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3-3.お姉さまは崇めるもの、侍従たんは愛でるもの

 馬車の中でウラシアとなんてことない会話してるフリしながら、私の意識は巧みに馬を操る侍従たん――ディガンの方へと向いております。


 そういや、馬の扱いが上手ってイベントもありましたね。アデラリードに内緒で乗馬を教えてくれるのです。

 じゃじゃ馬ならしが得意なのね、ってアディさんの意味深セリフに対する反応は、しばしの困惑後、気が付いて顔真っ赤そして逃亡だったな。んで戻ってきた後も顔が若干赤いまま、こっち直視できないんですよ。どう見ても挙動不審にどぎまぎしてるんですが至って平静装うとするんですよ。全然装えてないんですけどね。

 なんだこの愛い生き物は! そうだこれ一応乙女ゲーだった! 隠しキャラでそれを思い出すゲームって本当にどういうことなの!


 しかしこれ、公式が完全にセクハラですね。アデラリード完全に中の人の発想が親父じゃねーか。でも面白いからついつい選択肢選んじゃうんですよね。侍従たん、からかわれるとむしろ好感度増えますからね。……まったくあなたって子は! 動揺しすぎィ! ふう。今から将来が楽しみでにやけてならないです。



 向かい側に座ってるウラシアが、まーた変な事考えてるでしょ、って呆れた顔で言いますが、気にしませんむふふ。



 ……本当にね。からかったら即物陰連れ込まれてお仕置き不可避のどっかの朕王にも見習っていただきたいですよ、この胸キュンなあざとさ。お前も煽り耐性低すぎんだろ、国王のくせに! そのくせエロシーンの持久力は長いとか、やっぱ乙女ゲーのセンター張っていい奴じゃないよ! これ男性向けエロゲ主人公だよ! いや本家エロゲの方がひょっとしたらマシかもしれませんね!


 ああちくせう。侍従たんで癒されていたのに、頭痛の種を思い出してしまった。

 にしても、ここまで狂気まっしぐらなのに、一度この狂気に中てられると戻ってこられないのだから、原作は恐ろしいゲームでしたよ。さすがは狂気のほかに魔性の通称を持つ代物。このクソゲーがと罵倒しつつも、気が付くとプレイしているのですからね、虜にされちまったプレイヤーたちは。



 ウラシアが、お嬢様の百面相が始まったわ……とか呟いている気がしますが、きっと気のせいです。私いたって真面目な顔してるじゃないですか。何言ってるんですか。



 そうだ。これだけ侍従たん推し、侍従たん萌え発言を連発している私ですが、お姉さまと彼は別枠ですからね。

 お姉さまはこう、身を投げ出して踏んで頂きたい感じで、侍従たんはお菓子とかあげて愛でたい感じです。愛の質、ベクトルが違うのですよ。


 えっ、その割にはお姉さまにもたび重なるセクハラ発言の前科があると? 頭の中でちょっとハッスルするくらいいいじゃないですか! どうせ実際の手出しなんてできませんよ私には!



 ウラシアが狭い車内なのに、それでもそっと私から距離を取った気がしますが、何も問題はありません。

 まったく、人のこと危ないものを見る目で生温かく眺めてくるなんて、いけないメイドさんですね。私は私で忙しいので構いませんけど。



 ……それにしても、踏む、か。実際お姉さまにそれお願いしたら割と遠慮なしにやられる気がする。

 あの方、10数年一緒に過ごしてわかったことなのですが、こう……ああいうのを真正の天然とお呼びするのでしょうかね? 素でうっかりひどい事できちゃうタイプです。ニッコニコしながら悪気なく急所刺ししてくるみたいな。来いよ! って言って身構えたら次の瞬間にはハチの巣にされていた、みたいな。いやそこまでやれとは言ってないですお姉さま、そんな徹底的にやらなくても。

 ブルブル、やはり他の何を間違っても、現世でお姉さまと敵対ルートだけは突っ込みたくないです。ファンクラブのナンバーワン、ガーディアン1号の称号を持つ身としてもですし、怖い時のお姉さまと張り合うだなんてそんな無理です。小心者の私には……!


 あとあれだ。今度は侍従たんに関してもう一個思い出した。

 彼、辛党だったんでしたね。お菓子っても甘いのはダメか。いやでも甘いもの与えると、微妙そうな顔しながらもちゃんともくもく食べてくれるんだよね。んで、苦笑いしつつ美味しいって言うんですよね。

 いやだめですよアデラリード。そんないじめっ子みたいなこと、めっです! いやそんな私、別に侍従たんの困った顔見て楽しみたいなんて、そんなドエスっ子じゃないですし、むふふふふふ――。


「お嬢様、お顔がひどいですよ。ついでによだれ垂れてますよ」


 ハッ! よかった私馬車の中、侍従たんはお馬さん御し中で。こんなだらしない顔お見せできませんものね。

 ウラシアは慣れてるでしょうからええ、そうやって元のアデラリードに戻るまでちょっと脇見て知らないフリしててください。


 ……うん。正直、今の段階でも十分妄想が楽しすぎてこの先が心配です。

 だってこの後お姉さまと侍従たんの絡みを横で見られると言う、ご褒美でしかないイベントも待っているのですからねっ……!




 と、思っていた時期が私にもありました。


 お家まで順調に馬車と転移魔術で移動中、ウラシアとお話したり侍従たんをこっそり窺って楽しんでたりしていたのですが、帰ってきたら侍従たんったら馬車の片づけがあるとかこの後も仕事があるとかで、ウラシアに引っ張られてさっさと引っこんでしまいました。


 ああん、そつがない。そして素早い。ついでに取りつく島もないです。ぐすん。……ああっ!?


「アディ、お帰りなさい。……あなたまた日焼けして黒くなったの?」

「お姉さま、お久しぶりですっ……!」


 先に帰ってきて出迎えてくださったお姉さまはまたこう……久しぶりにお会いしたら何とも……一段と、エロくなられました。あっしまったオブラートに包むつもりが私ったらありのまま喋っていた。今日はブルーのドレスですか。まったくそんな意図はないのでしょうが、なんか侍従たんとちょっとかぶっててむふふですご馳走様です。あと前より露出度上がりましたね、やっぱりご馳走様です。


 でもでもだって、15歳! これが! いやいやいやいやむっちりしすぎでしょうお姉さま!? 私よりはるかに食べる量少ないのに、なんでそんないろいろと成長なさってるんでしょうかもうホント。


 一年後のデビューの日が妹は今から非常に心配です。両親も心配そうです。まったく、お姉さまったら仕方のない罪作りなお方。私たち家族の見張ってない所で、いったいどれほどの野郎共に夢の時間を提供してしまうことでしょうか。見てるだけで幸せですよ。こんな完璧な造形物に手を出そうと思うのはあれです、よっぽどの思い上がりか、なんも考えてない馬鹿か、頭に血が上ったかの三択でしょう。

 ……ちょっと自分で言ってて気持ち悪い気がしますが、お姉さまがエロイのがいけない。私悪くない。あの胸絶対水に浮かびますよ。よしやかましいからそろそろやめましょうか私。


 ただ、原作ですとお姉さま、アデラリードの社交界デビューの日まで特に話題になることもなく引っこみ続けてるんですよね。こんなに目立つお方なのに、なぜ!?

 おそらく女学校時代にできた取り巻きズとかにやれうちのパーティー来いだとか、やれうちのサロン来いだとか、散々引っ張りだこのはずなのですが、全部あしらったってことなんでしょうか。さすがお姉さま。



 ……うん。でもちょっとその辺、今日はこのまま終わらせられないのですよ?



 お姉さまと二人で優雅にティータイム楽しみながら、私はじっと観察します。

 昔より多少は手伝えるようになりましたから、ちょっとした達成感もあってお紅茶の美味しさが増します。お菓子作りはできないけど、運ぶのも並べるのも私がやりましたよ。えっへん。


 相変わらず猫舌なのでまた冷めるの待ってますお姉さま。きゃわたんです。じゃなくてアディ、しっかりなさい。はっきりさせないといけないことがあるんですからね。


「お姉さま、一つお聞きしてもよろしいですか?」


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