085. 増量されました
「本当に申し訳有りません、我が愚兄が」
「お兄ちゃん傷ついちゃうぞ」
「黙りなさい!」
シェルテットの敵意、完全になくなってる。色々なものを吹き飛ばすダルシェンツェのパワーよ……筋肉ではなく口でパワーをお出しされるとは思わなかったけど。
「えっ……と、契約パートナーになったら仲間認定、で、襲われなくなるって、こと?」
「ホップさま、見たところ種属スピリトゥス系でしょう? 同じエーフ属でしたら、特に問題は無いのですけども、違う属ですと誅滅対象になってしまいます。渡り人さまですと常にパーティを組むことも出来ませんし、現在のところ一番いいのは契約パートナーかと……」
「はぁ……」
「それに、わたくしごとになってしまいますが、ガジェットお兄様もお耳にされてしまいました。ここで同じ枠組みに入れていただかなくては、大変なことになってしまいます」
あまりの変わり身の早さ、と言って良いのか微妙だけども、展開の仕方についていけてない。しかし誅滅って。物騒なワードだな。知ることそのものがいけないってか?そしてガジェットさんも知らなかったんですね?
……なんだっけ、妖精うんぬんはギャジーも持ってたよな。
『HEY!ギャジー!お前のラベル名教えて!』
『オレは便利なAIじゃねーわ』
チャットウィンドウを開いて書き込めば、すぐさま返答がきた。丁度チャットを見ていたタイミングだったようだ。
『【妖精に見初められたもの】だけど』
『さんきゅー。後で詳しいの送る』
とりあえず知りたいことが解ったのでチャットは閉じて、と。なんかちらっと罵詈雑言が見えた気がしたけどキニシナイ。
「妖精の加護、でしたっけ? ラベル、妖精に見初められたものとはまた別?」
「珍しいものをお持ち、ですのね?」
「いえまあ、仲間が」
「ご安心なさって。見初められたものでしたら、被害は軽微でしてよ」
「被害あるんだ……」
「少なくとも、直接的な危険はございません。ただちょっと見えてはいけないものまで見せてしまうだけ……隠したいことがお有りでしたら、注意したほうがよろしいわ。見初めた相手によかれと思ってやるのです。ですが、対象も内容も、妖精たちの興味によりますので」
わかるような、わからないような。
HPが見えるっていうのもそうなんだろうな、くらいの理解。確かに、色々なものが見えるときと見えない時があるとは言ってたっけ。隠したものを見せるっていう事象があるなら、隠蔽もあれば隠蔽を看破するのもスキルとしてありそう。まだ見たこと無いけども。
んー、ラベル系って、スキルの先取りするような感じなのかなー?
「加護はそれとは違う? 説明を他の人にするのもだめ?」
「そうですわね。加護を得ている本人、もしくはそれを知っている仲間でしたら問題はございませんが、そうでない場合、こちらではなく話した相手が被害を受けますわ」
「被害の内容なんかは……」
「住人ですと軽くて生命の奪取、重くて永遠の眠りですけども、渡り人さまですとどうなるのでしょう……流石に神々に招かれた方ですから、妖精たちもそこまでは出来ないとは思いますが、愉快なことにはならないでしょうね」
永遠の眠りも生命の奪取も同じことでは? ようせいこわい。
無邪気さ故の残酷さを突き抜けている仕打ちだけど、ほのぼのファンタジーな妖精じゃなくって怖い方の妖精がモチーフなんだろうか。在野のボガードは家憑きより残忍っていうもんな。
「加護っていうか、呪いみたいですね。伝染するタイプの」
「加護を得ている本人や、仲間に対してはいい効果も多いのです。悪いものは寄せ付けませんし、魔力も上がります。動植物の育成も順調にいきますし、広く薄く全体的に良い方へ向かいますわね。まあ、たまに突然変異が生まれることもありますけれど、驚かせて楽しんでいるようですので、微笑ましいです。崩落後は大神さまの保護がありますので、変異率は少なくなっていますが、渡り人さまの箱庭では多めに見られるのではないかしら」
「なんにしても契約はしないとだめそう……」
「大変申し訳なく……その、このこともそうですが、勘違いで声を荒げてしまったことも……」
しょんぼりとした姿は最初の頃からすると借りてきた猫のよう。まだ苦手意識は抜けないが、素直なのはよろしいと思います。
ちらりとダルシェンツェを伺えば、輝くような笑顔を向けられた。
うーん、画策してこうなったのか、ただの考えなしなのか判断に迷うところ。
「ガジェットさん、レティとメルティを呼んでもらえます? 六人まとめて今日案内します」
「ああ、解ったよ」
私の言葉にぱっと顔を上げるシェルテットのその後ろ、頬に手を当てたツェチィーリアと腕組みして頷いているダルシェンツェが見える。
「三人とも、クラヴィンは所持されてますか?」
「あるぞ!」
「私もあります」
「わ、わたくしもお姉様の手伝いを良くしていたのでございますわ」
それぞれ差し出される装飾具に魔力登録がされていないことを確認して、自分の魔力を込めていく。契約書は交わしていないが、これで簡易契約の扱いになる、はず。
「あいにく、正式な書面は私では作れないので、後日になりますが」
「ありがとう、ございます……!」
「まー、我が身可愛さもありますし、ガジェットさんのこともありますし」
しっかし加護の扱いどうしようねえ。これは迂闊に情報も売れないやーつ。
相談もアウトだろうから、自分でどうにかするしか無い。つっても、突っ込んで聞かれない限りは問題ないけども。
ギャジーはエーフだったから共有できそうだけど、あいつ、変なところで抜けてるからそもそも加護情報は知らせないほうが安全だわな。
「ちなみに、精霊にもそういう、触るな危険的なのあります?」
「詳しくは存じ上げませんわ。それに……知っていたとしてこの場ではちょっと」
「それもそうか」
同じく聞いちゃだめならスピリトゥスの自分以外だめだもんな!
納得していたところで二つ分の足音が聞こえ、心の準備なく衝撃が来た。といっても、子どもの力だ。多少よろけた程度で体勢を立て直す。
「「行くのだわー!!」」
「こら!二人とも!」
「「パパは黙るのだわ」」
「ごめん私は別の入口からじゃないとだめだから、中で合流しよう?」
「「えー!!」」
不満の声を上げる双子に謝りつつ、しがみついた二人を離そうとするが離れてくれない。諦めてぶら下げたまま大人組にもこの後の流れを説明する。
だってクラヴィン、住人専用なんだよね!!
プレイヤーはいちいち街の外に戻って箱庭の入口開かないとなのだ。微妙にめんどくさいのでアップデートで改善して欲しいところ。
「というわけで、それぞれ契約もできましたし、一度別行動とさせていただければ。すぐに移動してもらってもいいですし、そうですね……大体十分後くらいには私も戻れると思うので、その時間を目安に来ていただいても」
「解りました。ほら、メルティ、レティ、こちらに来なさい。……ダルは説教だからな」
「はーい」
「仕方ないのだわ」
「俺ぇ!?」
三者三様に声を上げるのを聞き流して外へと退散する。ちょっと養蜂パートナーつくろーって来たのがこんなことになるとは。
「……で、なんであなたが一緒に出てきてるんですか」
「入口までお見送りがてら、『かれら』の暴走がないか監視ですわ」
「大丈夫じゃないかなー」
「それに、お伝えしたいこともございましたの」
暗に戻れというのを断ってきたシェルテットが、先導するように歩き出しながらこちらへと振り返った。
秘匿HOはいりまーす!
(他PLに悟られてはいけないシナリオや設定を指すTRPG用語)




