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偽りの俺と親友の手  作者: 沫雪(AWAYUKI)
第一章 綻ぶ底辺学生の仮面
4/13

在庫処分

 吹き荒れる竜巻の中、二人の男は思考を働かせていた。

 一人はこの戦いを速やかに終わらせる為、一人はこの状況の打開策の為、其々が考えを巡らせていた。


 「(この竜巻、一向に終わる気配がしねぇな。オマケに、視界に限りじゃあいつに姿を全く捉えられねぇ)」


 竜巻は、遠心力に従って目を作っているが、吹き荒れる風によって目を開けられない。ヴィクセンはイツキの姿を捉えようとしているが、瞬きをするように確認しただけでも全く見えない。周囲を同じように確認したが、全く姿が見えない。


 「【システムウィンドウ】……!」


 ヴィクセン・オルフェグラン

 Lv.32

 HP:461/1157

 MP:287/287

 AP:231/632


 イツキ・ハルヨミ

 Lv.25

 HP:633/847

 MP:404/971

 AP:1583/1583


 「徐々にHPが削がれてやがる。とんでもねえもん隠し持ってやがったな。長期戦になるに連れ、こっちが不利になる」


 ヴィクセンのHPは482から461にまで減っている。このまま蓄積していけば、ヴィクセンは確実に負けるだろう。当然、イツキからの攻撃が加わらないわけでもない。

 だがそうなれば、イツキが何処に居るかが容易に解る。ヴィクセンは、それしか頼る手が無い。が、これに頼るのは危険である。ヴィクセンが思う限りのイツキは、狡猾だろうと思っているからだ。


 一方、イツキはまだ空中待機中である。


 「空爆という手段しかないな。が、位置が確実にバレるな、真上から落としたら。さてはて、この手は上手く行ってくれるだろうか」


 丁度俺は、標的の真上にいる。勿論、ここから落とすつもりもない。

 そこで考えたのが、内包されている魔力核を極力圧縮し、極限まで最小化をした元素魔玉(エレメントボム)が役に立ちそうだ。

 これ作るのに何度も爆発を起こして大変だったな〜。楽しかったけど。

 サイズは親指一本分。とても軽くて矢に括り付けることが可能。威力は高位魔法に匹敵する。ただし、込める魔力が完全に適切な量でなければ中位魔法程度だ。失敗例は、少な過ぎると大したダメージにならない。適切量の誤差25までなら中位魔法。これを過ぎると手元で暴発する危険性がある。

 魔力操作に優れた者ならば、割と楽に成功できる。

 名前は極限魔玉(リミットボム)。属性指定がなく、ただ魔力を込めれば無属性攻撃になる。ただし、使用者の適性が、水属性だったり火属性だったりすると変化する。また、別の元素魔玉(エレメントボム)と一緒に投げるとその属性に染まる特色を持っている。


 「ただなぁ、作るのが豪くシビアで、量産が出来ないのが欠点だな。創る時にはかなり神経を磨り減らした地獄が……。在庫所持してる個数は……十個か。行けるな」


 極限魔玉(リミットボム)を三つ取り出し、どのタイミングで投げるかを考える。目暗まし程度でいいだろう。最も、牽制だけでもかなり食らうやつを使うが。

 ついでに、砂塵魔玉(サンドボム)も混ぜておくか。


 「(目標固定。魔力充填まで、5、4、3、2、1……放て!!)」


 荒れ狂う竜巻に向かって投げ、それは、風に乗りながらもヴィクセンの方へ向かって行く。そして、目の前で砂を巻上げながら爆発した。


 「ブアッ!! ペッ、ペッ! 砂が口に入りやがった!」


 完全に砂がヴィクセンを覆った後、俺は急降下をし、ヴィクセンの背後を取った。そして、着地の勢いを回し蹴りの勢いに乗せる。が、腕を滑り込ませられ、防がれた……。それでも、ダメージは貰ったらしく、衝撃を殺しきれなかったらしい。体がよろめいたからだ。


 「ぐおっ!」


 続けざまに反射した足で地面を蹴り、左足で腕を蹴り上げる。腕の防御を壊し、体制が崩れる。再び地面を蹴り、体を無理矢理捻り、がら空きの胴に右脚で蹴撃する。その際に、障壁で脚をコーティングし、極限魔玉(リミットボム)を挟み込む。念には念を入れた攻撃なので、今度は絶対に防げない。

 先ず、強化された蹴りが胴を襲う。ヴィクセンは息を無理矢理吐いたが、追い打ちに、極限魔玉(リミットボム)が爆発した。

 俺は反対側に横回転しつつ、威力を殺ぐ。無事に成功した様で、ノーダメだ。そして、そのまま立ち上がり、埃を払う。

 ヴィクセンは、何度かバウンドしながら無様に転がる。ザーマーァー!

 多分、最初の蹴りの時点で、【サイト】でなければ確実に骨に罅が入る。二撃目の攻撃で肘は砕かれ、三撃目で肋骨が折れ内蔵に突き刺さり、場合によっては破裂、追加攻撃の爆発で、内臓は見事に掻き乱されるだろう。当然、即死は免れん。

 が、あいつはそれでも尚立ち上がろうとする。HPがまだ残っているみたいだ。咳き込みながらも、何度も崩れかけては立ち上がった。

 ……風が、止んだ。吹き荒れる竜巻が消え、視界が元に戻った。


 『おーっと! ヴィクセンは瀕死の状態だぁ! しかし、しれでも立ち上がる! なんてガッツなんだ!』


 『しかし、もう手は無いでしょう。ここまで圧倒され、立ち上がる事が限界ですね。HPの残量を見ても、勝ち目は無いです』


 本当にそうだよ。かなりの精神力だ。純粋に、賞賛に値する。しかし、限界のようだ。もう、引導を渡してやろう。

 ただし、タダでは死なさない。俺は、クックック……と嗤いながら―――声は出てないが雰囲気だけで―――宣言する。


 〝僕、警告したよね。次、喧嘩売った時に後悔させてやる。殺してやる、ただ死ねると思うなよ、て。君の処遇は決定したよ。『在庫処分の刑』だよ〟


 ヴィクセンは、睨むことしかできない。アレだけ派手に食らっても尚立ってられるが、それだけでは敵わないものが多いだろう。努力さえすれば、三から二階級まではいけただかも知れない。が、力の振るい方を誤った。一体何がコイツを、不良にしたのかは興味がある。もし、友としての立場であれば、正しく導いていやりたいと思う程だ。

 だから、俺はソイツに、ヴィクセンに対する態度を少し改めよう。後はヴィクセン次第だ。


 〝約束通り、君に興味を持ったから名前を覚えてあげるよ。ヴィクセン君。だけど、もっと僕に近づきたいなら、君は自分を見つめ直してから声を掛けると良い。先ずは無闇に力を振り回さない事だね〟


 俺は飛び上がり、足元をコーティングして極限魔玉(リミットボム)を爆発させる。爆風を利用したハイジャンプだ。

 そのままの状態で、俺はアイテムバックを取り、逆さまにした。


 『『え!?』』


 普通誰もがやらない事、それは元素魔玉(エレメントボム)の大量消費。一気に使う事。大量の初期作品に混じって、試作品が混じる大規模な空爆だ。


 〝罰の清算ね〟


 ヴィクセンは真っ青な表情で固まり、次に発した言葉は。


 「うぎゃあああああぁ!?」


 絶叫と共に、爆音に掻き消される音だった。ついでに俺もただじゃ済まず、巻き込まれた。当然、こうなる事を分かった上で多重障壁を張り、後方に飛ぶ。

 広範囲に広がる爆風に押されながら、様々な花火の色を楽しんでいた。

 爆風が鳴り止む頃には、ヴィクセンは消えていて、周りが静かになった。そこに、無機質な声が響く。


 《オーバーキル。勝者、イツキ・ハルヨミ。リザルトを表示します》

 ヴィクセン・オルフェグラン

 Lv.32

 HP:0/1157

 MP:232/287

 AP:43/632


 イツキ・ハルヨミ

 Lv.25

 HP:438/847

 MP:404/971

 AP:1583/1583


 俺は結果を見た後、さっさと闘技場を後にして家に帰った。

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