メリークリスマス(リア充は見ちゃいけないよ!!)
メリークリスマス!!
十二月二十五日の早朝に目が覚めたカップルはお互いにそう言い合うのだった。
「良かったよ……君が傍に居てくれて……」
男は女の肩に手を回して寄り添う様に身体を寄せながらそんな言葉を口にする。
「本当に?」
そう言って女は、男が自分と一緒に居て良かったのかともう一度確認する。
「ああ、本当さ……だって、今までクリスマスは友達に予定が在るって言って、家族でクリスマスパーティーしてたんぜ?」
男がそう言うと彼女はクスクスと笑顔をこぼして彼の言葉の続きを聞く。
「それが、やっと……まとものなクリスマスの予定が出来たんだ。こんなに嬉しい事はないだろ?」
「そうね」
そう言いながら女は男に寄り添う様に身体を預けて、男の膝を軽く叩く。
「そうだ、ねえ、クリスマスプレゼントは?」
「私は用意したわよ」
「本当に? 俺は昨日の夕食とケーキと花束と愛の営みで十分、君へのクリスマスプレゼントになったから、今日はもう流石に要らないよね?」
「あ~、そしたら最後の愛の営みはアナタへのクリスマスプレゼントになるんじゃない?」
「じゃあ、愛の営みは抜かそう。それ以外が君へのクリスマスプレゼントだ」
「ええ、昨日は素敵な夜だったわ」
そんな他愛の無い話をして男と女は軽い口付けを交わす。
「それで、君が用意したクリスマスプレゼントって?」
男は女が用意したというクリスマスプレゼントに興味津々の様子でそう聞いた。
「何だと思う?」
女は男をじらす様な言葉で返し、男は少し考えて自分が喜びそうなモノを思いつく。
「わかった……裸の君がピンクのリボンを身体中に巻き付けて「プレゼントは私よ」って奴だ!!」
その言葉を聞いた女は軽く笑いながら呆れた口調で男に一言返す。
「違うわ」
「じゃあ、なに!? 俺が喜びそうなプレゼントって他に何が在るんだよ?」
「う~ん、まずは目を瞑って……」
男は女の言葉に従い目を閉じこういう。
「もしかして、今、脱いでる?」
「脱いでない」
女は目を瞑る男から去り何処かへと行ってしまう。男は足音からそれを察し、遠くへ向かった女に向かってこう叫ぶ。
「そうだ!! わかった!! ピンクのリボンじゃなくて、赤いリボンの方が君には似合ってる!!」
女は男のそんな言葉を聞いて笑みをこぼしながら戻って来た。そしてその手にはクリスマス仕様の包装された長細い小さなプレゼントを手に持っていた。それを女は目を瞑る男の手に無理矢理渡し、またこう聞いた。
「何だと思う?」
「目はもう開けていいの?」
「いいわよ」
「よし!!」
男は気合を入れて、手に掴んだ小さなプレゼントの中身を予想し始める。
「なにこれ?」
「クリスマスプレゼント」
「う~ん……この細長い箱に入ってるのは俺が一生使うこと無いだろう万年筆とかじゃないよね?」
「違うわよ」
「ピンクのリボン?」
「違う」
「えっ、じゃあ何だ……」
男が女から貰ったクリスマスプレゼントの箱を軽く揺らすと中に何かが入っている事が分かり、それは箱の形状から長細い何かまではわかっていた。だが、流石にもう女の謎々には我慢の限界だった男はこう聞くのだ。
「ギブアップ、もう中身を開けても良い?」
「ええ、いいわよ」
男はクリスマスプレゼントの包装を破り、中に入っていたモノを取り出して不思議そうな顔をしながら女に問いかける。
「あ~……えっと……妊娠検査薬?」
「そう」
「なるほど……生物学的上、俺は妊娠できるかわからないけど頑張ってみるよ……」
「そう、頑張って」
男は手に持った妊娠検査薬の箱と彼女を交互に見て何かを察してこう聞いた。
「もしかして、妊娠したかも知れない?」
「さあ? 中を開けてみて」
「おい、嘘だろ……」
男は驚いた表情で慌てながら箱の中身を開けて妊娠検査薬の棒を取り出した。
すると、そこには妊娠を示す赤い線がくっきりと表示されていた。
「じゃ、じゃあ……」
「そうよ、アナタはお父さんになるの? それで私はお母さんにね」
「マジかよ……メリークリスマスとハッピーバースデーが同時にやって来たよ、おい……」
男は唖然としながら何処か遠くを見つめてそんな言葉を呟き、女は男にこう尋ねる。
「で、どうかしら? 私からのクリスマスプレゼントは?」
「最高だよ!! ありがとう!!」
そう言って男は女を強く抱きしめ、女も男を抱きしめ返す。そして二人は小さくこう呟き始める。
『メリークリスマス……』
こうして二人のカップルは今日という日を大切な思い出として、忘れる事は無いだろう。
「ねえ、俺としては君がリボンでグルグル巻きにされてるってプレゼントも捨て難いんだけどさ……」
「それは、来年考えましょ……」