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VRMMOでお酒が飲みたい!性別不定の酒探索〜どうしてここにはお酒がないんですか!?〜  作者: 猫又
増える住人濃くなるメンバー

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092. 増えるフエル

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 リアルが立て込んでいたこともあって、数日開けてになってしまった。

 箱庭を放置しても心配いらないのはやはり契約パートナーのおかげだなあ。


 このゲームは作り込まれているだけあって、野花以外の、アイテム化出来る作物は水が足りないと枯れる仕様。

 もちろん、果樹と葉物では、水が足りなくなってから耐える日数も違うんだけども。

 まあ、枯れたとしても種は残してくれるので、もう一度育てるところからやればリカバリは効く。ただ、ちゃんと育てた結果の種と違って、種の数は作物の数とイコール。無限増殖はできない。

 すぐに育つようなものは、収穫までしてからログアウトするのがおすすめ。ログアウト時に時間が凍結するゲームじゃないので、悲しい思いをします。しました。

 しおしおになったペレラ……苦い経験ですね。


「ああ、丁度いいところに。お帰りなさいませ」

「ん? どした?」


 ログイン地点の箱庭ログハウスから出ると、すぐにシェルテットと遭遇した。緩く二つにゆわれていた髪は、夜会巻き、というのだろうか、今は頭頂部近くに一つにまとめられている。手に持った羊皮紙の束を確認しつつの呼びかけは、秘書官っぽさを全面に押し出していた。


 まあ実際、秘書というか、管理系のジョブには就いていただいたんだけど。


 ステッラのアドバイス通り、シェルテットへと管理系の話を振ったところ、なんの障害もなく通ってしまった。あまりにもスムーズすぎて、本当にいいのか何度も確かめたほどだ。

 ただ、それも彼女が学んでいた学院の制度によるものが大きい。ジョブにも正式についてもらったものの、括弧書きで「見習い」の文字が入っている。

 色んな経験したほうが選択肢が広がるよねってことらしい。リアルでの制度だとインターンに近いのかなあ? わからん。


「ご依頼されていた【ark hortus】外での、商品売買について目処が立ちましたわ。つきましてはこちらに魔力登録をお願いしたく」

「クラヴィン……じゃなさそうだね」

「商業ギルドへの登録板ですわね。中央での露天以外での売買を行う際に、誰しもが登録するものです」

「露天じゃない、だと……!?」


 いきなり店舗とかお金足りるかなあ!?!?

 そんなこちらの動揺を見て取ったのか、もともと大型の店舗を構えている商人にツテがあり、うちの蜂蜜を一定量下ろすことと引き換えに、間借りさせてもらうことになっていると補足説明された。ちょうど取引していた商人との契約期限になって、大型のなかに連なる小店舗の一つが空いたから、と。


「ありがたい、けど、そこ渡り人も利用できる場所?」

「メインは渡り人様方との売買と伺っていたので、抜かりありませんわ」

「おぉ……」


 商業ギルド用の登録板に触れつつ、場所なんかを詳しく聞く。

 露天なんかがある南側の市場区ではなく、西側の知識区になるらしい。そういや大店はそっちになるんでしたね。


「その店舗を任せられる契約パートナー候補もこちらに。ご確認くださいませ」

「あ、はい」


 差し出された羊皮紙の束を受け取って、立ちっぱなしも何だからとログハウスの中に招き入れた。軽く遠慮されたが一人外で待たせるのもね……すぐ選んじゃうつもりだから別のことをしてもらうにも二度手間だし。


 なーにかあったかなあ、と、作り付けの棚を覗いてみれば、品質を上げるために試行錯誤したスコーンが残っていた。今の最高値を出せるレシピが確立してるから、ここにあるのは日の目を見ない。捨てるのももったいないんで、ちょっとしたおやつ用に取ってあったやつ。


 大神とやらの保護に悩まされることもあるけど、一番いいのは食品が劣化しないことだね。ここまで作り込まれたゲームだと鮮度の劣化があるものが多いけど、ホルネクは鮮度の概念はあれど時間経過で劣化はしない。外に放置しててもだ。


 ならなんで作物は枯れるんですか? ってはなるものの、そこら辺の整合性は考察班に任せて気にしないことにしている。それより考えることが山積みなんだわ。

 ほら眼の前の候補者リストとか。お酒の生産方法とか。


 とりあえず適当にスコーンを出して、赤茶はシェルテットが淹れてくれたのをありがたく頂く。蜂蜜はうちで取れたやつです。これぞ地産地消。


 で、店舗を任せる契約パートナーだっけ?

 ざっくりと目を通し、名前とスキルと経歴を確認。……っても決定できるほどの差はないね。あとは希望報酬なんだけど、そこも大差なかった。

 ならば!

 羊皮紙を裏返してシャッフルして適当に選ぶ!!


「この人で」

「……それでいいんですの?」


 呆れたような目線が突き刺さるけども、主にシェルテットがやり取りすることになっているから、いちいち私が面通しするのもなあ。そういう煩わしいものを軽減したくてお任せしているところはあるし。


「お酒に関する特記事項ないんでしょ? ならシェルテットが選んでくれたんだから誰でも大丈夫だよ」

「っ……そ、そうですの。後で後悔しても知りませんことよ」


 頭痛が痛いみたいになってるが、あえて突っ込むような野暮はしない。

 初期の好感度は最底辺だったんだけども、妖精騒動があってから態度を軟化させているのもあって、生温い目で眺めるくらいには出来るようになった。能力と人となりはまた別だし、結果には報いるのが信条なのでね。

 あと契約したんだしずっとギスギスするのも疲れてしまう。人は変えられないがこっちの心の持ちようは自分次第なんで、心の壁は開閉可能にしておいた。

 またなんか駄目なことあったらスッと閉まりますけども。ええ。


「では、フエルさんにご連絡してまいりますわ。一応、クラヴィンの登録はなしとなっていますけど、希望が出たらどうします?」

「んー、保留で。そこまでやるなら一回会っときたい」

「承知しました。では、失礼します。……スコーン、美味しかったですわ」

「はーい。気をつけてねー」


 見送りがてら一緒に外に出て手を振った。そして遠くで見ているアマヌスと目が合う。

 ……目が、合う。


 スコーン、欲しかったの? 君もっと美味しいの食べたでしょ? っていうかなんでピンポイントで食べ物のときにセンサー働くの。


 恨みがましい目をしている彼女をちょいちょいと手招きして、いくつか包んで持たせてやった。


「やったー!! って違いますそうじゃない、私は伝言をですね!!」

「え、いらない?」

「いります」


 どうやらちゃんとした用事があったらしい。今は箱庭に居ないツェチィーリアから、服素材を生産したいが問題ないかとのこと。


「自由にしていいよ。服素材ならちょっと多めに作ってもらえたら嬉しい。素材の内容は聞いてない?」

「詳しいことはツェチィさんから聞いて下さい。忘れました」

「ハッキリ言うじゃん」

「壁紙使わない派なんですよねぇ。やっぱり木のママが美しいと思いません?」

「なるほどだからログハウス」

「いや、これは時短のために……ほら!私の!有能さをですね!!」

「はいはい。後で聞きに行くわ」

「我が契約主!この!建物にはですねえ!神級構築士にしかできない基礎工事が!」

「あ、新作のカスタードクリームもあるんだけどいる? まだ味が安定しないんだけど」

「なんですかそれ!!いただきます!!」


 やはりアマヌスを黙らせるには美味しいものが一番。

 扱いが雑になってきているのは認めるところ。まあ親愛の証ですよ。ええ。


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