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act.2『ミニスカと機関銃』

はじめましての方もそうでない方もこんにちは!この話は一応BLと呼ばれるものです。まだまだソフトモーホーにも到達していないぬるさですが、苦手な方はご遠慮ください。ですが、新規開拓したいという方は、どうぞ御覧くださいませ!

「なんじゃこりゃ〜!!」


美容班からこだまする、美人のベタな叫び声。

普段の美人からは、到底想像つかない声とベタさ具合である。


前回のメイク合わせ、

〈またの名を『美容班班長乳揉み事件』〉

から五日。

午前中の訓練を終え、

『特殊任務のための強化訓練』

と銘打たれ、美容班へ収集がかかったときのことである。


ほかの隊員達には、麗、美人、華鈴の三人が、モデルの護衛にあたると通達があった。

故、

『特殊任務のための強化訓練』

といわれても、誰も何も疑いもしなかった。

ただ一部の先輩隊員が、彼らを羨ましがり、軽く嫉妬した。


とはいえ。

基本さばさばした連中。

嫉妬はすれども、ねちこくも嫌がらせもなく、最終的には


「頑張れよ!」


と背中を押してくれるような、そんな男前な隊員達ばかりなのである。


今日もそんな隊員達に見送られて訪れた美容班。

絶叫した美人の両脇には、軽く引きつり、言葉を失っている麗と、興味深そうな様子の華鈴。


彼らの目の前には、撮影に使われると思われる衣裳十数点。

その内の何点かは製作途中で、それでも綺麗にマネキンに着せられ、完成が近いことを知らせていた。

赤と紫と白…。

それぞれの香りの花の色。


カジュアルで動きやすそうなもの。

エレガントでかちっとした仕上がりの、少々動き辛そうなもの。

訓練時と変わらないようなもの。

浴衣まで作られていた。

そして、美人に不似合いな絶叫をさせた、考案者を恨みたくなるような。

そんな、エレガントでゴージャスな衣裳。

実に見事な、ドレス…。

しかも二着ずつ。


一つは製作途中で、大人の色気漂わすタイトなロングドレス。

股近くまでスリットが入っている。

何気に肩が露出していたり背中が開いていたり。

セクシーショット満載である。

完成すれば更に華やかでゴージャスなドレスになることであろう。


もう一つはすでに完成しているようで。

こちらはミニスカートで、ふりふりごてごての、ゴスロリ色漂う、ドレス。

美人の更なる絶叫を呼んだ原因である。


バラをイメージした赤いドレスは、裾が軽く絞ってある。

『提灯〈ちょーちん〉』

までいかないものの、ふんわりした仕上がりである。

スカートそのものがバラの花弁のように、フロントは交互に布と、黒いレースが重なっている。

チャイナ服のようなノースリーブのシャツ。

黒いボタンはよく見ると小さなバラ。

こだわりが伺える。

マネキンに被せてあるかつらはツインテールで、ご丁寧にバラの髪飾りつき。

首には大輪のバラのチョーカー。

全身バラ尽くしである。

ちなみに、靴は厚底のブーツ。

やはりゴスロリ色漂うものである。

ヒールは軽く12センチ。

ピンヒールではなく、太めの丈夫なヒールである。

が、普段ヒールなぞ履き慣れていない男性には、どのみち辛いものである。


ラベンダーをイメージした紫のドレスは、まるでパラソルのようにスカートが大きく広がっている。

裾にはレースの代わりに、紫と黒の木の実のようなスパンコール。

ノースリーブのチャイナ服は裾は長く延び、燕尾服のようになっている。

フロントも燕尾服のようになっていて、その先にはそれぞれラベンダーの飾りが付いている。

首には小さな粒を散らしたチョーカー。

セミロングのかつらにも、ラベンダーの髪飾り。

これまたラベンダー尽くしである。

ブーツは同じく、厚底12センチヒールである。


マグノリアをイメージした白いドレスは、完全に裾が絞られていた。

それはまさにマグノリアの花。

提灯のように、丸く膨らんだスカートの裾には、白と黒のふわふわのファー。

チャイナ服のシャツはワンピースタイプ。

裾はパラソルのように大きく広がっている。

チョーカーの代わりに、シャツの一番上の止め紐にはマグノリアのコサージュが付いている。

ウエーブのショートヘアのかつらには、マグノリアのヘッドドレス。

ブーツはやはり、厚底12センチのヒールである。


「可愛いでしょ?

『ANA』に頼んで、大急ぎで作ってもらったのよ。

ポスター用の衣裳よ。

もう一つは発売日のお披露目パーティー用ね。

『CD〈クリスティーナ・ディオ〉』よ。

まだ途中だけど、結構華やかなデザインにしたから。

今とまた違った感じになるかもね。

とりあえず今日はこっちのミニスカのほうを着てもらって。

手直しが必要かの確認と、あとカメリハね。

さ、支度するわよ?

悠、リュウ、華!

準備に入って!」


「いやいやいや、ちょっと待て!」


嬉しそうに衣裳と今日の予定の説明をする茜菜に、美人がストップをかけた。


「何ようっ」


ストップを入れられ、不服そうに茜菜は美人を見た。

今日も厚底ピンヒールの彼女は美人たちよりも背が高く、彼らを見下ろす形となっている。


「何で女装しなくちゃいけないんですか?!

今回自分達が起用されたのは、男が化粧品のモデルになったことがないからじゃないんですか?!

他のメーカーにインパクトをつけるためじゃなかったんですか?!」


戸惑いと怒りの入り交じった声で抗議する。


しかし茜菜は、そんな美人ににーっこり微笑んで、


「勿論そのつもりよ?」


と、美人の頭をそっと撫でた。


「今回あなたたちを起用したのは、

『化粧品業界の初の男性モデル』

っていうインパクトも勿論あるんだけど、もう一つ狙いがあるの。

何かっていうと、世間の感心度よ。

あなたたちだって綺麗な人や好みの人には興味を示すでしょ?

どんな人なのか。

素顔はどうなのか。

世間もおんなじ。

これから世に出ていくポスターやCMを見て、あなたたちに感心を持つ人が現われるわ。

あたしはその数をより多くするのが役目なの。

で、その計画の一つが、

『性別不明への感心』」


三人の頭上に疑問符が浮かんだ。


「女装姿と、普段の、男のあなたたち。

両方を流すことによって、あなたたちの性別を分かりにくくするの。

かっこいい女性にしろ綺麗な男性にしろ。

世間はそういった『ユニセックス』的なものに感心が高いからね」


「…俺たちって、女装したくらいで分からなくなるほど男らしくないのか?」


茜菜の説明に、不満そうに麗が云った。


確かに、普通の、しかも普段から鍛えている男性が女装した場合。

大概において不気味なことが多い。

肉が硬く締まり、筋肉質であるため、女性の丸みも柔らかさも、これっぽっち見られないからだ。

華鈴にいたっては、若干肩に丸みがあるものの、少年の名残であって、女性のそれとはやはりどこか違う。


警護班に入隊して半年。

しかし、入隊する以前からその職種に感心を持ち、それぞれ鍛えてきた。

若い故に多少の丸みはどうしても残る。

しかし、胸や腕は程よく引き締まって筋肉がついているとずっと思っていたのだが…。


「…あなたたちって、細いっていうか、結構華奢なのよね。

勿論男だし警護班だし鍛えてるし程よく筋肉なんかも付いてて女の子と比べると全然骨太なんだけど。

でも同じ年頃の男の子と比べると結構細いほうだと思うのよね。

それに顔立ちも整ってるから化粧映えもするし。

何より艶っぽいのよね!

なんてゆーか、磨かれてる感じ?

男の美しさプラス女の色気みたいな!

だからね、たぶんまわりはおおいに騙されてくれると思うわよ?!

女みたいって云うんじゃないの。

両方の綺麗なところを持ってるって云ってるのよ。

そこのところ、誤解しないでね?」


と、満点の笑顔でウィンクされた。


納得できない。

…わけではない説明であるが。

しかし。

女装への抵抗がなくなるわけではなく、どうにも腑に落ちない美人と麗。


対して、唯一のりのりな、お馬鹿な和ませキャラの華鈴。

茜菜の説明もそこそこに、『華』と呼ばれたアシスタントの手を借り、すでにゴスロリ風のドレスに着替え終えていた。


「なあなあ!

ちゃんと女の子に見えるかな?

似合ってる?

可愛い?

イケてる?」


まだかつらも付けていない素のショートヘア。

メイクもされていないすっぴんの男の顔。


しかし。


なかなかどうして。

そのままでも充分な程、よく似合っていた。


呆気に取られる美人と麗。

目の色を変える茜菜。

そしてその姿に、

『ピュー♪』

という感嘆の口笛が、扉のほうから聞こえてきた。


「おじさん!」


と驚いた表情の華鈴。


「あら、結構早いご到着だったわね。」


と、こちらも少々驚いた表情の茜菜。

そして、


「そりゃあ可愛い子猫ちゃんたちに早く会いたかったからね♪」


と、B級映画のプレイボーイのようなセリフで扉に立つ、年配の男性。


短髪の白髪頭に整えられた口髭。

レンズのみの丸眼鏡がとてもさまになっている。

その奥で、エメラルドの瞳が優しく揺れた。


〈あは、やっぱりそっくりだ!〉


『おじさん』

と呼んだ年配の男を見ながら華鈴は思った。

ストライプのシャツにジーンズにジャケット。

首にはネクタイの代わりにショールを巻いている。

いかにも《ちょい悪親父》といった格好。

しかし、どこか紳士めいた雰囲気も漂う。

それは、ぴしっと背筋の伸びた姿や、眼鏡の奥で揺れた、優しいエメラルドの瞳のおかげかもしれない。


『おじさん』

と呼ばれた年配の男性はにっこり微笑むと、華鈴に近づき、そのまあるい頬に小さくキスした。


「相変わらず可愛らしい少年だね、華鈴ちゃん。

あの馬鹿息子の恋人にしておくのが本当に惜しいくらいだよ!

どうだい?

今からでもおじさんに乗り換えないかい?

君ならパリコレでもトップモデルでも、充分通用するよ!

真剣にこの

『アルシド・レイベル』

の専属モデルを考えてみてもらえないかな?」


そう云うと、今度は華鈴の両手を取り、わざとらしく跪いて見せた。

女性ならば、そんな行動を取られたら、即O.Kしてしまいそうであるが。


華鈴はアルシド以上ににっこり微笑み、


「いいから早く立って下さい。」


と軽く彼をあしらった。


「そんなことを云って。

おじさんには既に恋人がいるでしょう?

この間妊娠したのが分かったって、アルベルトから聞きましたよ?

真春さん、でしたっけ?

大切にしてあげないと、男が廃るよ?!」


華鈴のセリフに、アルシドは驚いたように目を丸くした。

が、すぐに再び満面の笑みを浮かべると、高らかに笑った。


「あっはっはっ!

さすが、息子の恋人には情報が伝わるのが早いな。

これは草々悪さはできないな。

用心用心☆」


「…ねえ、『真春』って

『戦女〈ワルキューレ〉』

の異名を持ってた、元警護班副班長の『真春』?

セラフィムの前任の…」


二人の会話を聞いていた茜菜が問い掛ける。


「『セラフィム』

って副班長の異名で、本名じゃないですよ?」


茜菜の問い掛けには答えず突っ込みを入れる華鈴。


「いーのよ。

誰のことかは通じるんだから」


動じない茜菜。


にっこり微笑んで、アルシドが答えた。


「茜菜さんのおっしゃるとおり、警護班前副班長の

『魚住真春〈うおずみまはる〉』ですよ。

ちなみに彼女の後任、現副班長であるセラフィムの本名は

『セラフィエル・暁・ピアース』

ですよ♪」


「…異名とたいして変わらないじゃない☆

ま、いーわ。

そんなことより、一流カメラマンも到着したし、さっさと撮影に入りましょ!

ってちょっとお!!

麗! 美人!!

あなた達まだ着替えてないじゃない!!

いい加減観念しなさい!

男らしくないわよ?!」


話を切り上げ、『仕事』へと戻った茜菜。

即座に悠、リュウの両名に指示を出し、準備に取り掛からせた。


眉間に思いっきりしわを寄せ、せっかくの美貌を台無しにする麗と美人。

一人ノリノリで、楽しそうにメイクをされる華鈴。

『特殊任務のための強化訓練』。

結局のところ、ただの衣裳合わせとカメラテストが、着々と進んでいくのであった…。

はじめましての方ははじめまして!読んでいただいてる方にはお待たせいたしました!まだまだキスどころか絡みすらないぬるま湯話ですが、いかがでしたでしょうか?なかなか続編だせない遅筆な自分にイライラしつつ。次書き上がるのはいつかなー…。

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