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純愛過激派君はサキュバスなんかに負けない!  作者: 心我 湧立


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16 少年は帰る

「──なら、アルはメイ…………母さんに会ったことないのか?」


「当然でしょう、アタシが産まれる前、勇者暗殺に行ったきりなのよ」


 ボクは若干引いていた。ププとアルのあの喜びようからして、何かしらの接点があったのだと思い込んでいたが、会ったことすらないとは。いや、確かにアルとボクは同い年だし、当然と言えば当然なのかもしれない。


「ママが何度も話してくれたわ、『お姉ちゃん』はこんな人だった、凄い人だった…………って何度も何度も、寝る前とかにね」


「なるほど、で、勇者暗殺ってなに?」


「……………………」


 アルはピタッと口を止めた。目が物凄い泳いでいる。


 眼下に広がる海を見て、空に輝く星を見て、ついでにクラークスの聖剣を見て、そして、アルはため息をついた。


「…………ママに絶対に内緒にしてって言われてたのに」


 小さくつぶやいた後、アルは短く説明した。


「勇者を倒すために、淫魔(サキュバス)が駆り出されたの、一番強かったマルセリア姉さんが行くことになって、帰って来なかった…………そのことを知ってるのはメードレルの家の者と、アタシがうっかり話したププだけ」


「極秘任務だったのか」


 クラークスの声に、どうかしらと彼女は言う。


「単に、『勇者』を殺しに行くサキュバスが増えるから黙っていただけかもしれないわ」


「ああ…………」


 間違いない、会ったことないアルやププですら憎悪を抱くほどなんだ。実際に会ったことのあるサキュバスなら決死の覚悟で、刺し違えてでもと行きかねない。


「兄上…………また出てる…………」


「あ、ごめん」


 意識してないと、サキュバスの匂いが垂れ流しになってしまう。クラークスの目とアルの目が若干ぴくりぴくりと揺れるのを見ながら意識を集中する。


「…………やっぱり、アンタは姉さんの()ね」


「何に対して?」


「姉さんの唾液、一度だけ舐めたことがあるの」


「……………………なんで?」


 なぜ唾液を舐めるのか、どうして会ったことないはずの母さんの唾液を舐めたことあるのか、自分でもどっちの意味か分からない疑問だった。


「貯蔵してあるのよ、ママが大事に取っておいて、どうしてもって時に舐めてるわ」


「…………で、どうしてそれがボクのことと繋がるの?」


「アンタの匂い、嗅ぐと幸せな記憶が見えるのよ、一瞬だけ、夢みたいに」


「兄上と訓練してた時の思い出が、入ってくる…………また、兄上、出てる」


 ぐらっとクラークスの体勢が崩れかけ、慌てて意識を集中させる。


「ちょっと、マナ、髪色戻ってるわ」


「え、あ…………」


 ボクが髪をみると、そこにはまだらのピンク色。またやってしまった。


「肉体に関わる力は、やっぱ格段にアタシの方が上ね」


「別に、角さえでなければいいんでしょ」


 髪を持ち、集中、わらわらと布に水が染みるように、ゆっくりと髪が茶色に変わっていく。


 肉体変化は中々難しい。 意識しないでいると、勝手に色が戻って、角も飛び出てしまう。王都へ着くまでに出来なければ、ボクは魔族としてぶっ殺されるか、あるいは罪人(ニンゲン)として殺されるか。


「兄上、そろそろ陸に着く」


「よし、なら作戦通り、明日の朝に王都について、母さんを迎えに行く」





 真夜中、王都まであと一時間くらいの場所。


 念のため野宿を選んだが、指輪に入っていた野営用のセットのおかげで大した問題はなかった。


「ええ…………こんなの食べるの…………? 家畜だって、もうちょっといいもの食べてるわよ」


 指輪に入っていた謎の四角いバーを三人で齧る。うん、父さんには悪いけど、なんでこんなの入ってるんだろ…………


「アルセリア、これは父上が考案した栄養価の高い保存食だ、戦場でも多く食べられたという」


「…………ますます食べたくないわ」


 クラークスの言った内容は、ボクの知らないことだった。そうか、父さん考案なのか、なんだか急に美味しく感じてきたぞ。でも物凄く水分が欲しくなる、唾液たっぷりのボクでぎりぎりだ。


「クラーク、王都には『誰か』、いるかな?」


「…………ミアレプラーナがいるかもしれない」


「ミアか…………」


「ちょっと、誰よそれ」


「勇者の子の一人、6番目の子だよ」


「勇者の子って、全員が王都にいるんじゃないの?」


「そんなわけない、王国の血筋はクラーク含めて3人で、一人はどこかに留学中だよ」


「ああ、確かそんな話を聞いた気がする」


「…………角無し(アンタ)たちって、本当に仲が悪いのね」


 アルは辟易するようにため息をついた。


「でも、ミアは厄介かもしれないな」


「どうして? 勇者の力ってのが強いの?」


 勇者の子に発現する特異技能、ミアのソレは────


「……………………クラーク、知ってる?」


「知らない」


「……………………アンタたちって、本っ当に仲が悪いのね」


「でも、そう大したことはないはずだよ、ミアにされたのは完全無視だけだったし」


「……兄上、兄上が淫魔の住処にいるとオレに教えたのは、ミアレプラーナだ」


「…………、……………………、……………………………なるほど」


 クラークスの能力は、王宮の誰もが知っている。その強さは武力のみなら多分、勇者の子の中でも一番に違いない。


 そんなクラークスを焚きつけた張本人が、まさかミアだったとは。しかし、一体どうやってボクの居場所を突き止めたんだ……………………?


「オレの予想だけど、ミアレプラーナの能力は『魔法の読み取り』だと思う」


「魔法の、読み取り」


 転移魔法の残滓を、読み取った、そんなことが出来るのか? いや、だとしても……………………


「だとしたら、特に心配することもないわね」


 あっさりと言うアルに同意する。どのみち王宮で魔法はほとんど使えない。もし使ったとしても、読むだけなら何とでもなるだろう。


「…………でも、一応警戒はしておこうね」


 ボクはそう締めくくり、夜は過ぎていった。

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