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ムキムキでも恋したい。シリーズ

ムキムキでも秘密の恋がしたい。

作者: みなみ

「ずっとあなたが好きでした。

どうか嫁にしてください。」



夕日をバックに、手を取り合うカップルが二人。

まるでよくある愛の囁きですが、ひとつだけ普通と違うことが。

男性の方は小柄で女性と見紛うほど可憐な青年で、

女性の方は大柄の、ムキムキなマッチョだったのです。

ほほを染めた青年が静かに頷くと、二人の影は近づき………



☆☆☆☆☆☆


ある国にそれはそれは勇猛果敢な凛々しい姫様がおりました。


剣をふるえば、ばったばったと相手をなぎ倒し、

組手をすれば、軽々と投げ飛ばし蹴り飛ばし、

走れば風のように早い。


その肉体は鋼のように強く…なんと言いますかムキムキマッチョでした。


姫様は六人の弟妹がおりました。

二の姫から五の姫まで、おまけに末の弟も皆が美しいと評判の王妃様に似ましたが、その姫はそれはそれは父である国王の面差しに似ていましたので強面でした。

父である国王は周辺諸国どころか隣の大陸まで名を轟かすほどの強さを誇り、かつ戦場では冷酷無慈悲な悪魔の王と呼ばれ恐れられておりました。

そんな父に似た姫は大変男らしい顔立ちな上、ムキムキマッチョでした。




☆☆☆☆☆



「…という夢を見たんだ、ロッテ。

やはりこの等身大抱き枕の威力は絶大だな!」



朝からにやけっぱなしの姫様に、幼馴染みの侍女のロッテは冷たい眼差しを送るのみです。


ムキムキマッチョな姫様の妹の二の姫様が嵐のように去っていってすぐ、

姫様の想い人の母君様が姫様と勘違いで約束した等身大抱き枕を届けてくれたのです。


はしゃいだ姫様はうっかり手加減を間違え、訓練は阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、死屍累々状態になってしまいました。

普段からそんな感じですが、手加減がなされなかった為に訓練を受けたものは皆その日は起き上がることもままならず、その介助や治療で城はてんやわんやの大騒ぎ。


姫様の天使な弟には尊敬の眼差しを一身に受け、妹姫達もお姉様すてきっ!と目をハートにされ、侍女や下働きの女性達に熱い視線を送られた姫様をみた男性陣の嘆きは大変なものでした。


絶対姫様に勝ち、可愛いあの子に告白するんだ!と意気込む勘違い野郎…コホン…あー、夢追い人達の闇討ち…ケホン…いやいや挑戦は昼夜を問わず、姫様のお部屋の前の廊下は死屍累々。


掃除がしずらく、討ち取られた野郎どもは下働きの少女や侍女をナンパし始めるので、余計な手間やしなくていい苦労がロッテ達にふりかかりました。


もちろんナックル付きの腹パンで皆撃退していましたが、姫様に遭遇して庇われた庇われなかったで勤務時間をかわれだのなんだと女の戦いが始まりロッテはいいわよねぇと八つ当たりも始まりこの所ロッテはお疲れでした。



「夢の中で幸せが手に入っても意味がありませんわ!

現実でもガンガン行けばよろしいでしょう!」



いつになくキツイ言いっぷりに姫様はタジタジでした。

戦闘ならば、ガンガン行ける姫様ですが恋となればハートを大事にしすぎて進めません。

ようは傷付くのが怖いのです。


だって、私は女性としての魅力はマイナスだし…と姫様は思います。


分厚い胸板。

相手をひと睨みで怯ませる眼光と顔。

なみいる男達に劣らぬ長身と体は戦闘に向きますが、恋愛には向きません。


それに比べて、

想い人のリヒト君の愛らしさったらなみいる女性が裸足で逃げ出すほどです。

モスグリーン色の髪は肩までの長さでふわっふわかつ天使の環ができるツヤツヤ髪。

焦げ茶の瞳はぱっちり二重でこぼれ落ちそうなほど大きく、かつ睫毛も長くクルンとしています。

透けるように白い肌、薔薇色の頬につやっとした唇。

華奢で小柄なその姿は思わず抱き締めたくなるほどです。



そんなリヒト君に迫る巨人(姫様)。

あるいは囚われの姫君と魔王。

あるいは美女と野獣。


ああ、考えただけでよろしくありません。

しかしながら恋心を消す事なども出来ません。


強い女でありたいと願ってきた姫様は、自分の臆病さにうんざりしつつも、身動きもとれません。




「やめてくださいっ」



不意に聞こえた少女の声に姫様は考えるより先にからだが動き、

数秒の間に姫様に挑戦して一撃でぶっ飛び伸びていたあげく掃除に訪れた少女に強引なナンパをしかけた糞野郎をぶちのめしました。

驚き、よろけた少女を姫様は優しく支えて口元だけ微笑みます。

ほら、満面の笑みだと般若になっちゃうから。


「怪我はないか?」


「はっはい…っ!!!」


ナックルを握りしめて涙目だった少女がリヒト君とかぶります。

本当はこんな風に抱き締めたいのに。

姫様は想いを噛み締めつつ、少女をロッテに任せ糞野郎を兵舎に引きずっていきました。


少女は頬を染めてそれを見送ります。

ロッテは何十回何百回と見たことのある姫様に淡い想いを抱く瞬間をみて、うんざりしました。

今夜もまたもめる…と。



そんな事とは露知らず、

姫様は夢のように想い人のリヒト君が頬を染めて自分の手をとる日は果たしてくるのかと思い悩むのでした。

男を引きずりながら。





ムキムキマッチョの姫様の恋は、果たして叶うのでしょうか―…







姫様は女性におもてになります。(ロッテ)

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 めっちゃ笑いました。 マッチョ姫様の恋、叶うといいなあ。 そして恋愛編突入へ。 絶対に面白いお話が待っていると思う。 美女と野獣、いいじゃないですか。 ハートを大事にしすぎ…
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