表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ヒロインの使命は、悪役お姉さまを守ることです!  作者: 鳴田るな
結:四天王制圧編~vsフラメリオ
112/197

1.ヒーロー転生だよやったね! ……おい、ちょっと待て

「はあ? 行方不明? シスコン1号が?」


 オレの口からはそんな素っ頓狂な声が漏れた。

 突っかかって来た方はますます目を吊り上げる。


「……いやいやいや、濡れ衣だって、本当に何も知らないって、睨んでも何も出ませんよ」


 シスコン2号、もとい黒にゃんこさんに両掌を見せながら上げる、いわゆる降参のポーズを取って肩をすくませる。


 さあ、そのよく見えるお目目とやらで判断しておくれ。

 朕には7割がたの潔白と、3割の煩悩しかない。


 イエス、ご理解いただけただろうか?

 こっちは嘘をついてないし、1号の行方不明とやらについては何も知らない。

 と言うか今知ったばっかだ。


 大体なんだ、今更そんな悪役チックなことしてどうする。

 朕は君を困らせるのが嫌いなわけじゃないが、やっていい事悪い事ぐらいは心得ているつもりだ。


 この前のセクハラ?

 おっぱい好きで何が悪い。

 拝むだけで揉まなかった朕はむしろ偉いと思う、正直な話。


 それはどうでもいい。


 つーかぶっちゃけた話、あいつのこと拉致監禁だのしても、なーんも面白くないじゃん。

 いや、別の意味で面白いかもしれないけど、朕の気分が乗らないと言うか。


 だってどう考えても囚われの、ってキャラじゃないじゃん、あれ。

 絶対囚人生活なんかさせたら、最初はギャンギャンわめいて、そのうち落ち着いて、最終的にはすげーふてぶてしい態度で逆に要求してくるようになるぞ。



 って、おーい。

 待て。困る、それはちょっとだけ困る。そうなるぐらいだったらもういっそ怒ってくれていいんだぜ。

 ほーら朕の身体は空いてるぞ、どんとぶつかってこい!


 ダメか。ダメなのか。

 あーあーあー……。


 隙を見せたらつけこまれるかもって知ってますよね。

 それでも我慢できませんか、収まりませんか。

 お宅の妹さんの突然の失踪はそんなにショックでしたか、そうですか。

 知ってたけどお前も拗らせてるよな、シスコン2号。



 そうか。

 いや、しかしそんなに悲しいなら、お兄さんがこの両手で慰めてあげようか!



 はい、調子乗りました。


 やらないよ、知ってる知ってる、わかった手をひっこめるから、泣きじゃくりながら凶悪な呪文を編もうとするな。

 それ、人間の体内に魔法植物を植え付ける古代呪術だよね。徐々に宿った種が育って宿主がやがて木になるってあれだよね。


 一応王様なんで植物に変えるのは勘弁していただけませんか。被害甚大すぎる。



 くそっ、少しだけ行けるかと思ったんだが、まあそううまくは行かないか。



 でも、わかってるのかなー。

 普段ガード固いのにそうやって時々無防備になるから、お兄さんは錯覚しそうになっちゃうんだよねー。

 シアーデラうっかり姉妹は両方天然だから、きっと全部知ってますって顔しててその実何もわかってないんだろうなー。


 2号は可愛いから許すけど。

 1号? 変態だからギルティ。



 さて、それにしても穏やかじゃない話だ。

 1号が2号に何の連絡もなくいきなり失踪ねえ。

 まあ詳しいことは調べてみないとわからんが、2号がこんだけ取り乱してるってことはガチだろう。


 一体何が起こってるんだか。



 朕はそんなわけで、シスコン2号もとい黒にゃんこさんが落ち着いてくれるのをのんびり待ちながら、ゆっくり頭の中でこれからのプランを組み立て始めていた。




 * * *


 前略。別に木から落ちたわけじゃないが、ある日自分に前世とやらが存在していることを自覚した。


 つまり、あれだな。いわゆる一つの異世界転生って奴だよ、うん。たぶん。


 しかも長い間知らなかったんだけど、どうやらここは前世にあった乙女ゲームとやらに非常に類似した世界で、オレはそのゲームの攻略対象者、しかもセンターポジションと言う事らしい。

 道理で朕って生まれた時からの天才、すさまじいハイスペックだと思った。

 あと妙に野郎の顔が綺麗な世界だなと思ってた。

 納得した。


 ただ、なぜかヒロインに転生したとか言ってる馬鹿からは最初、ヘイトマックスだったんだけどな。

 攻略対象者(しかもセンター)とヒロインが、ヒロインのライバルであるらしい姉をめぐっていがみ合う恋愛シミュレーションとは一体。

 しかも他の攻略対象者も、選択肢を下手にミスると殺しにかかってくる奴らばかりとか。


 朕の知ってる乙女ゲームと大分違うんだが、どういう事なんですかね。

 デフォルトのシナリオがデスゲーム昼ドラ仕様って、原作は一体何を考えているんだ。

 キャッチコピーは愛憎シミュレーション、ってなぜに憎悪までシミュレートするんだ、どこに需要があるんだ。

 それでなんであいつは、そんなどう考えても際物臭しかしねえもんをコンプリート済なんだ。


 面白すぎんだろ。



 あとどうでもいいっちゃいいけど、オレのあだ名を朕呼ばわりするのはやめてほしいです。

 ちゃんとリオスって言えよ。3文字と2文字の違いだろうが。どう考えても悪意しか感じないじゃんそのネーミング。



 おっと、適当な事喋ってたら紹介が遅れた。

 オレの名前はリオス。リオスドレイク=ウルファル=エイギス。

 今の話通り、いわゆる転生者って奴だ。


 長いこと朕のような奴はこの世界には他にいないんだと孤独を噛みしめていたんだが、少し前に同類を発見した。


 それがアデラリード=シアーデラ。通称アデル。お友達かもしれないがきっと気のせいであるシスコン1号と書いて、もう一人の転生者と読む。

 後宮を取り仕切る侍女長のたった一人の妹。後宮特別取締騎士にして、大賢者フラメリオ=ニーラの二番弟子。

 肩書だけ並べるとそれなりにすごい人物に思えないこともない。

 ある意味すごいことは皆認めてるんだろうが。


 あと、これは朕だけでなく割と周囲の一貫した評価なんだが、見た目だけならたぶん及第点に到達している。黙って動かなければ。

 本人はやたら自尊心が低いのか先手を打つことで自己防衛してるのか知らんが、基本的には自分を下げて姉を上げるスタイルだ。

 まああんな姉貴がいつも横に突っ立ってたら拗らせたくなる気持ちもわからないとは言わないが、ちょっとやり過ぎている。

 あいつだってそこそこいい線行ってる。そう、黙って動かなければ。

 仮にも乙女ゲーのヒロインポジションらしいし、見た目は悪くない方なんだ。ああ、黙って動かなければ。



 だが、一度喋り出し動き出すと、自身の長所すべてを台無しにする。

 それが、アデラリード=シアーデラと言う概念だ。


 黙って動かなければ、と何度も繰り返したな。

 つまり逆に言えば、動きが加わるともう駄目だと言う事だ。

 顔芸に定評がある時点で色々終わってる。


 なぜなら、奴は自他ともに認めるアホだ。そして変態だ。

 さらに、満場一致で誰もが認める病的姉偏愛者シスターコンプレックスだ。


 奴に一瞬でも何かの幻想を抱きそうになった輩は、次の瞬間「お姉さま今日も超かわいいですお姉さま」と奴が口にしてるのを聞いて正気を取り戻す。

 そのうち、慣れる。

 だらしない顔で「うああお姉さま、お姉さまが最近足りてないうああ」だの奇声を発していても、全く動じなくなる。

 いつものことだからだ。いちいち反応してたらきりがないんだ。

 向こうが悔い改めることもまずありえないので、ほぼ必然的に日頃の奇行に慣れるってわけ。


 もうこれ一種の調教だよねと、一人また一人優秀なスルー人間が出来上がる度に横で思っていたりする。



 なんか、わかるだろ?

 つまりアデルと言う人間は、色々持っててとにかくキャラの濃い野郎なわけだ。一応女だけど。下手すると女の子ってレベルの年だけど。面倒だから必要な時以外野郎扱いすることにしている。




 で、その妹を語るのに欠かせないのが病的な愛を捧げられている姉、スフェリアーダ=シアーデラ。

 朕が密かに黒にゃんこさんと呼んでるクールビューティー、そしてシスコン2号である。


 妹と違って姉貴の方は、美人な上に美おっぱいでけしからん尻をしている。今の所お触り禁止なので観賞のみ楽しんでいる。

 一応クールキャラを気取っているが、本性は腹黒気取りの天然だと朕は思ってる。結構詰めが甘い。きっとシアーデラはうっかりの遺伝子を代々受け継いでるんだと思う。


 あと、そうだ。奴はかなりの猫舌だ。

 熱いものが出てくると大体、ものすごく澄ました顔で静かに冷めるのを待っている。湯気が立ってる料理や飲み物をそのまま口にしたところを見たことがない。

 恐る恐る口に含み、やっぱり熱かったのかちょっと悲しそうにしょんぼりしてるのがいつものことである。

 こっそり観察してるとそんな風にそこそこの頻度でうっかりを連発するので、見てるだけでも割と飽きない。


 ただし、ただの美人美おっぱいでないから注意が必要だ。

 下手に機嫌を損ねると黒にゃんこは怒りに任せて凶悪な古代魔術を使用してこようとする。

 まあいざとなったら主従の絆があるから使えばいいんだけどさ。



 なお、ネーミングの由来は猫舌のほかにデレないツンから連想した。

 黒にゃんこさんの構成要素は、ツンツンツンツンツンツンツンツンツン、要は10割ツン、デレなどない。

 野生猫のように人に懐かず、特に朕相手だと明らかに弱っている状況でも意地っ張りを通して来ようとする。


 ただし全方面ツン黒にゃんこは、妹にはわかりやすくデレる。

 デレと見せかけてツンしてることもあるけど、最終的には大体負けてデレる。



 そう、なんでもない顔で取り繕おうとしているが、こいつの本性も結局は妹に負けず劣らずのシスコンなのだった。



 あっちがサイレンのように周りにわかりやすく表明してるのに対し、こっちはサイレントに水面下でシスコンを拗らせているので、むしろ始末が悪いと思うんだな。



 そんなシスコン姉妹がお互いに二人だけの世界で完結してないで、もう少し幅広い視野を会得してくれないかなとほんのり期待したりしつつ、朕は今日ものんびり二人を泳がせている。


 はずだった。


 1号の突然の失踪騒ぎを耳にするまでは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ