもらわないと出来ない事なんだから、ちゃんと話して信じてもらうんだ!

「必要です、突拍子もない話になるんで、それを信じてもらう為には絶対に必要なんです」

「…………分かった。でももし、いい加減な事を話して誤魔化すなら、君の立場が悪くなる事も理解しておいてほしい」

 こりゃ完全に疑ってかかってるな。一発デカい電撃を空に撃ち上げてビビらせてやる。

「分かってます。でも俺が話す事に嘘はないですけど、すぐに信じてもらうのは難しい事なんで、それを証明するものを見てもらいながら聞いてもらいたいんです」

「……ふむ、じゃあ先ずそれぞれの名前を言って、話はそれから聞くから」

 一応ちゃんと見て聞いてくれる気になってくれた、かな? リオ達のおかげで多少人慣れしてたから我慢して目を見て話せたのが良かったのかも。


「俺は如月航です。それからこっちが――」

「フィオ・ソリチュード」

「ティナ・クオリアよ」

「お二人は外人さん? 日本語がお上手ですね」

 あぁ、そういえば二人とも言葉が通じてる。あの空間を通る事が関係してるんだろうか?

「ニホンゴって何?」

「ガイジンって言うのも分からないわね」

「あ~、えっと、日本語はこの国の言語の事で、外人は外国人、この国じゃない別の国の人の事かな」

「?」

 警官がすっごい不思議そうにしている。流暢に日本語を話してるのに何故そんな事が分からない? って顔だ。


「失礼ですが、お二人のその髪はカツラですか?」

「本当に失礼ね! 正真正銘地毛よ。まったく、この世界の人間ってみんなこうなの? ワタル」

 綺麗な髪なのにカツラ扱いされたのがムカつくのは分かりますけど大人しくしててください。

「この世界? その格好だし何かになりきってるとかですか? 真面目に答えてもらえないと困りますよ」

「っ! 私がふざけてるとでも言うの?」

 あぁ、めんどくさい感じになっていく…………。

「姫様、とりあえず大人しくしててください。ややこしくなるんで」

「姫様? 君もふざけてるのか? さっき真面目に話すから、と言ったのも嘘だったのか?」

 おぉう、完全に疑りモードで威圧してくる。やめてくれよ、そんなんされたら話し辛い。

「ワタル、許可」

 っ!? お前は何をする気だ! 警察敵に回したら日本に居られなくなるだろうが! フィオも不機嫌モードだ。

「駄目ダメ、大人しくしてろ、話が進まん」

「君たちは真面目に質問に答える気がないという事でいいのかな?」

「いえ! ちゃんと、ちゃんと話しますから、二人の態度にもちゃんと理由がありますから…………えーっと、先ずこれを見てください」

 フィオの頭からもさを取り上げて警官の前に出す。

「このぬいぐるみが何だって言うの? やっぱりふざけているよね」

『きゅぃー! きゅぃー!』

「……この鳴く玩具がなんの証明になるのかちゃんと説明出来るんだろうね?」

 生き物だと思われてない…………もさは不満があるのか、また鳴き声が変わっている。フィオをペシペシしてた時もこの鳴き声だったな。

「あの、こいつはぬいぐるみでも玩具でもないんです。抱いてみてください、ちゃんと生き物ですから」

 警官が不承不承もさを受け取った。


『ぎゅぃー!』

「ぶっ!?」

 もさが警官の顔にパンチして、その後バク転しながら俺の頭に乗った。

 お前そんな芸が出来るのか…………フィオか? フィオが飼い主だからか?

「今ので分かってもらえたと思いますけど、こいつは生き物です。それもこの世界には存在しない種です」

「……存在しない物が今ここに居るのはおかしいだろう? もしかして希少な動物の密輸までしてるのか? 君は」

 までってなんだ!? 誘拐か? 少女誘拐と抱き付いた事での痴漢行為が、もう付加されてるのか!?

「さっき別の世界からこの世界に来たんだから居ても不思議はないでしょ? ワタル、この人間頭が悪いわ」

 っ!? やめて姫様! 侮辱罪とかになったらどうすんの!?

「……さっきからこの世界とか別の世界とかおかしな事を言ってるけど、服装や趣味は自由だけどね、質問には真面目に答えてくれないと困るんだよ。君たちだってあらぬ疑いを掛けられるのは困るだろう?」

「だから! ――」

「分かりました! この二人が異世界の人間だって証明出来れば話を信じてもらえますよね? 証明しますんでちょっと外に出てもらっていいですか?」

 イライラしている姫様を遮って話を進める。

 ヴァーンシアでは姫なんだしこんな態度で接せられたら怒っても当然なのかもしれないけど、今はまだ我慢してほしい。

「……まだつまらない事をするつもりなら止めて、真面目に話してくれないかな」

「いや、絶対に信じるしかないものですから、お願いします。俺も警察に頼みたい事があるからちゃんと話がしたいんです」

「…………はぁ~、これが最後だよ」


 どうにか警官を外へ引っ張り出した。

 俺たちを見てる人が結構居る。さっきの野次馬が残っているのか、もしくはフィオと姫様の服装に依るものか、どっちにしても目立つな……でも見てる人間が多い方が証明になるか?

「それじゃあ、先ずこいつ、フィオは別の世界の人間で身体能力が地球人なんかより遥かに高いんです」

「…………」

 警官は呆れ顔だ。面倒な奴に職質掛けちゃったなぁ~って感じの、心底この話を早く終わらせたい風だ。

「フィオ、全力でジャンプしてくれ」

「なんで?」

「お前が凄いってのを見せて異世界人だってのを信じてもらう為だ」

「別に信じなくても放っておいてワタルの家に帰ればいい」

 出来るならそうしたいわ! でも警察に用もあるし、異世界の事を信じてもらえないと少女の、鈴木真紀の両親を捜してもらう事も出来ない。娘が居なくなってるんだから捜索願を出してるだろうし、警察に協力してもらえればすぐに家族の元へ帰してやれる。だからここで信じてもらう事は絶対に必要だ。

「頼むよ、後でなんでも言う事を聞くから」

「! なんでも?」

 なんでもは早まったかもしれない…………。

「あっ! ズルいわ、それなら私がやるから、私の言う事を聞きなさい」

「いや、姫様は駄目です」

「なっ、なんでよ!?」

 …………分かってないのか? スカートだぞ? こんな公衆の面前で姫様のパンツを晒すのか? …………駄目ダメだめ! 絶対に駄目!

「姫様が跳んだらスカートなんだから下着が見えるでしょう? それともこんな所で下着を晒す痴女ですか?」

「っ!? や、やめるわ…………」

 真っ赤になって俯いてしまった。気付いてなかったんだな、結構抜けてるんだろうか?

「…………それで? 何時までその話は続くの? 僕も暇じゃないんだよ?」

「フィオ頼む、俺に出来る事ならするから、見てる奴全員が驚くくらいのやつを頼む」

 背に腹は代えられない、恩返しをしたいとも思ってたんだし多少無理な事を言われたとしてもどうにかしよう。

「ん」

 返事をしたフィオが消えた。


「え!?」

 警官は驚愕して微動だにしなくなってしまった。

「おい、今人が消えたぞ!」

「あの女の子どこいった?」

「人が消えるなんてあるわけないだろ」

「長髪の男が異世界人とか言ってたけどマジか!?」

 野次馬がざわつき始めた。にしても…………本気出し過ぎだろ、全員フィオの動きを目で追えてない。フィオがどこに居るか分かってるのは俺と姫様だけ、よく跳ぶなぁ~。近くにある一番高いビルの半分か、それ以上の高さまで跳んでる。改めて物凄いちびっ子だと思い知らされる、俺が強化使ってもあの半分にいくか、いかないかぐらいだろうな、たぶん。

「ふぁ~、すっごい跳ぶのね、あの娘。私やナハトでもあそこまでは跳べないわ、私は能力を使えばどこまででも跳べるけど、身体能力だけじゃ無理ね。混血者ってあんなに凄いのね」

「あ~、フィオは特別ですよ? 混血者の部隊で最強だったそうですから」

「ふ~ん、そんな娘に懐かれるなんて……どうやって射止めたの?」

 射止めたってなんだ…………懐かれては、いるかもなぁ。なんでだろ?

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