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転生ヒロインの使命は、悪役お姉さまを守ることです!  作者: 鳴田るな
承:四天王制圧編~vsモナモリス
75/197

3-06.そう言えば、言っていなかったような

連続更新二つ目です。

 立ち止まって話すのも時間がもったいない気がするので――こうしている間にも、お姉さまたちは着実に歩みを進めているでしょうし――注意深く辺りを見回しながらも、私は彼に説明します。


「先輩、私さっきどこまで話しましたっけ。今私たちがこうしている理由のことなんですが」

「ん? あー……なんか今回のゲームとやらが目的地に先にたどり着いて目標物にタッチするって話で、それでその目標物を探してる、とかじゃなかったのか? あとはその探し物が、綺麗な装飾のついた小さな箱とか言ってなかったか」

「ええ。私確か外見には言及しましたけど、その箱がどういったものか、なんで探しに行くのかについては話してなかったですよね」

「ああうん、そう言えばな」


 言われてみればなんでたかが飾り箱がゴールなのかなと微妙に思わないこともなかった、と続けている先輩に、私は一度立ち止まると向き合います。


「それね、実は爆弾なんです」

「――へ?」

「ってもマジものじゃなくて比喩表現ですが。見かけはただの綺麗な細工物ですが、中に色々ヤバい物が込められた呪いの箱なんですよ。見た目のせいで女性や子どもとかが引っかかりやすい分、タチが悪いです。……夏恒例ではやる怪談話の一つにでも、聞いたことはありませんか?」


 そういやフィレッタが怖がりの割に、キャーキャー騒ぎながらこの手の話を聞きたがる子だったな。覚えていたら後で先輩にもその辺教えといてやろう。

 そんな思考を間に挟みつつ、私はピッと指を一本立てて重々しく告げます。


「ノイト=イテックスの箱。その昔、邪悪な魔術師が自らの命と引き換えに作ったとされる、触った人に無差別テロをしかける伝説の大量殺戮兵器です。なので回収、と言うか正確に言うと機能停止、破壊工作に参るのですよ、我々は」

「――そっ」


 狙い通りと言うかなんというか、先輩はすっかり色を失ってあたふたしています。


「そんなもんに触って大丈夫なのか、つかタッチとか無理だろ!?」

「あ、そこはご心配なく。まがい物ですし、そもそも起動してませんので」


 私が言うと拍子抜けたようにピタッと立ち止まる。うん、予想通りのリアクションをしてくれて満足したので、さっさと種明かしして安心させてあげましょう。


「もともとね、魔術師の中でも特に呪術に長けた専門家が何度かチャレンジしてみてようやく完成品が作れるかどうか、本当はそういった代物なんです。出来上がった時の威力はすさまじいですが、作るのは多大な労力が必要ってことですね。……幸か不幸か、これから見つけに行く奴、奇跡的に結構いい線まで行ってたみたいですけど。完成していたら十人くらいは殺せたんじゃないですか。なんでも本当は祖先に呪術師がいたとかいなかったとか。それにしたって、そんなものを作って王宮に持って行こうだなんて、復讐が動機とは言えどう考えても狂人のやることですけどね。息子にまったく素質と知識が引き継がれなかったのは、間違いなく幸いだと思いますけど――」


 探索ついでに思いつくまま喋っていたら後半から完全にモナさんのご先祖様の話にシフトしたため、気が付くと先輩がさっぱりわからんマークを顔いっぱいに表示していました。


「あ、ごめんなさい独り言。箱の話でしたね。今回の目標物である箱の持ち主は、最後のトリガーを引く前に死亡しました。だから未完成品、ただの箱のままなんです。触るだけなら嫌な気分にはなるかもしれませんが、それでいきなり死んだりはしませんよ」


 まあ、引かなかったのか引けなかったのかは微妙なところなのですけどね。んで本当ならその辺巡ってモナさんとひと悶着あったりするんだよなあ、と思っていると、控えめな声が上がります。


「なあ、その箱の最後のトリガーってなんなんだ?」

「気になりますか?」

「だって万が一起こしちゃったら嫌じゃんか」

「この面子で箱の所に行ったところで、万が一にも起動することはないと思いますけど。……それにたぶん先輩、聞いたらものすごく嫌な気持ちになると思いますよ。それでも知りたいですか?」


 先輩がしばし迷ってから頷くので、私はため息をついてから結びました。


「ノイト=イテックスに必要な最後の材料は、13歳以下の子どもです。その子の心臓を生きたまま取り出して箱に閉じ込めることで、呪いは完成し、発動するのです」





 先輩に会う前、一人で歩いてきた通路そっくりな狭い場所を、私達は無言で時折先を照らす光に従うように――あと常に、上にも下にも左右にも水平方向にも注意しながら――歩いていきます。先輩は私が箱のことを話してからずっと無言になっています。時折そこ危ない、とかそこ踏むな、とかだけ、業務的にポツポツ声を発する。


 うん、相当怒ってるな、これは。子ども大好きな人だもんな、そりゃね。わかりやすい人だから手に取るように思考が読み取れる。まあ、さっさと見つけて破壊したいとでも思ってるんでしょうね。割とマジモードになってるみたいだから罠の検出率が上がっていて、そういう意味では気が引き締まってていいんですけど、こんなにシリアスモードな先輩、大丈夫かなあ。なんか背後取られていることといい、微妙に嫌な思い出がよみがえって気持ちがざわつくんですけど。


 と内心思ったりしながら、歩き続けること――どのぐらい経ったでしょう。分かれ道でも先輩が無言で指さす方に従うので、実質一本道を誘導されるまま、時々曲がったり上に向かったり下がったりを続けているうちに、不意に視界が開け、私達は広い空間にぽんと出てきました。


 ボッ、と一斉に音がして室内が照らされ、私達は二人とも立ち止まって注意深く辺りを見回します。


 部屋は結構広い。天井は高く、床は私たちが入ってきた向きからだと、右上から左下になだらかな傾斜を描いています。真ん中はだだっ広く、ところどころにごつごつとした石が鎮座している空間。

 ちょうど観客席を取っ払ったような、石造りの大きなコンサートホール。周囲にぽつぽつ光はさながら非常口か、足元を照らす誘導灯。そんなものが私には連想されました。

 視線を正面から傾斜に従って左に下ろしていくと、終点にステージ上とでも言えそうな場所があって、観客もいないのにお目当てのものが主役気取りでぽつんと控えている。



 そこだけスポットライトのように光が当たっているし、おあつらえ向きに小さな円系の空間ができあがっていたのです。オレンジ色を帯びている松明と違って、妙に白い光が目的の物を照らしています。



 輝く金の細工に彩られた無邪気な顔の小箱は、何も知らなければ手に取りたくなるような美しく華麗な見た目をしていました。言われなくても見たことがなくても、一目でわかる。あれだ。


 背後で先輩が呻きながら鼻を押さえ、私も顔をしかめずにはいられない。この広い空間で距離を取っている状態でもわかる、腐臭。おそらく確実に箱の方から。胃がむかむかしてきますが、逆流までは行かなそうなので少しほっとする。なるほどこれを感知したから先輩は嫌がったのか。そりゃ嫌がりもしますよ。




 と、そんなことを考えながら、ふとなんとなく小箱から再び無駄に広い室内へ、そして右側へと視線を移していき――私は心臓が飛び上がる、と比喩されるような体験を味わう事になりました。と言うか本当に飛び上がったかもしれない。少なくとも肩が跳ねたのはわかった。



 私たちが入ってきたのが、例えるならホールの横からの入り口だとすると、ちょうどステージの向かい側、正規玄関ととでも言ってよさそうな位置の大きな穴の前に。


 無表情っぽいのに、「うわしまった」か、「げっ」とでもどこか言いたげな眼鏡と。

 逆に微笑んでいるのに全く表情は読み取れない、けれど見覚えのあり過ぎる黒い瞳を妙に爛々と輝かせているその人が。


 いつの間にかこちらを見据え、静かに佇んでいるのでした。

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