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転生ヒロインの使命は、悪役お姉さまを守ることです!  作者: 鳴田るな
承:四天王制圧編~vsモナモリス
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3-1.あれからの彼と、彼にまつわる彼ら

 どうもお久しぶりです皆様。アデラリードです。


 キルル先輩の一件からまたしても数か月が経とうとしております今日この頃です。久しぶりにも感じられるわけですね。

 季節もすっかり秋模様です。皆薄着ですひゃっほい(と言っても私の担当的に、女性たちの麗しい様子を鑑賞する一方、暑苦しい野郎共と汗を散らし合う季節でもあったのですが)な夏は瞬く間に過ぎ去りましたね。あのオープニング事変からとっくに半年が過ぎ、一周年が近づいてきております。

 うーん、本編始まって一周年か。全然嬉しくないですね。



 ……と言いたいところなんですけど。実はこの数か月の間に起きたことを思うと、そう悪い事ばかりでもない気がしてくるのですよ。

 強制イベントを私の大活躍によりベストエンドで終わらせることができたおかげでしょうかね。これって『ラプソディー・イン・ダークネス』の世界だよねって思うくらいに、平和なリア充生活を満喫中です。


 ふふん、私あのイベントのMVP取ってもいいですよね。もっと褒めてもいいんですよ。血反吐吐くぐらい頑張りましたからね! 比喩でなく!


 ……え。いや、そんな別に全然大丈夫ですよ。確かに軽く吐血したり目を回してぶっ倒れたりしましたけど、やんちゃしすぎて多少身体が悲鳴上げたってそれだけなんで。今ではこの通りいたってピンピン、むしろぶっ倒れる前の三割増しで日々を元気にエンジョイしてますよ。大幅にパワーアップを遂げて大躍進ふんふふんですよ。

 意味が分からないですかそうですか。つまり私は進化したのでもっと皆敬っていいのよむしろ敬えってことです。


 そうです。私はキルルイベント前のアデラリードとは違うのです。一皮むけたのです。

 なのになぜ、栗毛の仔馬はすっかり私の名前として定着し、男はチビ、女性はアデルちゃんと呼びかけてくるのでしょう。夏の間の活躍がいけなかったのか。むさくるしい中の清涼剤って、女性からも、なぜか男性(と言うか兵仲間)からも引っ張りだこでしたからね。

 それでもモテ期なんて一瞬も勘違いしないで済んだのは、飛んで行った先で皆して仔馬呼ばわりするからですね。草食動物の赤ちゃんて、生まれたてのプルップルしてるイメージが濃厚なんだけど、やっぱり皆そういう目で私のこと見てるの!?

 ハハッ思い出してほしいな。これでも成人済み16歳、そろそろ17歳なんですけど。声援をキャー可愛いからキャーかっこいいにご訂正いただいても何の問題もないと思うのですが。


 敬ってもいいのよなんて上から目線だった私が悪かったです。反省しています。だからせめて、仔馬はやめて。呼ばれて自然と返事を返すようになってる自分が嫌だ! この際もうチワワ呼びでもいいから、肉食獣にランクアップさせてください。

 ……あ。やっぱ、チワワは最初に言いだした奴が思い浮かんで腹立たしいので、ダックスフントあたりでお願いします。



 何の話でしたっけ。ああ、またすぐに雑談に飛んじゃうんだから。

 そうそう、ここ数か月の私達の様子について簡単に振り返っておくんでした。



 まずは無事一緒にイベントを乗り越えたキルル先輩から行きましょうか。

 何でも元の世界に戻ってきたときは、夕方から真夜中に通常世界では時間が経っていたらしく。私は三日三晩ぐーすか寝こけてたんでその辺は後から聞いたんですけどね。

 先輩は帰ってきてから夜が明けるまで、朕王リオスと反省会を繰り広げたんだとか。男二人がどんな話をしたのか詳しくは聞いてません。ただ、先輩はもうリオスから抑制薬は受け取らないことにしたんだそうです。イベントを乗り越えて魔性を抑えた今なら、抑制薬なしでも満月も人の姿を保っていられると、フラメリオが保証してくれたこともあったらしいので。

 そのかわり、今度取り返しのつかない暴走が起きたら、その時はオレが間違いなくちゃんと殺してやる――そんな風に、先輩の決断を受け入れたリオスは言ったんですって。


 目が覚めた私に謝りに来て、それらのことをポツポツと語って聞かせた先輩は、どこか憑き物が落ちたようなさっぱりした顔になっていました。

 ついでにケジメとかで殴れ殴れとうるさかったので、では遠慮なくと一発張り手しておきました。反省会なんて開いてたぐらいなんだから散々リオスにボコられた後でしょうに、馬鹿でまっすぐな人ですよね。


 それから、フィレッタとのこと。

 心配していたのですが、迷いながらも私がそっと彼女との今後を聞いてみると――最初に正気を戻すきっかけを作ってくれた腕輪をぎゅっと握りしめて、彼は少しだけ唇を震わせながらも言いました。


「お前が寝ている間も、寝る間も惜しんでいろんなことを考え続けた。結論は出なかったけど、自分の気持ちは嫌ってほどはっきりした。――まだ、諦めたくない。せっかくお前がくれたチャンスを、無駄に終わらせたくないんだ」


 彼は人間の姿でもう一度、私としっかり目を合わせてそう話したのでした。



 その後、今に至るまでの数か月ですか? 蛇足な気もしますけど、あえて言うことがあるとしたら――すっかり公認カップルになった二人は、定期的に、しかも代わりばんこに私のところにやってきて、相談と言う名目の惚気話を繰り広げてますよ。まあ、聞いてる私の態度は適度に聞き流しながらですが、とても順調そうなので何の問題もないでしょう。あと、フィレッタがお姉さまにまた弟子入りして、気分が楽になるお茶の淹れ方とやらを覚えるようになったってところでしょうか。お姉さまいわく、落ち着かなくて眠れない夜には特によく効くんですって。

 だからきっと、そう言う事なんだと思います。



 そうそう、先輩の事と言えば――なぜかイベントが終わって一週間くらい経ったあたりに、ウルルがすっぱり私のことを諦めたって宣言しに来たんですよ。今まですまんかった、もう追っかけたりしないって。まあ全然かまわないんですけど、あまりに唐突なのでどういう風の吹き回しなんだと。さすがに気になってちょっと追求しようとしたら、男と男の話なので他言できないとか。なんなんだあいつ。

 で、その辺のことを諦めるように説得してくれたんですか? って先輩に問い合わせてみたところ、何とも言えない表情で、


「俺は何もしてない。本当だ。……いや、立会人にはなったけど」


 って後半目を逸らしながら答えるんですよ。なんだそれ。じゃあ、やっぱり誰かのお節介と言うか介入と言うかが入ったってことですよね。しかもあなたも相手がだれか知ってるんですよね、と言い募ろうとした私を制して、不意に先輩は真面目な顔になったのです。


「アデル。お前――」


 で、何を言うのかとこっちも唾飲んで待ってたら、結局いやよしておこう、みたいに首振って言わなかったんです。なんだよー、思わせぶりにするだけしといて。気になるのに。


「何も聞いてないってことは、言う必要がないか、言いたくない、言えない事情がある――そういう事なんだろうと思う。お前が関わってることなのにお前には言わない。その判断がいい事なのか悪い事なのか、今の俺にはわからないんだ。ただ、ウルルもあいつも言わなかった――だとしたら、俺から言うべきことじゃない、言っていい事じゃない。それくらいは、いくら馬鹿でわからず屋の俺でもわかるよ」


 私があまりにも納得いかない、と言う顔をし続けていたからでしょうか。先輩はそんなことを、訓練後だったせいでしょうか、額につうっと浮かんでいる汗をぬぐいながら言いました。


「アデル、気持ちはわかる。正直、俺だってあいつのこんな影に隠れるようなやり口は好きじゃない。ただ、あいつの気持ちはたぶん、痛いほどよくわかるんだ――」


 そこまでのところで先輩が別の人に呼ばれてしまったので、話はうちきりになりました。


 私はどこか釈然としない気持ちになりながらも、結局その、ウルルに何かをして私を諦めさせた人が誰かについてはそれ以上の深入りを断念いたしました。もしも朕王はらぐろの恩を押し売りしていくスタイルだったり、強制イベント前にも怪しい事言ってたお姉さまが気をきかせ過ぎたゆえの事件だったりしたらまた心労が祟るところだったのですが、先輩の話し方からそうでもないらしいですし。朕王こわいひと相手だったらあいつ呼ばわりを違和感なく続けている部分に違和感ですし、お姉さま相手だったらあいつとは言わないでしょうし。


 ふと、そこで更なる心当たりに気が付きそうになって。――急に怖くなって、それでそれ以上考えてはいけないと思ったんです。

 まさか、まさかね。私は一瞬でも何かを期待しそうになった自分を叱咤し、その辺は全部忘れて飲み込むことにしました。



 それが、先輩と、先輩関連の事の顛末。まだどこか不安定ではあっても、前を向いて進んでいこうとしている。


 ……で、そっちの希望溢れる方々の行方はいいんですよ。これだけだったら素直にいい事が起きてよかった、で終わらせるんですが。

 問題はここ数か月の残りの関係者が、どうにもなんだかそれぞれ怪しいってことなんです。

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