073. 所変わりまして
どう収拾つけりゃいいんだ???? と思ったところで、モルトから先にやることを済ませようという提案があった。
「やること」
「シェフレラに依頼されてたろ。林檎の収穫」
「あ、ああ! シードル!」
「違う」
軽く突っ込まれつつ、そのままみんなでレラの箱庭へ。
レラの箱庭は、基本、森と湖で山はない。海もないかな?
到着したのは森の側の開けた土地で、見晴らしのいい景色が続く。
「気持ちのいい場所」
「やっぱ、エルフだと落ち着く?」
「エルフじゃなくても落ち着くわ。虫もいねーし」
蚊とかな。あいつ絶許。
リアルだと細かい虫や有害なあれそれが居るものだが、ゲーム内は静かなもので、たまに風で木の葉が揺れる音しかしない。
「整地途中だったので、中途半端な位置に出ちゃいましたね」
「いいよー。入らせてもらってる立場だし」
「でも、お願いしたのは私だから……ここからだと、少し歩きます」
マップを表示しているのであろう、レラが空中を確認しながら林檎の場所まで先導していく。
植物が好きということで、生えているものは豊富だ。ストゥーデフの苗木屋で見たようなものは大抵見つかるし、見たこと無いような木や草花も沢山。多分、私の箱庭に生えてるものは全部ある気がする。
「レラのとこ、海はないんだね」
「広くはないですがありますよ。まだ私も行ったことはないんですけど」
「あるんだ」
「はい。海辺の植物も育ててみたかったので、女神様と相談してつけてもらいました」
「へー。金色夜叉」
「松の木ですよね」
思い出して呟いたことにも返答が来た。なかなか博学である。
古典とか、今読むと普通に解読になるよな。たまにゲーム内の謎解きとかに組み込まれてて、スラスラ読める人に助けられたりする。まあ、エールズなんだけど。
エールズは語学が堪能で、それもあって当時英語のほうが喋りやすかったステッラと知り合ったんだったかな。リアルで会ったことはないけど、ステッラは確か海外の人だ。ゲーム自体は日本からしてるらしい。今はもう日本人か?くらいに普通に日本語喋ってるが。
「あ、あそこです!」
そうして辿り着いた場所では、風通しの良い間隔で並ぶ木に、林檎がたわわに実っていた。
これは収穫しがいがありますね。
「良ければみなさんもどうぞ!」
「いいのか?」
「うまそう」
遠慮するモルトの傍らでギャジーは躊躇なく一つもいでいる。低い位置だけど良いのかな? 林檎は高い位置のものの方が美味しいって聞いたことある。
「鑑定しても?」
「はい!」
一応断ってから【鑑定】発動。【採取(知識)】さんが有用な情報を追加してくれますように。
----
[ 果物 ]マールム【レア度:C 品質:A】
まるまるとした赤い果実は酸味と甘味のハーモニー。オランジと同じツル科の植物だが、オランジとは違いツル自体が太さを持つ。
◆採取情報◆
たまに青い果実も採れる。
ツルをねじ切ったり、下に引っ張ったりは厳禁。お尻の部分を上に持ち上げるようにすれば簡単に採れ、品質も高くなる。
◆栽培情報◆
聖木になるまではとても弱いため、魔素の豊富な土地でしか育たない。
別名魔素食いの木。
◆調理情報◆
果実はツル付近が割れているものの方が美味しい。
----
ん? んん!?
思った以上に情報追加されてますね!?
そういや【栽培(知識)】や【調理(知識)】を取ってから、きちんと鑑定したことなかったな。
採れるものの判別や、名前と簡単な情報は注視判定でも表示してくれるから、わざわざスキル使ってウィンドウで見てなかったわ。
「知識は力なり……」
手を伸ばして取りやすそうなところの、林檎もといマールムを採取する。採取情報に従って、下から上に持ち上げるようにすれば、ポロリと手の中に納まった。軽く確認すれば品質はAのまま。
「りゅ!」
「え?」
そしてリモに食べられた。
「ちょおおおい!!こら!ぺっしなさい!!ぺっ!!」
「るむ」
「食べながら話すんじゃありません!!」
油断した……っ! 焼き肉からの二度目の奪取!
レモン、焼き肉、マールムって、偏食にも程があるでしょ!!
「りゅりゅっ」
「催促までしてくるとかお前ほんと自由!! 先にレラに渡す分取るから待ってなさい!」
「りゅー」
どことなく不満そうだったが理解はしてくれたようで、頭から降りてエドへダイブしていった。遊んでくれるならこの人!とでも思っているのか、ちょくちょくエドへ突撃するよな。
邪魔するものもなく平和になったので、依頼のマールム狩り。果物狩と同じだけど、名前が違うから字面だけ見れば討伐みたいだな。
「レラー、二十個だっけ?」
「あっ、はい! そうです!」
「品質はAでいい?」
「わ、そんなに高く採れるんですか! 全然大丈夫です!」
「レラはどれくらいの品質になるの?」
「すごく丁寧に採取してB-ですかね。普通に取るとC+になります」
「あー、なるほど。最低Bは欲しい感じなんだ」
「です!」
話しながらプチプチ採っていって、レラが差し出すカゴへと入れていく。
リアルの林檎と違って高い部分にあるものの方が美味しい、ってわけではないようだ。まあ、栽培情報を見る限り、日光より魔素の方が重要そうだから、高さはあまり関係ないのかも。
最後の一個を採取したとき、通知がSE音と共に表示された。
レベルが30に到達して、二次スキルが開放されたようだ。
ええ、はい。通知の設定ミスは気付いた時に直しておりますとも!!
「ほい、二十個目。箱庭クエストもこれでおっけーかな?」
「大丈夫そうです! ありがとうございます。先に納品してきちゃうので、ホップさんも好きなだけ採っていって下さいね!」
駆けていくレラを見送って、スキル取得の一覧を呼び出す。UIが少し変わり、見慣れないタブが増えていた。
インデックスには通常スキルってなってるけど、これが二次ってことかな? にしても通常とは、まだまだ上がありそうですねえ。三次スキルになるまでにどれくらいかかるのやら。
通常スキルタブを表示すれば、現在アクティブになっているのは一つだけだ。採取法と書かれたそれをタップする。さて、必要SPは……10か。採取(基礎)の倍じゃん。これはSP枯渇待ったなし。あ、でも、採取(基礎)が限界レベルの30になったとき、SP5取得してら。一次スキルに使ったSPが返還されたに等しいな。
とりあえず悩んだりする前にぽちっとな。
----
【採取法】Lv.1
一連の採取方法を使いこなせるようになった。今後も精進あるのみ。
特殊な採取箇所の許可も出たため、採取の幅が広がった。
<< アーツ >>
繊細な指先:採取物の品質を僅かに上げる。
----
ほう、特殊な採取箇所とな? なんだろう。樹皮とか樹液とかかな?
あらためてマールムの木を注視判定で眺めていくと、先ほどとは違って果実以外にも反応のある箇所が出てきた。予想とは違って細い枝だ。
枝、ならば剪定作業のアーツも使えるのか?と思って【箇所確認】を発動させてみれば、ぼんやり全体が光って見えていたのが、細い枝の根元部分に光が集中する。多分ここを切れってことなんだろうな。
う、うーん。手入れの範疇ではあるんだろうけど、家主……箱庭主がいないのに勝手にやるのはちょっと。自分とこなら気にしないけども。
というわけで、新しいものは後回しにして、自分で使う分とリモが食べたい分のマールムを狩らせていただきましょうかね。
「リモー。終わったぞ。マールム採ってやるから戻ってこい」
声をかけつつ手近なマールムを採取! 跳ねるように戻ってきたリモに差し出せば、抗議するように手の上で跳ね回った。
……あ、品質がBになってる。
スキル成長しきった進化前よりスキル進化直後の能力が劣るやつ!!
やめてやめて髪引っ張らないで! すぐにスキルレベル上げてA品質採れるようにするからぁ!!
南無三!!




