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1-2.あいつは何がしたいのかさっぱりわからん!

 ――というわけで、改めて私アデラリードは心機一転して、ディガンと一緒にここに乗り込んだわけですが。


 先輩に出迎えられ、私の肩書を改めて確認したところで絶句です。

 渡された任命状みたいな紙の私の名前の横に書いてある、後宮特別取締騎士って、なにこれ。聞いたことないですよ。いや、侍女じゃなくて騎士なのはまだわかりますけど、なんか変なものがくっついてるんですが。


 お仕事中だから来られないらしい朕王の代わりに、案の定私の監督役なのか橋渡しなのか、選ばれたらしいキルル先輩に聞いてみます。


「先輩。なんか私のところによくわからない文字がくっついているんですが。インクの染みですかね」

「気のせい扱いするな。それは一言でまとめるなら、お前に後宮で警護に関することならあらゆることをしていい権限があるってことだ」

「へー……って、おい。ちょっと待ってください。何それ意味が分からないんですが」


 ああ、先輩の目が泳ぐ泳ぐ。大分うろうろしてから、実に困った様子のまま戻ってきます。


「……この国では、後宮のことに関しては、王妃、侍女長、老母様の三人が連携して管理をすることになっている。知ってるか?」

「ええまあ。女のことは女でってあれでしたよね」


 なんていうか、見た目はいわゆる一種の中世ヨーロッパ風なのに、後宮があるとかそういう部分は中国なんですかね。さすが日本人の作ったゲーム、カオスだ。


 ちなみにさらに解説を加えると、侍女や侍従ってのは、召使やメイドとは扱いが異なります。ある程度以上の身分でないと就任できない位なのです。

 だから一応伯爵である私たちが侍女になるのはまあわかるとして、余計に侍従たんが原作でどうやって侍従に潜り込んだのか、不思議でならないのですが。今回は国王陛下が直々に位くれてましたけどね。微妙に彼の方も周りから虐められてないかとか心配です。


 で、後宮の話ですね。侍女長はですからなんとなくお分かりいただけるでしょうが、老母様ってのは大体引退した侍女の中で力のある、または人望のあるようなお方が付くポストのことです。まあ、侍女長や王妃が特に若かった場合の相談役ですね。

 王妃様が一番偉いってことにはなってるんですが、侍女長と老母様がいらっしゃる場合、その二人の意見も参考にはしないといけないというか、あまりに王妃様とそれ以外の二人の仲が悪いと大いに後宮が荒れるって言うか、そんな事情もあった気がします。


 ゲーム本編ではお姉さまが独裁してますし、普通に機能してないっぽいですけどね、この三頭制!


 そんなことを思い出しつつ、先輩に聞いてみます。


「……それで、現状はどうなってましたっけ」

「王妃様が不在だったから、長らく先代からの侍女長と老母様が連携して管理していたな」


 ……あれ? 朕王って、この時点で結婚してなかったっけ。確か若くして即位した時点で箔をつけるために、神聖帝国(笑)の第三皇女とかなんとかって、この国の言葉を喋れないお姫様もらってきて。それで王妃様は故郷を恋しがってめそめそ、いつまでもこっちに馴染もうとせず、不仲だったって話だった気がするのですが。なのでお姉さまに傾くとこれ幸いとばかりに適当に理由作って離婚って話だった気がするのですが。

 微妙に首を傾げつつも話を続けます。


「と言うことは、後宮の警護とかも、基本的にはお三方――今はお二方ですか。が、統括していると? 私もお二方の管轄に入るってことですか? さすがにあらゆることしていいったって、何でもしていいってわけじゃないですよね?」

「いや、その……」

「ええと。では最低限これだけは教えていただけませんか。結局私の直属の上司って誰なんですか? 誰の言うこと聞けばいいんですか?」

「……そういうことなら、たぶん俺だ」


 いや、ごめんなさい。確かにこんな顔したら傷つきますよね。

 先輩はちょっとやさぐれた雰囲気を漂わせて銀髪の頭をかきつつも、続けます。


「――と言っても、基本的にはお前は日々の後宮の見回りをして、異常がなければそれでよしってことになってる。有事の際はさっきも微妙に言ったが、お前に任せる。で……まあそのなんだ。何かあったら、言ってくれればなんとかする、と――」

「陛下が仰ったと? え、それなんて悪趣味なご冗談ですか? つまり、私は国王陛下の系列に所属する身であり、それでいて後宮乗り込めっつってるんですよね。侍女長と老母様にいびられて来いとでも――」


 喋っている間に、私はさっきの先輩の話を聞いていたときに軽く流しかけ――ええ、現実を認めたくなかったがゆえの逃避行動でもあったのかもしれませんが――とにかく、とあるセンテンスを思い出してはっとします。


「待ってください。……管理()()()()?」


 どうしてこう、嫌な当たってほしくない予感って奴ほど当たるのでしょうね。

 先輩はふう、とため息をついて、私になんかどこか悟りを開いたような顔になって喋ります。


「先代の侍女長も老母様も、残念ながらどうやら持病が悪化したらしくてな。この度後任が決まったので、二人とも田舎に隠居してもらうことになった」

「――まさかとは思いますが」

「だから、たぶんお前の今考えているその通りだってば。新しい侍女長は、お前の姉ちゃんだ」


 今度こそ、私は絶句しました。文字通り言葉が出ない。キルル先輩がどこかげっそり痩せている理由もようやくなんていうか、喉からすとんと落ちてきたようにすっぽり収まりました。


 リオスドレイク=ウルファル=エイギス。

 ……あんたって男は、もしかして私の思っている以上の馬鹿かそれとも狂人だったんですか!?

 どっちにしろ性質悪い!



 そんなわけで、先輩のそのほかの説明も虚ろに、送り出されて初後宮入りでした。

 覚悟して行ってみたら、案の定冷ややかなお目目でどいつもこいつも見た目だけはきれいですね、中身は知りませんけど、って連中に睨み付けられたわけですが。

 で、お姉さまのご無事もきちんと確認したわけですが。


 この一晩か二晩と言う短期間に、一体何があったんでしょうね。


 すでにお姉さまに対してなんかこう、明らかに侍女たちをまとめてそうな偉そうな数人が、隠しきれないおびえた目を向けていたんですが。ご年配の方々はしらーとしてましたけど、若いのはなんか完全に、お姉さま崇拝派の気配がすでに濃厚でしたよ。

 お聞きしたら彼女、ちょっと挨拶と言葉を交わしあっただけよってにこやかに答えてましたけど。それってつまり、やっぱりいきなりやってきた部外者新人野郎――野郎じゃなくてお姉さまか――に対する洗礼みたいのがあったはずで。でおそらく彼らのリアクションから察するに、お姉さまそれを迎撃しちゃったってことなんじゃないですかね。しかも割と容赦なく。というかトラウマレベルで。

 なんかその、聞いたらなんとなく彼女たちの名誉を傷つけそうな予感がしたので、そのまま流しておきました。……だからお姉さまに真正面から喧嘩を売るなとあれほど。この人悪気なくオーバーキルするんだってば。


 そんなわけでお姉さまと再会の喜びの抱擁をたっぷりかわし、ついでにお身体の感触から健康チェックをして(思ったよりも大丈夫そうでしたが、やっぱりちょっと痩せてた。おのれ朕王)、奴に何もされてないことを確認し(姫抱き以降は本当にキスもハグも壁ドン等も一切行われていないとのこと。だが許さん)、とりあえず一安心。ついでに実家からお姉さまの好きなお紅茶を持ってきていたのでお渡しすると、とっても嬉しそうなお顔。ああこれだけでも私ここに来た甲斐あった。よかった。


 本当はもっといっぱい色々お話したかったのですが、周りに知らない人はいっぱいいるし、お姉さまも侍女長に配置されたばかりでかなりお忙しそうなので、また今度必ず二人きりでとお約束し別れました。

 ……その時は、オープニングでの失敗の経験から――彼女に話すことももう少し、考えておくべきなのかもしれません。



 一人になった私は、できれば朕王に会って、それでお前ホントにどういうつもりなんだよ意味わからんよって真意を問いただしたいところだったのですが、先輩曰くあの人今忙しいらしいんで、しばらくはこっちに顔を見せられないとのこと。むしろなんであの夜抜け出してこれたんだよ。

 そんなわけでこの数日間は、お姉さまと一緒に過ごして彼女の順応性の高さに震撼したり、先輩とご一緒して後宮外についても軽く教わったり、あとはその辺を歩き回ったりしたわけですが。


 まあそのなんですか。本当にね、今のところ後宮巡回ぐらいしか私の必須主要任務ってないわけでして、それでお姉さまがなんかすでにご自分で露払い(とこの場合は言うんでしょうかね?)しちゃってるっぽいので。毒ぐらいだったら彼女普通に自分で対処できますし。治癒魔術の使い手っていいですね。

 いやもちろん、せっかくの特権使ってお姉さまを四六時中警護してもいいんですが、さすがにそれはなんていうか、自重しました。


 とりあえず朕王と再会するまで、自分で定めた定時巡回の間は後宮の周り、特にお姉さま周辺を意識して見回り、それ以外は自主的探索に当てることにしました。わからんこと理不尽な事だらけだから迂闊に動くのは危険かもしれませんが、できそうなことから始めましょう。でないと本当に、また何もできないまま日々が過ぎてしまう。



 そんな風にして、いろいろあった後、さっき彷徨っていた部分まで戻ってくるわけですが。

 はあ、にしても見つかりませんねえ。これから何をするにしろ、最低限あいつだけは捕捉しておきたいし、捕捉しておくとこの後がだいぶ楽になる気がするのですが。


 そういえば、肝心の私が今探しているものについてはまだ詳しく言ってませんでしたっけ。


 名前で言うなら、フラメリオ=ニーラ。

 公式推薦5番目の攻略対象者、ファンからの通称は大賢者、あとはマッドアルケミストとか人形師とか。

 そういう男を、私は今探索真っ最中なのですよ。

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