072. それぞれの特殊能力
「うおー! なんだこれ!! パチパチする!!」
はい、定番の反応をありがとう。
エドの尻尾は勢いよく振られているから、楽しんではもらえてるようだ。
サイダーではないから甘くないけど、まあそこは追々。砂糖もはちみつもあるしね。
ゲームデータ上だからいくら食べても虫歯になることもあるまい。……ないよね? そこまで再現してるとか流石にないよね?
「これ、炭酸……ですよね?」
「うん。あ、苦手だったら飲まなくて大丈夫だよ」
「好きなので大丈夫です! ……あの、定期的にもらったり、できま、す?」
「? そんなに難しくなかったからいいけど。レラ、魔法で水と風ある?」
「水だけなんです。でもホップさんみたいにうまく扱えなくて」
「こいつのは人外だから参考にしないほうが良い」
「人外って酷くない!? 確かにスピリトゥス属ではあるけど!」
「わ、私もアルボレスで……!」
「あー、悪い。俺が悪かった。話ずれてる」
モルトが白旗を上げ、私のコップを奪っていった。そのまま確かめるように飲み始めたので放置する。
ま、自分の分ならいくらでも作れるし。
「おれあんまり飲まねえぞ? レラはこれ好きなのか?」
「私も量は飲まないけど……えっとね、植物さんの成長促進剤にならないかなって」
「えっ! おれも大きくなる!?」
「エドはならないかなぁ。獣人と植物だと必要な成分違うからね」
「植物ってことはレラが大きく……?」
「えっ、あっ、どうなんだろ??」
「まて、お前たち、待て」
流れるようにモルトのストップが入った。なるほどいつもこういう苦労を……だがしかし自重はしない! ゲームにそんな無粋は不要!!
それはそれとして成長促進剤は気になります。
「つーかこれ、そもそも普通のウォーターボールじゃねえだろ。何使った?」
「え、ウォーターだけど」
「レラ、お前の水魔法にウォーターってある?」
「ボールやショットはありますけど、ウォーターだけは……ないですね」
ギャジーの瞳がほのかに光り、掲げられたコップの水面を撫でている。やっぱり瞳に関するなんかレアなの出てるな。私でもウォーターボールで出した水とウォーターで出した水の判別つかないぞ。
「すごいなギャジー。その目どれくらい見えてんだ」
「ある程度詳しく。でも自分で制御できねえんだわ」
「モルト来たら話すって言ってたよな? 詳細はよ」
「お前たち待てっつってんだろが!」
たまりかねたように叫ぶモルトとポカンとした三人。
私? 人の振り見て我が振り直せとはよく言ったもんだよね。第三者になると会話の内容がよく見える。
この短時間で未発見(?)アイテム、成長促進効果示唆、種族特性示唆、レアスキル、未発見(?)スキルなど気になるワードが出ること出ること。大元が思いつきでやった炭酸水だということさえ目を瞑れば、はたから見てる分には楽しいことこの上ない。
「いいか、今からひとつひとつ聞いてくからな。聞かれたこと以外に答えるなよ」
あまりの気迫にコクコクと頷く三人。私は適当に手をヒラヒラさせておく。
「まずシェフレラ、炭酸が植物の成長促進になるっていうのは?」
「は、はい! 現実……ええっと、ここに来る前、の、世界で、炭酸水を水で希釈したものを蒔くと成長促進になるっていう方法があって……! えっと、えっと、確か微量の二酸化炭素で光合成を、補助するとか」
「ああ、なるほど。リアル情報なわけだ。俺も後で調べとく。で、いま炭酸水を飲んでバフとか表示がでてるか?」
「い、いえ、特には!」
「アルボレスの植物具合は解らんからな……ありがとう。もういいぞ」
「はい!」
モルトに指名されて思わず立ち上がって答えていたレラが、安心したように座り込む。
次に白羽の矢が立ったのはギャジーだ。
「お前の目、というかスキルか? 名前は?」
「スキル名は俺も読めねえ。文字化けみたいな感じだな」
「どうやって取得した」
「チュートリアル……あー、神殿? みたいなとこに行く途中。なんかラベルっていうのつけられたと同時に」
「…………ラベル」
「そう。『妖精に見初められたもの』だったかな」
モルトの表情が抜け落ちた。
やったね!ギャジーを叩くと情報が増えたぞ!!ビスケットかよ。
口を開くのは許されてないので、心の内でクラッカーを鳴らす。ラベルの種類は違うけど、ラベル持ちが私以外にも!
「……ラベル持ってるやつ、この中に、いるか?」
すっと手を上げる。ここで黙秘してもこの後バレるので。
案の定私以外に手を上げた人は居ない。
「っ、これも……っ! ホップ、お前のラベルってギャジーとは」
「違う。『精霊に興味を持たれるもの』だな」
あ、撃沈した。
頭を抱えて座り込んだモルトだったが、すぐさま気を取り直したように立ち上がる。
「お前も神殿に行く途中で?」
「うん。なんか遊んでたら、というか遊ばれてたら?」
「ギャジーも?」
「いや俺は元気ないやつに水あげたら」
「少なくともキャラクリからやり直さないとダメなヤツ!! 中央交易区に同じ場所はない!」
「あ、無いんだ?」
ちょこっと行ったことはあるけど、探検はまだしてないんだよね。噴水とそこから続く大通りはあるものだと思ってたけど、モルトいわく無いようだ。マップ作り隊が調べた結果だそうで。
「マップ作り隊ってなんだ。地図くれるの? それ欲しい」
「地図持っても迷うやつにあげる地図はありません!!」
「ちぇー」
「いいから口を閉じろまだギャジーの話が終わってない。HP見えるだけか? さっき水の違いとか言ってたが」
あ、それそれ。私も気になってた!
というのは口を閉じていて伝えられないので、ジェスチャーで。エド、変な踊りじゃないんだこれは。
「基本はHPと、たまにMP? スタミナみたいな行動力が見える場合もある。HP以外はランダムだし、自分で発動タイミングも決められない」
「水は?」
「なんつーの? 魔力、魔素? そういうのの種類がうっすら分かる。攻撃系の魔法とは色の濃さが違って見えたんだよな」
「それ、コントロールはできるのか?」
「見たいと思ったときは大抵見えるけど、失敗することもある。確率っぽげ」
「……解った。わからんがわかった」
HP見えるって、モルトが一番欲しかった能力だろうにねー。可哀想に。
ラベル名から見るに、妖精が見せたいやつを選別してるのかな? そういやエーフ・メディオキスは妖精属だっけ? 私は精霊属だし、そもそも種属でラベルが決まってる……? いや、情報不足すぎるな。私もわからんがわかったってことにしよ。
「で、ホップ。洗いざらい吐け」
「振り方がいきなり雑!!!!」
「うるさい、お前に関しちゃ掘っても終わりが見えそうにない」
「流石に底はあるよ!?」
「いつの間にかその底が深くなってるだろうが!!」
「理不尽!!!!」
ヒートアップしそうになるところでおろおろしているレラが視界に入る。お陰で少しだけ冷静になることが出来た。
「……とりあえず、炭酸水は水魔法と風魔法のアーツでその他って扱いのウォーターとウィンド使った。ウォーターボールで水自体の代用はできると思うけど、二酸化炭素っぽいものの抽出と圧縮は代用案思いつかん。その手の機械作ったほうが早いんじゃないか」
「続けてどうぞ」
「ウォーターもウィンドも、『精霊に興味を持たれるもの』っていうラベルが反応して追加された。追加の切欠は正直わからん。攻撃力のないアーツではある」
「聞かなかったことにして良いか?」
「お前が話せって言ったんだろうが!」
両手を振り上げて抗議するも、ギャジーが憐れむような視線をモルトに向けていて、振り上げた拳を両膝に戻した。
ラベル、隠し通すっていうんじゃ、だめ?




