070. クエストマラソン
困ったときのリモ頼み。
なんだかんだ、火をつけてくれたり道整備を手伝ってくれたり雑草見つけてきたりと、ここぞという時に役に立っているリモ。今回もそのパターンで行けないかとお願いしたら、完全に無視された。
どうして。
「りーもー。りもりもりもー!」
「りゅ」
「お前浮いてたじゃん! 適当な岩とか草とか取ってきてくれるだけでいいからさー!」
「りゅっ」
気まぐれだな!? こんなに頼んでるのに、頼まないほうがやってくれるってどういうこと!
「とりあえずロープ持ってきたから繋がれ」
「なんで私を指名するんですかね!?」
「一番軽そうだから」
「確かに!!」
モルトの言葉に納得しちゃったじゃん。
そこはかとなく負けた気持ちになりつつ用意した縄に繋がれてやった。命綱ですよねえ。
クライミングするしかないかーとは考えてたけど、こんなところで以心伝心しなくていいんですよ。
「屍は拾ってやるぜ」
「ギャジー覚えてろ」
「はいはい。さっさと行く」
「モルト扱いひどくない?」
ぶつぶつ言いつつ、身を乗り出す。とりあえず素材取れそうなとこ……。
水流は端になるにつれて強くなっている。砂利と柔らかな砂で構成された足場は崩れそうでちょっと怖い。乗り出した視界は180度のパノラマで、落ちる水の下は見えない暗い穴になっていた。緑に囲まれた滝のような情景は、画面越しに見るには絶景だが体感していると飲み込まれそう。これ落ちたら絶対死ぬ。
「どうだ?」
「待って。水が跳ねててちょっと……んー、手突っ込んでみる」
「気をつけろよ」
心配するなら変わって欲しい。
罰ゲームの気持ちで、不透明の水面に手を伸ばす。
光の反射かなにか別の要素か、平面では透明度の高い水なのに側面は見通しが酷く悪かった。物の輪郭や色味は辛うじて解るが、それも歪んで揺れて、正確に把握するのは難しい。
手に触れる水温は冷たくもなく熱くもなく、なんというか水に触れている感じがしない。平面で流れている水はちゃんと水としての感触があるというのに、流れ落ちようとしてるものには感触がないって変な感じ。
慎重に探っていくと、いくつかの素材が入手できた。小石、少し大きめの石、それから土塊。残念ながら植物系のものはなかったが、それでもこれくらいで十分だろう。最後に水自体を採取してもとに戻る。
「生きた心地しねえー……」
「おつ」
「ねぎらいが軽い。酒よこせ」
「見つかってないんだなあ」
「そうですよね知ってた!」
なんだかんだとクエスト分は集まったので帰還。モルトが達成報告をしている後ろ側で、疑問に思っていたことをギャジーに問うことに。
「そいやなんでユニオン来たの? 珍しい」
「は? クエスト以外に何があるってんだ」
「ああ、一通りコンテンツは手を付けたい派だったな」
自分が言えたことじゃないけど、ユニオンに来るプレイヤーは希少なんだよね。これはこれで人混みもなく落ち着いて受注処理出来るので助かるんだけども。
やり込むかどうかは置いておいて、コンテンツ解放だけしておきたいというのは割とある。やってみないと自分が好きかどうかが解らない、というのから、やり残しが気になる、というのまで。理由は人それぞれあるが、一定数、全部触ってみる派が居るものだ。
このゲームは初期の宣伝が上手く行かず、スタート人員が少なめだったのが災いして、そういった一通り触る派があんまり居なかったのかもな。いっぱい居たら箱庭機能だってもう少し早く発見されていただろうに。
「ギルドクエは?」
「何個かこなしたぜ。ある程度稼げたしこっち来た」
「箱庭ランクいくつ?」
「ランク? 影響度ってやつ?」
「そそ」
「オレ開始したの遅めだったからな。まだ1」
「よし採用」
ギャジーが影響度を2にしたとき、同時に箱庭機能がフル解放されたらユニオンクエがトリガーで確定だ。流石にギルドクエやってない人に対してのご褒美機能とは思わないが、私もレラもギルドクエやってないからね。モルトはギルドクエのみで影響度2で解放されず、だし、影響度2になったあとはユニオンでの情報取得が必須な可能性もなきにしもあらず。純粋にギルドクエもユニオンクエもこなしたあとに影響度ランクアップした時の情報が不足しているのだよ。
怪訝な顔をしているギャジーを置き去りにそんな思考を巡らせていると、モルトが報告を追えて戻ってくるのが見えた。同時、視界の隅でクエストクリアのログが流れていく。
パーティクエだと全員にログが流れるんだな。
「お、クリアした。聞いては居たがほんとに報酬少ないんだ」
「そんなに?」
「なんでお前が知らないんだよ」
「ギルドクエやったことないから。お金には困ってないしなー」
ギャジーの呆れたような視線も何のその。なんせ今までの情報料でがっぽり、さらに追加で売上ごとに貰えるのに加え、最近では箱庭特産品での利益も上乗せされるので、本当に収入には困っていないのだ。贅沢。全部酒の研究にぶっぱしよう。
「どう?」
「まだ貢献度不足だとよ」
戻ってきたモルトの表情から大体あたりはつくが、念の為問いかけてみると予想通りのお答え。
ワクワクした雰囲気のレラとエドと、もう終わったと思っているギャジー。その落差にほほ笑みを浮かべつつ、ギャジーが逃げられないように手首を掴み宣言する。
「じゃ、クエスト10本ノックいってみようか」
「は?」
「取れるだけ取ってきた」
「え?」
「頑張りましょうね!」
「お、おう????」
期せずしてレラが最後のとどめを刺しつつ、レッツクエスト周回!
説明不足? 知らん知らんそんなの。パーティ承諾したときから決まってたんだ。クーリングオフもありません。
騙されたー!なんて雄叫びはお口にないないしましょうねえ。
そうしてクエストマラソンを行うこと3周目、クエスト数にして18個ほど。無事に貢献度を稼ぎきり、モルトは職員さんに連れられて奥へ、ギャジーは疲労困憊といった感じで机に懐いている。
「おつかれw」
「くっそ……こちとらヒーラーやぞ。敬え……」
「ありがとうございます!」
「ありがとなー!」
「お、おう……」
ボヤキにレラエドの素直な感謝を向けられてたじろぐギャジーの構図。おもしろい。
皮肉でもギャグでもなく本心で感謝されてるの解るもんね。今まで居なかったタイプだろうし、ギャジーも根は悪くないからいつものノリで返せず困惑している。そのまま浄化されておいき。
なんなら私が一番性悪かもしれねえ。よし、その線を開拓してみようか。手始めに……なにすりゃいいんだ? 性悪って。
一人脳内劇場を繰り広げている横で、ギャジーとレラエドの交流は続いている。聞くともなしに聞いていると、ダメージ軽減の話やら新しいスキルの話やら、それなりに話題が弾んでいるようだ。ヒール力高めのタンクだから、ヒーラーのギャジーとは相性いいのかもな。いつものメンバーにヒール詳しいやつ居ないもんなあ。タンクはエールズが居るけども。
「おいそこのサブタンク」
「気持ち的にはアタッカー。なに?」
「レベル上がっただろ? なんか良いの生えたか?」
「んー? ちょい待って」
確かにレベルは上がってた。でもスキル取得のお知らせはなにもないから、新しく生えてはないんじゃないかな。……そういや設定してから全然お知らせ流れないね。
ヒヤリとしつつ設定を見直す。すると、とんでもないことが判明した。
通知設定全部オフになってるじゃん!!
どうして今まで気づかなかったんですか? 便利なアーツ増えてるじゃないか!!!!
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