(2)ハイランカー
予約投稿 現在 2013/02/24 16:10。
果たしてこれが投稿されたとき、読んでる人はいるのか?
ハイランカー
それは、人にして人ならざる者。
人体を改良し、人体を超えた力を発揮する者。
無理な改造を行うが故に、成功すれば何の問題も無いが、失敗のリスクが高く、普通はよほどのことが“あっても”行われない、ある種の禁忌に触れる改造を施された者。
そんな俺に、ただ銃を撃っただけで当たる訳が無い。
別にアイツらの腕が悪い訳では無い。ただただ俺が異常なだけなのだ。
全ての銃身を見て射線を予測し、弾丸の避け方を判断。発射のタイミングに合わせて体を動かし、実際に迫り来る弾丸を見て、臨機応変に避けて行く。
だがしかし、銃弾への本能的恐怖が無い訳では無い。
俺に出来るのはただ銃弾を見切り、そして躱すことだけ。
いくら速く動けるといっても、音速には到底及ばないし、何しろこの数だ。今もかなりギリギリである。
当然だが弾に当たれば体に穴が空くし、的確に責められれば弾丸に当たることだってある。
つまり、弾丸には当たるし、当たれば致命傷になる。
Q. 勝てるのだろうか? (Yes. or No.)
A. Yes. 勝てる。
一瞬頭の中を過ぎった不安を、一種の自己暗示によって瞬時に追いやる。
迫り来る弾丸の雨を前にして、自分だけで逃げ出したいという衝動を押し殺し、自らの意志をも偽り捻じ曲げる。
自身の感情のままに動くことを許されるのは強者だけだ。
弱者に出来るのは強者の感情から生まれる隙に付け入ることだけ。
俺は何度も訪れる“行けるかもしれない”――“行きたい”という衝動を押し殺して、“行ける”というタイミングを待つ。
ヤツラはほぼ同時に射撃を始めた。
ならば――
―――ここだ!“行ける”!!
ならば弾切れという射撃の終わりも、大体は揃うだろう。
俺は瞬時に飛び込み、最後の弾幕をくぐり抜ける。
もっとも撃ち終わるのが遅かった一人の懐に潜り込み、銃の反動で動けなくなっている男を殴り飛ばす。
Q. 攻撃を続ける? (Yes. or No.)
A. Yes. そのまま続ける。
瞬時にそう判断を下し、隣で怯んで硬直している男を蹴り飛ばした。
と、その瞬間に確信する。
―――飲んだ。
そう、飲み込んでやった。
俺のペースに、
俺の間合いに、
俺の勝負所に。
だからこそもう負けない――負ける要素が無い!……油断もして無いぜ?
モチベーションはパワー、スピード、技量と並んで重要な要素なのだ。
ならばそれが覆らぬうちにそのまま畳み掛けるべきだろう。
俺は蹴った勢いのまま回転し、その奥に居たもう一人を後ろ回し蹴りで蹴り倒した。
それと同時並行で残る四人を視界に収め、出来るだけ一直線上に並ぶ様に移動する。
前の奴が後ろの奴の邪魔になるから、これなら実質一対一の×4。
いくら俺でも普通のやつにちょっと毛が生えた程度のやつに、一対一で負けてやる程、弱くも甘くもバカでも無い。
先頭となった男が慌てて銃を構え直すがもう遅い。
銃の腹を押さえて射線を逸らし、体勢の崩れた相手を殴り倒す。
そしてそのまま前進。
次の斜めに後退した男を蹴り倒して、目の前に来た別の男を更に蹴り付け、残る男をまとめて吹き飛ばした。
すぐさま巻き込まれて吹き飛ばされた男の下へ行き、
「……終わりだ。」
静かな宣言をして、俺は倒れていた男を踏み潰した。
なぜそんなことを言ったのか?
俺自身にも分からなかった。
◆◇◆◇◆
……さてどうするか?
気まずい。……とにかく気まずい。
男達を片付けたのは良かった。それ自体は良かった。
だが、……なんだよ?『……終わりだ』って、カッコつけすぎだろ。
挙句の果てに大してカッコよく無いという。
セリフが良くても、経過がダメすぎるだろ!
……ああ、穴があったら入りたい。
などと一人で悶々としていた俺を知ってか知らずか、
「あの?――」
鏡色の髪をした少女が俺に、
「――助けていただき、ありがとうございました!」
などと言ってきた。……おそらく――いや、間違いなく知らないだろう。知ってたらむしろ怖い。
……どうでもいい、そんなことは置いておく。
「いや、気にしないでくれ。」
―――俺は君を見捨てるつもりだったのだから。
とは、続けられなかった。
「それでも、あなたは私を助けてくれました。――」
心の中を見透かされた様なセリフとタイミングに、内心ドキリとした。
「――私があのときあなたにぶつからなければ、あなたを巻き込むことはなかったのに……。」
「お互い様だよ。――」
が、そんなことはお首にも出さず、続けられた少女の言葉を勇め、更に続けた。
「――それに、今はもう何も無いんだ。済んだことを気にしてても仕様がない。」
「でも……――」
鏡色の髪の少女は尚も何か言いたそうにしていたが、返す言葉が見つからなかったのか、
「――……いえ、ありがとうございました。」
と言って引き下がった。
替わりに、
「あなたは……いい人ですね。」
そう、言葉を紡いだ。
見る者を幸福にする、慈愛に満ちた、綺麗すぎる笑顔と共に……。
と、
きゅるるるるる~
可愛らしい音がして、俺の目の前に居る彼女の顔が、見る間、見る間の内に赤くなった。
「……」
「……」
その意味する所とは?
「……腹……減ってるのか?」
顔を俯かせたまま、少女はコクリと頷いた。
「ならさ、――」
何故この様なことを言ったのか、
「――うちに来ないか?」
よくは分からない。
「えっ?!いいんですか?!――」
厄介事は御免だし、
「――私と居ると、また巻き込まれてしまいますよ?――」
他人は――いや、自分すら信用出来ない。
「――ホントは私が悪者で、あなたを騙しているのかもしれませんよ?」
そんな俺だけど、
「ああ、うちに来いよ!」
ただきっと、
「ありがとうございます。――」
そして浮かべられたこの笑顔を、
「――……それと、――」
ただ、また見たかったのかもしれない。
「――よろしくお願いしますね!」
―――任せておけ!
心の中で、そう誓った。
さし当たっては、
「なあ、名前は?」
これから一緒に暮らすに当たって必要だろう。
ところが、
「……」
答えられないらしい。……前途は多難な様だ。
だがやがて、
「……“リアルキーロック”……です。」
おずおずと答えた。
変わった名前だ。何より長い。
本人も気に入っている様子は微塵も無いし、……よし!
「“零”だ。よろしくな、……“リア”。」
一瞬キョトンとした顔をしていた鏡色の髪の少女ことリアだったが、
「はい!」
と、すぐに応えてくれた。
その顔には、この日一番の笑顔が浮かべられていた。……気に入ってくれた様で何よりだ。
次回と次次回は説明回と閑話です。……投稿どうしよう?
取り敢えず、
次回、
(3)新たな日常……に向けて
よろしくお願いします。