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007. 難問だらけの設定ターン@4

009話目までこのあと同時投稿します。

<【称号:箱庭に捧げるもの】を獲得しました。初期SPがマイナス20となります>

<【ラベル:精霊に興味を持たれるもの】が反応しました。スキル選択時にランダムで二つスキルが追加されます>


 システムアナウンスに気を取られている中でもスイの動きはよどみなく、あっという間に箱庭の設定は終わったようだった。

 半透明だった四角が色づいていき、上が水色、中間が緑、下がこげ茶のグラデーションになる。

 大きさも、部屋を埋め尽くさんばかりだったものがみるみる縮んでいき、両手のひらに収まるほどになった。


「完了、と。じゃあ早速入ってみようか」

「入れるのこれ」

「さっき言ったでしょ。ほらこっちへおいで」


 さっさと小さな四角へと近づいていくスイの後ろ、警戒しながら着いていく。

 いやだってさあ。いきなりエレベータじみた浮遊感を味合わされたりしたわけですから、次はどんな移動方法かと思うじゃん。

 まあね? まあ、エレベータくらいならいいんですよ。ジェットコースターだったりしてみ? 死ぬぞ、精神が。


「はい、これ。取り込んでね」


 警戒していたのもなんとやら、スイの言葉とともに四角がこちらへと飛び込んでくる。

 まっって動いたのこれ!? なんて動揺する隙もなく身体と触れ合ったそばから消えて、消え、これ体内に取り込んでる感じですねえ!? 取り込むってそういうことぉ!?

 なお感触はなかったです。ただし視覚の暴力がひどい。


「よくできましたー」

「こいつ……」


 神だからってやっていいことと悪いことがあると思います!!スイはとっても楽しそう!いい性格ですね!!こんちくしょう!


「で、どうやって入るの。消えたけど」

「切り替えが早い。『ark porta』えーと、【アークポルタ】ってキーを唱えてご覧」

「【アークポルタ】」


 速攻で唱えてやった。ちょっと残念そうな顔をするんじゃない、そこの神。


 唱えた瞬間、腹の奥が熱を持ったような蠢きとともに、目の前の空気が歪む。徐々に滲み出すように形を整えていくそれは、この部屋に入るときのような扉の形をしていた。

 イングリッシュガーデンとか、お高い邸宅にあるような、あの細い鉄を組み合わせた門柱。両開きっぽいが、扉自体は半透明の油膜みたいなものが張り巡らされていて、時々虹色に光る。


「おお」


 ちょっと感動した。この中に箱庭が、酒の製造のための場所が広がっているんですね?


 今度は何も言わないスイを置いて、手を扉へと向ける。指先が触れたそのまま、片腕が中に沈んでいく。反対側を覗いても手が出ていないから、別の空間につながっているらしい。面白い。

 続いて頭を中に入れて、突き抜けたとき目の前に草原が広がっていた。


「おおおおお」


 吹き抜ける風と草の匂い。少し湿った感じを受けるのは雨でも降っていたのだろうか。いや、水滴は見当たらないから霧かな?なんにしろここが箱庭、このゲームの肝。


 完全に身体は扉を通り抜け、後ろを振り向けば広大な景色が瞳に映った。

 青い空、白い雲、遠くに重なる稜線、森と聞こえてくる潮騒の音……。


「広すぎでは?」


 いつの間にかそばに居たスイを見上げて真顔で詰め寄る。


「これちょっと間違ってないか? 私のSPちゃんと30残してある?」

「近い近い。落ち着いて。ちゃんと残してあるし間違った広さでもない」

「こんな広大な土地一人で管理しろって!? もう発展するまでもなく発展後じゃない!?」

「世界に対しては狭いくらいだよ〜。いちおう2時間くらいで端に到達できる距離だよ?」

「往復で?」

「片道で」

「ひっろ!!!!!」


 もう一度周りを見渡す。現在は草原の真ん中くらい。右手に鬱蒼とした森、後方から波の音が聞こえてくるから、多分歩いてちょっとしたら海が見える。何も遮蔽物がないと音の通りがいいな!左手には湿地帯なのだろう、植生の違った平面がうっすら確認でき、その奥には岩場がある。砂漠はここから確認できないけれど、岩場かあの目の前に見える山の向こう? あの山は火山かな? 一部から煙が出ているのが観察できた。


「さーて、ようやくスキルの説明ができるね」

「無視しないで」

「自然豊かなんだから自然に任せればいいんだよ。管理なんて余裕ができてから」

「神いいいいい!」

「僕も所詮下級神だからねえ。一緒に頑張ろうね!」

「上司連れてきて!!」

「言ったでしょ、大神が居なくなったって。管理権限もない中でこれ作るのすごい大変だったんだからね。みんなで協力してやっと出来たと思えばこの世界の住人には扱いきれないものだしさー。実際ブラックボックスもそこそこあるから作った僕らもどう発展してくか未知数というか。特に君なんか箱庭に基礎エネルギーつぎ込んでるし、まったく」

「よしなんか色々突っ込みたいし聞きたいこともさらに追加されたけど、まずはスキルを選ぼうか!!」


 やれやれと少し演技がかったため息をこぼすスイとその発言に、許容量の危機を感じたので本筋に戻す。

 そう、そうだ。目的を見誤ってはいけない。

 酒を作り満喫するために、土地が広いのは別に悪いことじゃない。現実だって人間の手が入っているところは世界全体の何パーセントだ? それと同じ。自然の恵みに感謝し、酒を作り、酒を飲み、酒を捧げるんだ。

 それに、この規模をプレイヤー全員が持っているなら、素材争奪戦とか起こらないじゃないか。どうやって素材増やすのか知らんけど!


「あ、ねこじゃらし」


 とりあえず目の前の草原に目立つフサフサがあったので摘み取ってみた。かんたんに摘み取れたそれの詳細を見ようと……。


「スキルないと詳細なんもわからねーな」

「説明入っていい?」

「よろしく」


 まずは目の前のことをひとつひとつ片付けよう。どこか逃避ぎみにそんな決意を新たにし、一番聞きたかったことをスイへと質問した。


「ヘルプとかステータス画面ってどの段階で表示できる?」


 今ここでそれ聞くんかい!なんてツッコミは聞こえないったらきこえないー。


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