058. 猫じゃらしさんの役目
『道の作成は説明項目にあります。こちらが先で良いでしょうか』
「まって」
淡々と説明をしようとするドゥクトゥスにストップを掛ける。いや、教えては欲しいんだけど、衝撃を消化する時間をください。
吸ってー、吐いてー、すってー、はいてー。
瞑想って良いよね。呼吸に神経を全て使って、それ以外のものを意識から追い出す。
理屈はよくわからないんだけど、落ち着くのに最適なんだって遠い空のばっちゃも言ってた。
まあ、まだ存命だし、動揺するようなやわな精神をしてらっしゃらないんだけど、口馴染のいいテンプレートだよ、ばっちゃが言ってた。
「よし、落ち着いた。機能の説明の前に、機能開放……バージョンアップかな? その方法を教えて貰える?」
『了解しました。箱庭ポイント、および箱庭クエストの説明に切り替えます』
ドゥクトゥスがそう言うと同時、新たに中くらいの長方形が目の前に開かれる。今度は縦長だ。
機能が表示されていた小さい長方形は、何も表示されていない同じ形の長方形と重なるようにして壁際に後退した。
『箱庭クエストの開放と共に箱庭ポイントの表示も追加されました。箱庭ポイントは特産品の生産、動植物の育成などでも溜まっていきますが、そのポイントは微量です。箱庭クエストは箱庭ごとに最適なクエストを選定し、提示します。達成することでまとまったポイントを獲得可能です。例を表示します』
中くらいの長方形にいくつか文字が浮かぶ。どうやらクエストを表しているようで、内容は多岐にわたっていた。作付、庭園の管理、指定アイテムの納品、放牧、水質調査、環境変化、品種改良エトセトラ。おそらくそのうち出来るよ、ってことも混じっているのだろうが、それにしても多い。ちなみに指定アイテムの納品先はユニオンとなっていた。
『箱庭の発展によってクエストの種別も追加されていきます。例は主だったものを表示させていただきましたが、初期は箱庭の整備関連が多く選定されます。また、クエストは日ごとに切り替わる短期のものと、達成することで変化が起きやすい長期のものとが存在しています』
「変化?」
『変化については開示制限がかかっており、説明することは出来ません』
残念。そうほいほい教えてはもらえないか。
それにしても、箱庭内で達成できるクエスト、が箱庭クエストなのかな?
指定アイテムを外から調達してきたらどうなるのか聞いたところ、それは無効だとケトゥンの方から返ってきた。
「箱庭以外のものなら、僕たちでも調達できるしね」
「ユニオンで発行されるの? 箱庭クエストも?」
「一部はそうかな。ほら、ここって渡り人の管理もしてるし、箱庭のメンテナンス管理もしてるから」
「理由になってるようでなってないけど、まあいいか」
「言われたでしょ。発展させてくれって」
「そういやそうだ」
いや、忘れてたわけではないんですよ。優先順位が低いだけで。
それも酒造りのためなら、発展させるのもやぶさかではない。そもそも素材が外にあんまりないし、なんなら見つけても採取できるか怪しい。種を譲ってもらって中で育ててね、とかありそう。
今まで気にしてなかったけど、世界の全体面積どれくらいあるんだろうな? そんなに広くないなら、生活してる人たち用のものを作るので精一杯なのかもしれない。というかそれっぽいことをスイが言ってた気がする。
「とりあえず解った。箱庭クエストこなしてポイント貯めて、そのポイントで機能開放が出来るんだな」
『イエス』
「バージョン2以降のものはどういうのがあるの?」
『検索します……現状態の箱庭には組み込まれておりません。アップデート後にユニオンにてメンテナンスをお願いします』
「なるほどそういう仕組み」
「まあ僕たちも箱庭についてはわからないことも有るんだけどね。メンテナンス用の設備があるから、そこで何かしらあるんだと思うよ」
「まってメンテナンス者がメンテナンスについて解ってない!」
「神の作った仕組みだもの、我々に解るはずないじゃないか、ははは!」
笑って済まされた。今のところ問題がないから良いけども!
『他にご質問はありますか』
「いや、解ったから大丈夫。次お願い」
『では、箱庭操作の説明へ移ります』
ドゥクトゥスの声に反応して、クエストが表示された画面が壁際に後退し、壁際にあった箱庭操作のバージョン表と入れ替わる。
……うーん、落ち着いたとはいえ、こう、そこはかとなく釈然としない。いえ私がさっさとチュートリアル済ませないのが悪いんですけど! そこそこ貴重なMP回復薬の犠牲に黙祷。
『箱庭操作の基礎になるものが、ver0で追加されるマップとなります。今回は説明のため、最適な部分を表示させていただきました』
何も表示されてなかった長方形が目の前にスライドして、そこに草原とそこから続く湿地帯が表示される。拡大されてるっぽくて、それ以外は見えないけど、この配置って私の箱庭の地形だな。
『ver01で追加されます、植生・地形操作機能を例に説明します。植生は一度でも箱庭内で育てられた植物を自由にマップ上から追加出来る機能です。また、同じく削除も可能です。指定区域に猫じゃらしの群生を作成してみましょう』
「猫じゃらし」
そいや箱庭に最初から生えてたな。こいつだけは採取が可能だったっけ。
鑑定してみても効果があるわけじゃないし、素材にするにしても微妙で、掲示板でも完全なネタ扱いされてたやつ。もしかして、このチュートリアルのために植えられてたのかね。
納得した気持ちになりつつ、ドゥクトゥスの指示通りに、マップ上で色が変わっていた部分をタップする。するとそこに重なるように別ウィンドウが開き、猫じゃらしが表示される。
これ、文字だけじゃなく画像付きなんだな。親切。植物なんて種類が多いもの、名前だけで判らんからな! 現実にも実装してほしいです。
猫じゃらしを選択すると、足元にホログラムで猫じゃらしが生えてきた。マップ上も少し表示が変わっている。
『植生操作後はマップの該当部分をタップ、もしくは注視することで植えられたものの確認が可能です。では、次に、マップより植生操作の範囲を決定してみましょう』
生えていた猫じゃらしが消え、マップも元の状態に戻る。先ほどと同じ場所に触れてみれば、今度は触れた部分がオレンジに変化した。
ペイントソフトかな? 範囲塗りつぶしとか細かい削除とかできたら便利なんだけども、そういった機能はないようだ。
大雑把に先ほどと同じくらいの範囲を色替えして、マップの右上で主張が激しい決定のボタンをタップする。
『範囲の決定後に、マップ上から該当箇所を選択することで植生操作が可能です。範囲はマップ上に保存されます』
「操作せずに箱庭から出ても保存されたまま?」
『イエス』
「操作範囲をキャンセルはどうするの?」
『決定された範囲を長押しで解除されます』
「了解」
しばし選択したりキャンセルしたり、選択する範囲で絵を描いてみたりしながら操作に慣れる。
猫型の範囲に猫じゃらしを生やしたり出来てちょっと楽しい。
「うん、大丈夫そう」
『では次に、地形操作の説明に移ります』
説明一回で終わらしたかったけど終わらなかった
多分あと一回で終わる




