2-2-4
迷異昼まひるは個人的に好きな女の子。
2-2-4
目が覚めた。いつも通り隣には赤芯音菜が眠っている。
というか、他にもおなかとかひざとかにやわらかい感触があるような……。
なんだ?
この折り重なった、肉感的かんしょくは?
「あ、おはようございますぅ、夕哉先輩♪」
おなかの辺りでうつぶせに寝ていた肉感的女性に声をかけられる。幼い口調。
「お、おはよう……って君は?」
「え、ほら、御存知ないですか? 迷異昼まひる、ですよぉ」
どういう事だ?
音菜だけでなく、まひるまでもこちら側の、現実に出てきているとは。
……というか。
「おはよう」もう一人、いた。ちぃさな声。
「あ、ああ、おはよう」
ボサボサの髪を手ですきながら床に落ちていた眼鏡を拾い上げ、
「名前、名乗らなくてもいいよね?」
物語で大事なのは登場人物が初登場するところだと聞いた事がある。別にこれは小説でもなんでもないけど(あー、なんでもないなんでもない生きてる事に意味も無いただ好きな人に献身とか、そんな格好良い事でもできたらそれでいいや)それをはしょるのはどうかと思う。そう思ったので、
「あーと、一応、聞いておいてもいいかな?」
三つ編みしてないからわかりにくいってのもあるし。
「紫堂佐鳥。あなたと同い年の」
頭が痛くなってきた。
まあ、夜中に撒かれるガスのせいで、寝起きはいつも頭は痛いのだけど。それとは別に頭が痛くなってきた。
もう一度眠った方がいいのかもしれない。
「夢じゃ、ないですよ? セ・ン・パイ?」
先回りしてまひるに止められる。
「そうなの?」
音菜が出てきた時にも驚いたけど、まひるも佐鳥も出てくるだなんて。どうなっているんだ?
僕は記憶喪失で、この三人は元から知っていた人達だったとかいう超展開なのだろうか。
「ていうか、君達はどうして僕の事を知っているの」
音菜も、二人もそうだ。
僕の夢の中でしか会った事のない人達なのに。僕は中学校に行っていないわけで、後輩も当然いないわけで。
「あんた、忘れたの?」
音菜にバカにしたような表情で言われる。
「漱石の、コ・ト・バ」
ああ、と。なんだったっけ。
多分音菜が言っているのは夢の中の言葉だ。
……思想から人が生まれる。
……それが今何の関係がある?
……というか。
……僕の夢の事を知っているのか?
……どうして?
……どうやって?
……如何様な理由で?
「まあ、いいじゃないですかぁ」
まひるが言う。
「せっかく、みんな一緒になれたんですから。仲良く、仲良く、ですよぉ」
まひるはそう言いながら僕の右腕に自身の腕を絡めてくる。
両の胸が僕の腕に触れて、温かさが伝わる。心臓の鼓動まで。
ちょっとまずい。寝起きだし。
「あ、あんた何やってんのよ?!」
音菜が慌てた声を上げる。
「夕哉の事一人占めにするの、よくない」
佐鳥がぽつりとそう言う。文句なのかなんなのかわからない。
「今実質二人占めだけどね」
確かに音菜の言う通りだ。音菜が左側の腕に絡まってきていたのだから。そしてまひるの事を睨みつけ、
「私は一人占めしたいけど!」
どういう意味だろう?
音菜の言葉の意味は僕にはよくわからなかった。ただまひるは音菜のその言葉を受け、ベェと舌を出して答えている。そして、
「それは、私もそうですよぉ」
両方からぎゅっと腕を引っ張られる僕。ええ、ああ、はい。興奮を禁じ得ませんでしたよ。はい。
なんだ? なんだ? なんなんだ? この、状況は。
あまりにも僕の願望みたいな状況が起きている。僕がまだ夢を見ているとでもいうのだろうか。そんなバカな。
「あなた達に私の夕哉は渡さないし」
その言葉と同時に佐鳥が僕の胸の中に飛び込んでくる。
そんなバカな。
なんだこの展開は!
甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
僕は今まで女性に明確に好意を向けられた事はなくて当然耐性もないわけでそれが複数同時とかもうね、肉体的にも精神的にも耐えきれないというかあまりにもあまりな現実を受け入れられないというかこんなのありえないだろと感じひたすら頭の中はそんなバカなそんなバカなそんなバナナ。
そのまま僕は佐鳥に押し倒された。
「うわっ、ちょ、まっ!」
どうでもいいがちょっと待ての略だだがそれは今は関係ない!
古典的ダジャレを脳内で発声してしまうくらいに、それくらいには今の状況はそんなバナナだったわけで、つまり僕は今相当に動揺し興奮しているな、うん。
十二分に加速した思考意識の中で僕の人生以上に意味不明な事を考える。
現状を、理解する。
これはラブコメだ!
ハーレムラブコメの終着点は日常系ほのぼのって理論が私は大好きです。
ああいうの面白いですよね。
ペンタブ買ったし今度からマンガ描こうかなと思っている私……。
今まで書いた小説を元ネタにして描きたいなあと思ったり。




