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姫様勇者に会いたがる①

「おお、勇者よ! 死んでしまうとは情けない! 」


 昼食の準備を終え、自室で勉強中のはずの姫君を呼びにきたフォバットは奇妙な言葉を投げかけられると同時に奇抜な格好をしているルナ・ティリーフ姫を発見する。


「馬鹿な格好はやめなさい。ルナ様」


 ルナは付け髭にとんがり帽子、さらには魔法使いが持っているような気の杖を持ち、ベッドの上で踏ん反り返っている。


「勇者よ、君が次のレベルに上がるには後、453の経験値が必要だ!」


 ビシっ!という音が聞こえるようなポーズを行いなんだかよくわからない格好をしたルナは持っている木の杖をフォバットに向ける。

 そんな姫をフォバットはとても冷めた目で見つめている。何も喋らず、ただ黙ってルナを見つめる。


「なに? 私に惚れた!」


 ルナな発言にフォバットはソファーのクッションを掴み全力で姫であるルナに叩きつける。

 ふぎゃ!という悲鳴と共にルナは倒れた。


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


「で、何事ですか? ルナ様」


 倒れたルナを一瞬でロープでぐるぐる巻にし食事の準備してある広間まで引きずって連れてきたフォバットはロープを解きながらたずねた。


「その前にフォバット、言いたいことがあるわ」

「なんでしょう? ルナ様」

「これ、姫の扱いじゃないわよね⁉︎」


 ロープが解かれたことで自由になったルナがフォバットに殴りかかるろうとするが、フォバットは殴ろうとしてきた右手を引っ張り、


「わわ」


 態勢を崩し、力の向きを変えることで、


「ぐぇ」


 ルナが無様な悲鳴を上げながらみっともなく床に這いつくばる絵を完成させた。


「無様ですね」

「あなたがやったのよ⁉︎ フォバット!」


 服の汚れをはたき、ブツブツと文句を言いながらルナは立ち上がり、フォバットの引いた椅子に座る。


「しかし、なぜ勇者なのです? ルナ様」


 静かに食事を始めるルナにフォバットは純粋な疑問を投げる。

 ルナは食事の手を止め、ニヤリと笑う。

 フォバットは直感的に悟る。これは良くないことを考えている笑みだと。


「私、思ったのよ! この世界には魔王がいるのに全然勇者が倒しにいかないって!」


 この姫様、勇者全否定である。

 フォバットはため息を付く。この姫様が一人でこんな発想をするとは思えない。


「何か本を読まれたのですか?」

「これよ」


 そう言い、ルナはスカートの中から本を一冊取り出し、フォバットに渡す。タイトルは『勇者のチカラ! 光の武器』というらしく内容は先程の姫のように勇者全否定である。作者はカーネル・バクター、最近よく売れてる作家のようだ。

 フォバットはルナに本を返すと何故か期待するような目をしているルナが目に入る。なんと答えた物かと考えた末に


「それは魔王ですからね。魔の王と書いて魔王。つまり魔族全体の王様なんですから」

「王様だから一番強いとは限らないんじゃないの?」


 正論である。王様だからといって一番強いわけではない。それをルナは直感で判断しているようだった。

 確かにルナを見ていると王族だからといって強いわけではない。


「まあ、ルナ様を見ていると王族っていうかルナ様バカみたいですからね」

「さりげなく王族をバカにするように見せて私をバカにしてない?」


 ルナがジト目で見上げているがフォバットは完全に無視する。


「しかし、別に 勇者に会う必要を感じないのですが?」

「え? 勇者の光の武器が見たいだけよ?」


 見たいだけで呼び出される勇者もどうかと思うが呼ぶ姫もどうかと思うが。


「……見てどうするんです?」

「光の武器よ! 輝くのよ! 見たいじゃないの!」


 単純に珍しい物が見たいだけか。

 うちの姫様は俗物なものが好きなようだ。そう考えながらフォバットは、頭を悩ます。

 ふと今日の王の謁見者のリストをフォバットは思い出した。


「そういえば姫様、本日の謁見者のリストは見られましたか?」

「え? そんなめんどいのみるわけないじゃない」


 当然と言わんばかりに言い放つルナをフォバットは呆れたように見つめる。

 ルナは興味がないのか食事を再開する。


「本当に興味のあることにしか関心を持たないですね」

「お父様への謁見者でしょ? 私の担当じゃないんだし興味ないわよ」

「興味がないと思いますが、今回、王の謁見者の中に勇者候補がいますね」


 フォバットの一言でルナは食事の手を止める、


「勇者候補?」

「ええ、あとは光の武器を授かれば勇者と認定されます」

「ここで光の武器を授与するの?」

「王の間で王自らが授ける予定ですね」


 フォバットが告げると目をキラキラとさせたルナと目が合った。


「興味が出たようですね」

「うん!」

「あといい加減に守護騎士を選べと父君が言っておりましたよ」

「後よ!」


 満面の笑みを浮かべ鼻歌を歌い出しそうなルナ。そんな彼女が食事を続けるのをフォバットは慈愛に満ちた笑みを浮かべ見ていた。



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