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黒の瞳の覚醒者  作者: 一条光
一章~気が付けば異世界~
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逃亡生活1

「逃げたぞ! 捕まえろ!」

 必死に走る。

 人にぶつかった。

「奴隷人種が! 近寄るな!」

 無視して走る、けど前に全然に進まない。

 どうなってるんだ!

 いくら鈍った身体だといっても全然進めないなんてことがあるのか?!


 とうとう追いつかれて、組み伏せられる。

「さっさと殺せ!」

 槍が俺の顔目掛けて落ちてくる。




「うわぁぁぁぁ」

 鈍い痛みが後頭部に走る。

「いってぇぇ!」

 頭をおさえる。そのあと慌てて自分の顔を触る。大丈夫、穴は開いてない。周りを見回してみたが人なんて居なかった。

「夢だったのか……」

 頭が痛い、跳ね起きたせいで、もたれていた木に頭を思いっ切りぶつけたみたいだ。

 最悪の寝覚めだ。身体も全身筋肉痛みたいだ。特に足がひどい。

 なんでこんな目に遭わないといけないんだ。

 あんなに殺意を向けられるようなことしてないぞ。


 大体なんだよイカイシャって――いかいしゃ?

 もしかして異世界の者ってことで異界者?

 異世界人って認識されるってことは、やっぱりここは異世界なのか…………。

 他にも何か言ってたよな。確か奴隷人種とカクセイシャ?

 奴隷人種は分かる。たぶんこの世界では異世界人を奴隷扱いするんだろう。最悪な世界に来たもんだ。

 

 ならカクセイシャはなんだ? 

 カクセイシャになったらどうするんだ、って言ってたんだから異界者がどうにかなるのか?

 カクセイシャ、覚醒者? 目覚めた者? 何に目覚めるんだよ……。暴走した覚醒者とも言ってたな……。

 この世界は異界者に超能力でもくれるのか? 馬鹿馬鹿しい。

 なら今すぐにこの状況を覆せる力をくれよ!


 この世界の人間じゃなくても、人間は人間だろ。なんであそこまで酷い扱いをされなきゃいけないんだ。

 やっぱり人間なんてろくなもんじゃない。

 言葉は通じても、心は通じない……。

 安全な状態で昨日のことを思い出すとイライラしてきた。


 くきゅうぅぅぅ。

 腹減ったな。とりあえず何か食べよう。

 そう思った時初めて、自分がリュックを背負ってないことに気が付いた。

 え? なんで? 周りを見てみるけどリュックはない。

 落とした? いつ? 昨日逃げてる時にか?

 頭が真っ白になる……。食料、どうすればいいんだよ。こんな世界で食べ物の確保なんて容易じゃないぞ。

「はぁ、最悪……」

 俺の所持品はジーンズのポケットに入れてたスマホだけになった。


 空腹は気付かなけりゃ、しばらくは我慢出来たんだろうけど、一度気付いてしまったら抑えが利かなくなる。

 腹減ったし喉も渇いた。なのに食料も無いし水も無い。おまけに金も無い。

 まぁ、金が有ってもあの扱いだから買い物なんて出来そうにないけど。

 何か探さないとなんだけど……。

 二日連続で動き続けたことは鈍った身体にはかなり堪えたらく全身に痛みが走ってまともに動けそうにない。

 このまま異世界で餓死が俺の運命ですか? 神様

 こんなことならもっと食べておけばよかった。ここが異世界なら、もう二度と手に入れるとこが出来ない貴重な菓子だったのに。

 後悔で心が満たされる。身体から力が抜けて、気力もなくなる。

 HP1MP0って感じだ。


 もういいや……。だるいしもう一度寝よう。ここは木の陰になっててそんなに明るくないし、寝れるだろ。

 そう思って瞼を閉じると、昨日の光景が再生される。

 最悪だ、せめてさっきみたいな夢は見ませんように。


 肌寒さを感じて目が覚めた。既に日は落ちて辺りは真っ暗だった。

 よくもまぁ、こんな場所で長時間寝れたもんだ。

 今何時だろ?スマホで確認しようとしたら電源が切れていることに気が付く。

「マジか……」

 俺の最後の所持品は異世界の貴重な道具から、ただの小さな板切れに成果てた。


 あぁ、もう俺には何もない。いっそ奴隷になりに行こうか。奴隷でも扱き使うために食事位は出してもらえるだろうし。そんなことを思いながらもう一度眠りにつく。


 鳥らしき鳴き声が聞こえて目を覚ます。

 立ち上がって伸びをする。まだ結構痛いけど昨日まる一日寝たからか、痛みが大分マシになっていた。

 これなら動けるか、と身体を動かしていたら左腕に痛みが走った。

「うわぁ………………」

 そういえば兵士の攻撃が掠ってたんだった。傷の部分が腫れて化膿してしまっている。

 手当……なんて出来るものは持ってない。この世界の人間も手当なんてしてくれないだろう。奴隷の手足がなくなろうが問題ないって言うような連中だし。


 とりあえず清潔にした方がいいだろう。傷を洗えるような水場を探さないと。

 水場を探すために歩き出したけど、人と遭遇することが怖くて山の奥へ奥へと進んでしまった。当然山道なんかがあるはずもなく、足場の悪い場所をひたすら彷徨う。


 この三日風呂に入ってなく汗を大量にかいたせいで臭うのだろう。虫がやたら纏わりつく。

「気持ち悪い……」

 あぁ、これも意識しなけりゃよかったのに。汗をかいてベタベタと衣服が張り付く感じは物凄く不快だ。

 風呂は無理でも水浴び位したい、汗を流してさっぱりしたい。


 山を下りてしまおうかとも思ったけど、殺されかけたという記憶からどうしても山を下りるという行動には出られなかった。


 そうやって山の中を彷徨い続けたが、水場を見つけられないまま夜になってしまった。

 また野宿か……。もう四日も連続で野宿してるのか。こんな世界じゃ俺には野宿以外の選択肢はないか。

 その場に座り込む。どこであろうと結局野宿なのだからどこでもよかった。


 傷が痛む、このまま悪化して腐り落ちでもしたら嫌だな。

「…………」

 嫌なことを考えたせいで不安が大きくなってしまう。

 この世界で野垂れ死にするのが母さんを死なせた俺への罰なのかもな。


 もうなにをするのも面倒だった。

 本当にこのまま餓死するまでじっとしていようか。

 見知らぬ土地を彷徨い続けるのも疲れた。

 それにこんな世界じゃ異界者の俺はまともな生活なんて送れないだろう。ならいっそこのまま終わってしまってもいいんじゃないだろうか?

 誰にも看取られることなく山の中で死ぬとか空しいけど、あんな人間達に囲まれて殺されるよりかは幾分マシなきがする。

 ぼんやりとした頭でそんなことを考えながら眠りについた。

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