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純愛過激派君はサキュバスなんかに負けない!  作者: 心我 湧立


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9 少年は賭ける

「ああああああああああああああああああああーーーー!何にも思いつかない!!」


 後ろからアルに抱きしめられ、高速で運ばれる。視界に移る景色は溶けて、頭もぐらぐら、アルの胸が大きくて助かった。


「なんか考えなさい!」


「無茶言わないでよ!相手は聖剣なんだよ!?」


 叫んでいる間にも、森は伐採されていく。ぐるぐると回転する3本の聖剣が、縦横無尽に駆け回る。


 聖剣化した刃は木を土塊みたいに斬り飛ばし、聖剣化した柄は木を土塊みたいに削り飛ばす。あんなのに当たれば、ボクもアルも変わらない、やっぱり土塊みたいに斬り削られる!


「……………………だぁああああ!!思いつかない、思いつかない…………!」


 指輪のモノ全て使った生き埋め────ダメ、聖剣があれば防がれる。


 意識の隅をついて聖剣を無力化────ムリ!そんな余裕は無い!


 全裸で飛び出て全力泣き落とし────ああ!なんでこれが一番現実的なんだ!?


 だって、勝てるわけがない。アレは聖剣なんだ。


 勇者の初期装備にして最終武器、敵うものがあるとすれば、それは────



「…………くそっ!!」


 『勇者の力』、ボクの身体にも流れてるはずの、勇者の血の覚醒…………特異技能の発現……!


 それくらいしか思いつかない!


「何か策は出来た?」


「うん、ボクの眠ってる力が、都合よく覚醒してくれたらいいなぁ!!」


「ただの願望!?」


「そうだよ!!クラークだって発現してるのに、なんでボクは発現しないんだ!?」


 悲鳴のように、不平不満をぶちまける。必要なのは力、力、力……………………


 何かないかと、首をぐるぐる回して周りを見る。落とし穴に使えそうな都合のいい窪みとか、意味ありげな箱とか、湖とそこに棲む魔物とか!何か、何か無いのか!?


 ああ、父さん!父さん!助言を頂戴!絶体絶命の状態で、勇者はどうしたの?!


『父さん、最強だったからな……』


 そうだった!へなっへなだけど父さんそもそもが凄かった!父さん(もうそう)じゃダメだ!


 目の前が開けてる、森を抜けたらしい、そうしたらとうとう逃げられない!


 メイド!メイド!何か言ってくれてなかったか!?生活の知恵!生き抜くための知恵!


『唇同士を合わせると、元気が貰えるのよ~』


 …………………………………………あ、そうだ、そうだった!それがあった!


「アルセリア!」


「思いついたようね!どうやってあの男をメタメタにするのかしら!?」


「ごめん!そこまで自信ない!」


「なんですって!?」


「だけど、協力して!」


「…………分かったわ!」


 良かった!ドキドキしてると仲が良くなる状態はまだ継続らしい!後が怖いけど、そんなことはいい!!


 走るアルセリアに止まってもらい、しゃがんでもらう。


「それで、何をするの?」


「今って体力ある?元気ある?」


「た、体力?」


「あるの!?ないの!?」


「精気は半分くらいあるけど……」


 ええい、精気って何だ!?だけど、身体を貫通した怪我も精気を消費して治してた、なら、元気だって治せるはず!!


「ちょっと、限界まで、元気を貰うよ!」


「え、ちょっと、何を────────」






 黒い鎧に身を覆う巨躯は、宙に浮いていた。


 否、宙に浮いているのは聖剣、右手に掴んだ聖剣と、両脚を乗せる聖剣、二つの聖剣でバランスをとり、滑るように、伐採した木々の上を飛んでいた。


 森を抜けた所に二つの人影を見つけ、彼は憮然とした微かに顔を緩めた。途中から血の跡が見当たらなくなり、逃げられたかと思っていたのだ。


 彼、クラークスの持つ剣は残り6本、全て聖剣化し、マナの指輪に奪われる心配はない。


 伐採に使用していた三本を戻し、左右と上に配置。移動に使用していた聖剣の一本は手に持ったまま、もう一本は地中に潜らせる。


 腰に差した剣は予備として取っておく。


 彼の勝利は揺るぎない、たとえ、マナと淫魔がどんな奇策を使ったとしても、万に一つの可能性すら残さない。


「……………………は」


 彼は、ソレを見て、固まった。


 一瞬、聖剣の操作が乱れる。


 そこで行われていたのは、捕食だった。


 触れ合う唇、絡む舌、唾液の交換、頬をがっちりと掴み、逃げられないように、暴力的に、一方的に、喰らっていた。


 …………その行為を行っているのがあの淫魔であれば、彼は何一つ揺らがなかっただろう。淫魔と相対した彼は、その強さを知っている。精気を奪う光景として、当然のもの。


 しかし、


「ぷわ、っと」


 貪られ、崩れ落ちたのは淫魔、その姿に、爪を出して襲い掛かってきた時の脅威はまるでなく。


「ああ、ああ…………うん、良かった、アルに元気がたっぷりあって」


 にこり、口角を持ち上げた、その口に絡む髪の色は、赤。


「さぁ、クラーク」


 本能的が警鐘を鳴らし、彼は腰に差していた聖剣を、無意識に出した。


「喧嘩しようか」


 淫魔(マナ)は、軽やかに、微笑んだ。


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