2-2-6(機関への報告書2、抜粋)
この手の文章を書くと短くなっちゃうのは、ここの練りこみが甘いからなのかもしれないですね。
2-2-6(機関への報告書2、抜粋)
経過は極めて順調です。
思念体NO2、赤芯音菜。
思念体NO3、紫堂佐鳥。
思念体NO4、迷異昼まひる。
三人とも被験者の『悪意』の影響を受けることなく、独立した個として生活をしています。
被験者への依存が完全にないとなると、彼女達は本当の人間といって差し支えないかと思われます。
もちろんその「存在」は今はセカイシステムに依存していますが。
その他は本物の人間と何一つ変わりません。興味深い事です。
さらに面白い事には、セカイシステムを利用して具象化した彼女たちは被験者からの思想の影響をほとんど受けていないように見える事です。
思念体NO1、七色礼美もそうですが、生まれたばかりでも十分に「人間」ですが具象化する際にまず足りない分は被験者の思想で仮に補填しておきある程度の時間をかけて現実世界から情報を仕入れそこを最終的に正しい情報で補完するようになっているようです。どういう方法でそれを行っているのかはわかりかねますが、距離の離れた人間でも互いに影響しあう事があるというのは、医学的なエピソードとしてはよくある事であり、人間の脳が電気を用いて活動している以上、他人の電気信号を拾い知識や思考を読み取る事も理論的には不可能ではないかと思われます。そして、それによって、思念体の設定は補完されうる。事実最初の思念体である礼美は、初めの時持っていた被験者の知識や記憶といったものを、ほとんど忘れてしまっています。代わりに、絵美の知識、記憶を全て持っています。この効果をうまく使えば要人の知識を完全に持ったコピーを作りだす事が出来る事になります。情報のあいまいなスパイ活動に比べ、このコピーを作りだす効果は非常に有用です。費用に関しても、安定すれば前者より遥かに廉価に行えるかと。
また、これはもしかしたらの話なのですが、セカイシステムさえ維持できるなら、最終段階の手続きを踏まずとも、既に被験者は不要なのかもしれません。被験者とまったく別個の個性を持つ者として。つまり、本人にとっては必要なものなのだろうが、思念体は既に独立した存在としてできあがっていると思われます。
いずれにせよ今後三体の思念体がどのようにして動くのか、注意深く観察したいと思います。
思想から人間が生まれるって考えは、割と好きです。




