表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純愛過激派君はサキュバスなんかに負けない!  作者: 心我 湧立


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/17

7 少年は相対する

 ある日、異世界より来る勇者により、魔王が倒された。


 勇者は12人の妻を娶り、それぞれと子を成した。




「クラーク、わざわざ迎えに来てもらって悪いんだけど、帰ってもらえないか?」


「クラーク()だ……取り込み中のようだが、オレを優先してもらおう」


「おじさんは一緒じゃないのか?」


「団長は忙しい、それに、貴様一人の相手くらい、オレにも出来る」


「なるほど、勝手に来たのか」


「…………」


 沈黙する巨躯、その身体は真っ黒な鎧に覆われている。鎧には金で細かく聖剣の意匠が刻まれ、ゴテゴテして趣味が悪い。切りそろえられた青色の髪に、鷹のような眼つき、昔はもっと優しい顔だったのに。


 腰に三本ずつ差した剣、右手に持った抜き身の剣と合わせて七本、ああ、厄介だ。


「……ねぇ、どこの誰か知らないけど、名乗るくらいはしたらどうなの?」


 アルは人間の言葉も話せたらしい。その声は平静を保っているが、ボクを掴んでいる手の力が、内心穏やかでないのを示している。


 クラークスは憮然とした顔を更に険しいものにした、マズい、それはマズい。


「ボクから説明する、それでいいか、クラークス」


「ああ」


「アルセリア、彼は『十二人の勇者の子』の一人、クラークスロット」


「……あれが、勇者の子……………………?」


「そうだ、オレこそが勇者の息子、聖剣を受け継ぐモノ、クラークスロット」


「そう……勇者の息子……………………」


 憎悪に染まった眼は真っ赤で、彼女はボクから手を離した。


「私はアルセリア・メル・メードレル、誇り高き淫魔(サキュバス)、突然だけど、貴方を殺すわ」


「ま、待て、アル!」


「………………オレはどうでもいい、お前のような魔族に構う気はない」


「あら、そんなつれないこと言わないでくれる? 今すぐ殺したくなっちゃうわ!!」



 ぶんと、目の前から彼女の姿が搔き消える。


 そして、鳴り響く金属音。


 アルセリアはその爪を長く伸ばし、クラークスは手にしている剣で打ち払う。


「ッ…………」


 数秒に、何合という打ち合いの音。王都で見た兵士達の訓練より、二人の出す音は多く、大きいモノだった。


「それが、聖剣ってわけね!!確かに、硬い、けど!!」


 爪と剣の刃がぶつかり、押し合う、鍔迫り合いのような、力の拮抗した静止。


「大したことないわ!」


ガギ、と剣を絡めとった爪、クラークスの手から弾かれた剣、無防備なクラークスの胸元に、アルセリアの五本の爪は槍のように、鎧を貫く力をもって迫り────


「アル!避けろ!」


ボクの声は間に合わなかった、彼女は背中から腹へぐさりと貫かれ、そのまま地面に縫い付けられた。


「がっ…………は…………?」


彼女が首を後ろに向ける、そこには、確かに弾き飛ばしたはずの剣。


「メードレルの淫魔(サキュバス)、精を吸い肉体を強化するすべに長けていると聞いたが…………この程度か」


 クラークスは腰に差した剣を抜き、彼女の眼前に向けた。


「待て、クラーク!」


 彼女と剣の間に飛び込むと、彼は少し意外そうな顔をした。


「…………マナ、なぜ庇う、情でも移ったか」


「一日か二日程度の付き合いの相手に移すような情、持ってないよ」


「ならば、なぜ」


「お前の目的はボクだろう、関係のない彼女を巻き込む必要はない」


 時間を稼ぎながら、後ろ手で彼女に言葉を伝える。


「…………その魔族が勝手に襲ってきたのにか」


「マナ、どきなさい…………その男は、勇者の子なんでしょ…………私が、殺さないと…………」


 ああ、くそ、黙っていればいいのに!どうしてこんなことに…………!


 じっとクラークスを見つめるが、彼の意識は後ろの彼女に移ってしまった。


「…………なんだ魔族、お前、マナのことは知らないのか」


「…………何がよ」


「そいつも、勇者の子の一人だ」


後ろで息を呑む音がした、が、間に合った!


げほっ、とボクが息と共に吐きだしたのは、煙幕の巻物(スクロール)


後ろに飛びのいて、彼女の肩に掴まる。


「行って!」


瞬間、噴出した煙が視界を塞ぐ、彼女を縫い付けていた剣は、もうない。


黒羽を動かして、彼女は飛ぶ。その速度は速く、煙幕の中をむやみに攻撃しても当たらないと確信するほどだ。










視界が晴れ、クラークスは周りを見る。


二人は陰も形も無くなったが、地面に残る血のみがそこであったことが夢でないと証明している。


クラークスは辺りを探し、血が数滴ずつ、等間隔に落ちているのを確認した。


彼はため息をついて、その血を追い、森の中へと進んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ