097. ガチャの結果
ルーラー・ビーもそうだが、クレイジー・マシンナリーも周回前提のボスだ。
それを念頭に置けば二段階、三段階のパターン変化をなくして周りやすいようにしていると取れなくもない。……いや? ルーラー・ビーは少なくとも二段階目っぽいのはあったぞ?
「とんだ肩透かしだったね……」
「楽ならいいじゃないか」
リトがぼやきながら戻ってきてパラトスに何かを渡している。なんだろうと思ったら、腐食液で壊れたクレイジー・マシンナリーの一部だった。
「モルトー、答え合わせ」
「もういいのか?」
「なんか冷めた。たぶんこれ正攻法じゃないでしょ?」
ここからだって盛り上がってた気分が台無しだと言外に匂わせつつ、パラトスを指差す。腐食液なんてもの、全員が持ってるはず無いしね。
「まあ、そうだな。普通より速く終わってる。そこは朗報だなあ」
モルトいわく。
本来ならスクラップの山を崩したりプレイヤーの動きでボスをあのダメージゾーン、放電してる水たまりに落とすのが最初らしい。
落ちたボスは感電して、計器トラブルを起こしていく。攻撃は大ぶりなものからターゲットをつけない乱舞に、ジェット噴射での避けも自傷ダメージが付いて、最終的には外装をパージして立て直そうとするが、そこでようやく攻撃が通るようになるとか。そこからコアにダメージを与えて、コアのダメージが一定量になると先程のように退却する。
なんだ第二段階あるじゃん! こっちが段階すっ飛ばしただけですね!! ごめんね!!
「工程無視して直接コアにダメージ与えてたのか」
「MVPだな」
「かかった位置も良かったかな。何にしろ貢献できて何よりだ」
貢献も貢献。周回ならば楽なのが一番。
だってほら、今回ランダム動物ガチャ、発生もしてないんだもの。初回はそれなりに確率高く発生するそうだけど、邪道にクリアしたせいか物欲センサーか。とにかく複数種をお招きしたい身としては、まず発生してくれないと話にならない。
そういうことで、ネタバラシもされたところでサクサク周回。
途中パラトスの腐食液が無くなったり、休憩から帰ってきたらモルトが一人チャレンジしてたり、なんだかんだで動物たちをお迎えして今。
……結局リアル時間で3日かかりました。物欲センサーって恐ろしいね。
「わあ、こんなに卵いいんですか?」
「いいよいいよ。鶏が大量繁殖してて」
レラお手製の籠にこんもりと積まれた卵の山。卵の色は白色も茶色も黒色も、なんならレインボーまである。派手だな。
移住したいと希望した動物は兎に鶏にリスに孔雀に鷹に鷲にカラスに鳩に鶏っぽいものにトカゲにミサゴに隼に梟に極彩色の鶏に馬と牛と羊。
鶏は複数種類いるし異常に猛禽類が多いのなんで??となりながら、虚無を抱えつつ周回しまくって、最後の方で畜産おなじみの牛と羊が来たときには天に向かってガッツポーズした。
なおレインボーの卵は極彩色の鶏から。
ネコ科が居ないのは遺憾である。誠に遺憾である。
馬が来たのは嬉しいけれど。
「ニワトリ小屋ですか?」
「いや、放し飼い。まだ管理してくれる人探してるところなんだよね」
「あらぁ、鶏くらいなら餌と水さえちゃんとしてれば管理もいらなくなぁい?」
「それも管理の一種では??」
同じく籠に鮮やかな卵だけを抱えたリーナの言葉にツッコミを入れる。
鮮やかな色合いのものだけなのは、これでマニュキア作るからなんだって。なお必要なのは殻のほうで、白身は美容品に加工されるようだ。
黄身? 普通に食べるらしい。
極彩色の鶏さんはSSRみたいで、お迎えできた人は一部だそう。モルトのところにも居なかった。食品としては普通の鶏で間に合うんでもっとはやく牛とか、まだ居ない豚とか来てくれたら良かったんですけどね……まあ過ぎたことだ。
とりあえず食肉獣とその他の食品ポイントは集まった。あと野菜や果物はレラから株分けしてもらったので、そっちもクリア。魚はエールズが育ててるらしく、今度分けて貰えるのでいいとして、問題はメインの穀物。
なんせこのゲーム、未だ稲も小麦も見つかっていない。種子はなく、粉だけが存在している。
なんならとうもろこしも大豆も見つかってないのだから、結構大変だ。お腹にたまるじゃがいもがあるのは救いか。
一応、食物ポイントとしては、あと魚を迎えられたら達成できる見込みではあるんだけども。
項目としてあるのに一個も手に入れられないのはモヤモヤするんだよなあ。
もしかしたらもっとゲームが円熟してから開始される予定だったクエスト? キーアイテムがなくて達成できないはあるかもしれないが、はてさて。
「シェシェちゃんがぼやいてたわよぉ息吐く暇もないって」
「知らんなあHAHAHA」
「で、でもとても生き生きしてらっしゃいました! 役目があるっていいですよね!」
シェルテットには売買の窓口担当から作物担当から区画管理やら蜂蜜の生産計画やらまあぱっと思いつくだけでもいろいろ投げてるな。そこに畜産担当の選定まで追加されて、大変充実してくださっているようです。
ま、たまにお茶に誘ってガス抜きはしてるし、文句も言われてないんでいいでしょう。
最近は泊まり込み作業なんかもしてるっぽいけど、ブラックじゃありませんよ。夜の箱庭情報もほしいって自発的なんで、ええ。
たぶんあれ。自分で忙しくしてくタイプ。
レラとリーナに卵のお裾分けも終わって、次に向かうは中央交易区。その中でも知識区に存在する図書館だ。リーナいわく、生産系スキルの前提知識とか、世界設定なんかの断片が拾えるらしい。そのものズバリではないのは、大半が崩落によって失われているからだろう、っていうのが検証班の出した結論。
丁度二人も図書館に行く予定があったらしく、場所もわからないので便乗させてもらった。
……いえ、一人だとたどり着けないとかそういうことでは。
いきなり図書館に行こうと思い立ったわけではなく、穀物に関する情報がないかとね。考えたわけ。
すでに調べられてるだろうけど、自分でも一度目を通すことで別の発見があるかもしらんし。
最初に訪れた巨大な神殿よりは小さな、それでも一般家屋と比べれば巨大な建造物。白をベースに下側がうっすらダークグリーンをしていて、何やら根っこのようなものが彫り込まれている。入口は小さめ、窓も小さめ。日差しが奥に入りこまない構造をしているのは、書物を守る意味合いもあるのだろう。まあ、今は大神の保護によって色褪せもしないらしいけど。逆に修復は難易度がバカ高くなってしまったそうな。本好きなプレイヤーが頑張りそう。
入館時には一万ヌンスを支払って、帰るときに返却される仕組み。一ヌンスが大体百円くらいだから、換算したら百万円と結構な金額。保証料だとしてもちょっと見たことがない。入るだけで大変な苦労をしそう……なのだが、渡り人、プレイヤーは初期費用が破格の十万ヌンスなので、開始直後から苦労せずに入れる。
もともとはもっと安かったらしい。崩落で大半のものが無くなって、残ったものをかき集めたから貴重さに拍車がかかったそう。
ハードルは住人には高めだが、一般公開してくれているだけでも感謝されている、と、これまたリーナに教えてもらった。妙なところに詳しいのは、住人との井戸端会議の賜物だそうで……なにしてんの?
まあ、そんな雑学も聞きつつ、保証料を支払って館内へ。
なかなかに広い空間が、柱によっていくつかに仕切られ、本が何冊も空を飛んでいる。
空飛んでる!?!?




