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1-2.私、お姉さまを守ります!

 いやね。本来だったらヒロインの大敵であり、ラスボスであるスフェリアーダお姉さまなのですが。

 私、何を隠そう、前世で彼女の大ファンだったのです。



 ……だってだって、かっこいいじゃないですか!

 美人で勝気で賢しくて、自分の欲望に素直って素敵すぎるじゃないですか!


 大体、もとをただせば何もかもヒロインがいけないんですよ。何かにつけてちょっと強気に出られると押し切られるあの態度にはホントもう、前世の分身及び現世の私自身ながらくっそ腹立ちましたよ。

 そこは全力で反撃しろよ! なんでコロッと流されるかなあ!? エロ展開に持っていくには好都合なキャラ設定だったんでしょうけどね!


 ……あっ!

 全力で反撃した場合、即デッドエンドだったんだー思い出しましたちくしょー!


 なんで選択肢の結果が、大人しく食われるか、無理矢理食われるか、あくまで抵抗して殺されるかの三択なんでしょうね? あのゲーム本当に狂気すぎますよ! もうイベント発生の時点で私詰んでる。


 ……最大の突っ込みどころはそんなゲームの大ファンだったお前の前世だ――って、うるさいですよ! お姉さまに惚れこんじゃったんだもの、仕方ないじゃない。お姉さまのためならコンプも追加コンテンツのダウンロードも余裕でしたとも、ファンのかがみです、さあ褒めなさい、お姉さまのためだったらなんだってしてやんよ!



 ぜーはー、失礼。いったんクールダウンします。我が愛しの女神スフェリアーダお姉さまの話に戻って落ち着きます。



 お姉さまはね、一本芯の通ったお方なのです。何より彼女は、どのエンドでも死ぬときが潔いのです。


 すべての悪事があからさまになっても悪びれず、むしろ自らの正当性を主張。

 その上で毅然と断頭台に連行されたり、王に切り殺されて腕の中で死んでいったり、獄中で隠し持っていた毒をあおって死ぬルートもあったっけ。



 それ以上にまあ、その……見た目がね。もろ好みだったってのもあるんですが。ええ、そうですよ外見で一目ぼれした後内面で惚れ直したって口ですよ、すみませんね、チョロくって!


 ヒロインは母譲りの栗色の髪に青い目ですが、スフェリアーダは父親似の艶やかな黒髪黒目です。

 なおさらに予定調和に、アデラリードはパンチの利かないたれ目で、お姉さまはきりりとお美しいつり目です。

 それでいて、肌は雪を思わせるような真っ白。唇は鮮血を思わせるようなこれまた美しい赤。でも不自然じゃない不思議。

 この配色、まさに白雪姫ですね、わかります!

 しかもこれで完璧なぼんきゅっぼんプロポーションなんですよ!

 ヒロインがどっちかってと、好意的に表現するなら均整の取れたスレンダー、残酷な現実をありのままたたきつけるのなら標準的日本人を彷彿とさせる一般人体型だったのに対し、お姉さまはそのたゆんったゆんなお胸から抱きしめたら折れそうなを地で行く華奢なお腰、そしてやっぱりエロイ腰と太腿ぉ!

 さすがお姉さまだぜ、脱いだら割とむっちりしてるのがたまりません本当に女神さまですいやあああはあああああ!



 あ、申し訳ない。お姉さまの話になると私ついついいろいろタガが外れやすくなるもので。

 よだれふいて落ち着きます。……ふう。



 まあそんなわけでお姉さまは外見からすでに完璧なお方なのですが、内面もね、もう素敵すぎるのです。


 特に、ヒロインに対しての、私は私なりにあなたを愛していたわ、馬鹿な子ねって台詞にやられました。落ちました。


 だってお姉さま、さんざんヤリチ〇から妹遠ざけようとしてたもんね。攻略対象達から遠ざけようとするのだって、ヒロインの恋愛脳検閲して冷静に考えたら、なんか頭おかしい旦那ばっかだったもんね。性格良さそうな奴もいたけど、そういうのは優しすぎて立場的によろめきそうだったしね。


 何より侍従駆け落ちエンドでは、駆け落ち決まったらむしろ王から庇ってくれるんだぜこのお姉さま!


 あああ本当に申し訳ありません、このチョロインがいけないんじゃあ、すぐ顔がいいとホイホイ男にくっついていくこのヒロインめがあああ、ってくっそ、今世の私だあああ!




 ともかく。

 そんなわけで前世の私は、ゲームのファンと言うかむしろ、スフェリアーダお姉さまの大ファンだったのですよ。



 ザ・悪女。しかも必ず悲劇に散る。ヒロインが死ぬバッドエンドでもどのみち死んじゃう鬼畜仕様。



 ええ、そうなんですよ。これが大問題なんです。



 スフェリアーダお姉さまは、ヒロインがハッピー(と本当に呼べるのかは大いに議論の余地ある部分だと思いますが!)エンドだろうが、バッドエンドだろうが、どの攻略キャラを選ぼうが――必ず、死んでしまうのです!

 当然侍従君と駆け落ちした場合も死にます! 清々しいほど潔く散ります! うわあああああん!


 ぐすっ……ああ思い出すだに泣けてきたっ。あの製作者、さすが狂気の原作の生みの親、キャラに対する愛の表現が心底歪んでるんですよお!

 

 立ち絵やキャラ絵の数(スフェリアーダは悪役なのになぜか気合入ったスチルがあり、攻略キャラ同様コンプ用システムも存在した)や、その後の追加SSの内容とか、どう考えてもスフェリアーダお気に入りキャラっぽかったのに、全ルートで殺すんだもん! このおにちく! サド!



 そんなわけで。今世で私ヒロインことアデラリードには、なんとしてもあの〇リチンから逃げ切ると言う使命もあるのですが(ただ逃げるだけではだめだ。何せ奴は、本当に、息をするように、女に手を出すのが早い)、それ以上に。


 大丈夫、一応コンプ済みだったはずだし、原作のシナリオは油断するとあなたを殺しにかかるってか、油断すると本人が潔く死んじゃってた気がするけど。



 スフェリアーダ・シアーデラ。私が、この妹、アデラリード・シアーデラが。


 前世からのありったけの愛をパワーに、〇リチン王からも他の攻略者たちからも死の運命からも、あなたを守り抜いてみせるのですっ!


 今度こそ、あなたに幸せと栄光を! スフェリアーダ、マイヴィーナス!



 ――そんな風に誰もいない我が家のお庭にて、泥まみれの勇ましいポーズで決意した、(現世換算で)6歳の春でございました。

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