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4-2.勝負服を着込むのです

 さて、運命の社交界デビュー。ええ、皆様ご期待のとおり、舞踏会です。一応伯爵令嬢ですからね、これでも。本当なら婚活しにいかないといけないんですよ。


 おさらいしてみると、プロローグはこんな感じだったでしょうか。


 胸を躍らせて社交界デビューしたアデラリード。しかし現実は厳しく、田舎者よ貧乏者よと怖い方々に圧倒されてしまいます。おまけに同期もなんだかよそよそしい。まあアデラリード超凡人モブ子だったからね。仕方ないね。


 そんなわけで、そつなくこなしているお姉さまと別れ、テラスに休みに――というよりも逃げてきた彼女は、一人悔し涙をかみ殺します。


 で、そこに現れるのが――現れなくていいのに――ホントに現れなくていいのに――もうおわかりですね。奴です。朕王です。

 奴が彼女を慰め、君はもっと魅力的な女だ、それを証明してあげるよと言って、ゲームはスタートいたします――。


 ここだけ切り取るなら、王道乙女ゲーと言い張れないこともない。いかにもベタですよね。

 ええ、この段階ではまさか、この後お姉さまが一緒に王宮に乗り込んだ挙句悪女になって、メインヒーローがあんなことになるなんて思いもしませんでしたとも。その後控えてる男たちも全員あんなことになってるなんて、思いもしませんでしたとも!



 ……うん、そんなところでした。今はその勝負に向けて、お着換え準備中なのですよ。


 一応この世界でも、男は着れば着るほど、女は脱げば脱ぐほどフォーマルってことになってます。誰ですか、こんなろくでもないルールを作ったのは。ああ、朕王ヤツの祖先ですか。察しましたよ。まあ一応、さすがに女性はそれだけだとさっぶいので、大抵上着を羽織っていますけどね。


 上着脱ぐような時はあれです。女の勝負の時よってお姉さまがウインクして微笑まれながら言ってました。


 さすがお姉さま。

 セリフと笑顔と安定の猫舌ウェイティングタイムのトリプルコンボに悩殺されるかと思いました。


 せっかくかっこいいこと言ってるのに、お茶飲めないでいるお姉さま。もうちょっと別のタイミングで言いましょうよ! お姉さまですから、その程度のことで決め台詞意味深セリフが台無しなんてことにはなりませんでしたけど、危うく私も突っ込み入れちゃいそうになりましたよ。もう、これだから天然は! いいぞもっとやれ!


 落ち着きましょうか。

 尚、上記の脱げば脱ぐほどルールが適用されるのは、主に上半身と背中の話です。足は基本、家族相手ぐらいにしか見せません。これは女の人だけじゃなくて、男もそうです。くるぶしとか特にガード固いです。レッグウォーマーって言うんですかね。この国の人間ならほとんどだれもが、くるぶしだけは何かしら覆ったり巻いたりして、人前で素足にならないように気を付けます。


 まあだから、最悪どこぞのカーニバルみたいなブラスタイルでもいいわけですよ、上は。普通の上流のお嬢様は慎ましやかなものですから、誰もやりませんけどね。さすがに下品だと思うのでしょう。それに補正下着と言えばコルセットが主流ですし。コルセットはウエストまで必要ですから、自然と露出するとしたら肩から胸、背中にかけてが見せられるところでしょうね。



 私は結局何が言いたいんでしょうね。お姉さまのドレス姿ハアハア。よしこれだ思い出した。



 今日のお姉さまのご衣装は赤だそうです。お姉さまお得意の色ですね。もう私、ちょっと今からテンションやばいです。


 何度かお出かけする前のご様子を見たことはありますが、マジお姉さま天使。赤い天使来たコレ。いかにもこの女できるわよって風に、バーンとかっちり決まってます。これが私だったら色に負けてますね。

 白いマントを羽織っちゃって見えなくなる胸元は、天使と言うより悪魔ですがね。大きさ、形、弾力。すべてがすべて極まっている。もちろん腰や背中だって負けちゃいませんぜ。ドレスで見えない太腿とかもでっせ。

 あと、お姉さまは身長の割に、私よりも足が小さくてかわいいです。そのせいで、長時間立ったり歩いたりするのはお辛いらしいですが。むふふ、でもおかげで何度かおみ足さすらせていただいた。セクハラちゃいます、マッサージです。


 あっ、誤解のないように言っておきますけど、私別に事あるごとに胸揉んでチェックとか、そんな下品なことはしてませんからね。そんなわかりやすいスケベできるわけないじゃない! だからちょっとハグで密着してる合間に、少しだけ測定させてもらってるだけですからね!


 えっじゃあ色はって? ふっふっふ。それはあれですよ、ちょっと隙あればお着替えのお手伝いをば名乗り出てですね。だって仕方ないでしょう。今から予行練習の必要ありますし? お姉さまだって嬉しそうに、じゃあお願いねって言ってくれますし? むしろ甘えるように、アディちょっと手伝ってって、私が家にいると言ってきますし?



 全お姉さまが私を求めてらっしゃる! 生きててよかった! 神様いるならありがとう! 私はすべてを手に入れた!



 よしまた落ち着け、どうどう。ウラシアが冷たい目になっていますよ。口には出してなくても顔には出てますからね。いかんいかん。


 ……ああはい、そうですね。

 ついでにさっくりご紹介しておきますと、私の勝負服は上衣とズボンがお揃いの紺色、上衣の下のシャツは白で、ふわっふわのレースのネクタイ強化版みたいな襟を締めます。首が詰まってちょっと苦しいですが、我慢です。

 髪の毛はちゃんと短く切りたかったのですが、さすがにそれくらいはと両親が泣きついたのと、お姉さまが「わたくしは長い方が好き」っておっしゃっていたので、妥協して今はリボンでくくっています。


 なおこの衣装は、なんとこの日のために、微妙そうな顔をしながらもお父様とお母様が仕立ててくれました! まあ私これから軍人になりますから、男っぽい服着ててもそんなに文句は言われませんし。

 地味に男物のままだとシルエットがやっぱり違うので、私に合わせてオーダーメイドですよふっふん! 一生大事にします!


 それって背が伸びないこと自分で認めてないかって? べ、別にそういうことじゃありませんからね! まだ希望は捨ててませんからね!



 お、ようやく一通り終わったかな。よしよし、ばっちりですよ。

 ウラシアや爺やにちょっと手伝ってもらってしっかりそれらを装着したのち、鏡を見つめて気合を入れつつも、一点のみ溜息をつかざるを得ません。


 もう童顔はある程度仕方ないとして――いやこれも本当はなんとかなってほしかったのですが――年下とは言え、せめてお姉さまを越えるくらいの身長になりたかったなあ。並んだ時に一瞬彼氏に見える程度の背。そうすれば、労せずお姉さまに群がる害虫除けができますからね!


 ……えっ。シークレットブーツ? いや、実はこの世界にもないわけじゃないですけどね。特徴ありますから、わかる人には一発バレですよ。虚しくなるからやりません!



 というか、お姉さまがもうちょっと小柄だったらよかったのに、普通に女性平均より高いんですもの。


 あ、前世基準でわかりやすく言うと、こちらの平均的な女性の背丈は160センチ前後ってところです。ついでに言うと、男性は175センチくらいでしょうか。侍従たんも大体そんなもんかと思います。まあ彼は混血ですが。


 ……肝心のわれら姉妹のデータですか?

 お姉さまはおそらく168センチ、私は162センチってところでしょうか……。

 もう! グラマラスボデーで背もそこそこあるって、本当になんでこれで今まで目立たず過ごしてこられたんですか!?

 聞いてみても、


「あら、アディったら。別にわたくし何もしていないわよ?」


 って安定のはぐらかし食らったまんまだから、わからないんです! 天然でステルスでもしてるんですか? その能力、ぜひとも分けてほしかったです。



 ……私もやっぱり、お姉さまのように過ごすべきだったのかしら。普通の女学校行って、普通に過ごして青春して。年に一度は大けがしかけるような体育系学校じゃなくて。


 いやいや、それこそ原作ルートそのまんまじゃないですか。目立たず騒がずモブに人生過ごしたら、アディさん宮中に連行されたじゃないですか。なぜだ。なんでだ。どうして朕王はそんなモブっ子に目を付けたんだ!


 えーと確か奴のセリフによると――。


「ほほう、これは……一見すると炉端の石だが、磨けば光るダイヤの原石と言ったところか。――面白い!」


「小娘、お前にふさわしい、面白い場所に連れて行ってやるぞ。オレがお前を、磨いてやろう――」


 ええ、まあ、彼は有言実行ですから後でその通りになりました。磨かれるし、磨かせられるんですよね。風呂場に連れ込まれてね。


 ――って、やっかましいわー! 何を、別に必要ないことまで思い出してるんですか、私はー!


 あーもー脱線した。問題は朕王撃退大作戦です。そうですよ。

 原作のように、モブに生きても無理やり掘り返されてしまうのなら、いっそのこともう目立ってもいいから迎え撃つこの方向は間違ってないはずです。

 さすがにここまで山猿に突き抜けたら、磨けば光る石にカウントされないはずです。


 ……信じるのですアデラリード。いまさら後には退けません。いろんな意味で。


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