053.【配信】拝啓、お日柄もよく
「あー、あー、テステス。音声入ってるー?」
[[ キターーーー!! ]]
[[ どうやったら開放できるんですか! ]]
[[ えっかわ ]]
[[ 聞こえてるよー! ]]
「うおビックリした」
開始早々、爆速で流れていくコメント群に少し引く。思わず漏れた言葉に反応してまたさらにコメントが流れていった。
「えー、本日はお日柄も良く? 雨降ってるところもあるかもだけどここは至って平和です」
[[ wwwwww ]]
[[ wwwwwwwwww ]]
[[ スピーチかよww ]]
[[ こっち土砂降り!!!! ]]
[[ 良いから早く情報教えて下さい ]]
せっかちさんがおるなあと眺めつつ、そう言われると素直に教える気持ちが無くなってくるので困ったもんだ。一応は説明配信なので解っていることはある程度開示するけども。
こんなんでもめっちゃ心臓早鐘打ってるんですよ。考えすぎると開始できないからほぼノープラン、出たとこ勝負で配信開始したけど。さっそくどう話を切り出すか詰まってます。
「あー、なにぶん私も解放したばっかでよく解ってなくてですね。とりあえずあれだ。箱庭影響度を上げたら解放されます。えっと、影響度ランクは2、かな」
[[ 2!? ]]
[[ え、今必死でパートナー探してるんですけどそれって ]]
[[ 2に上がる条件は!?!? ]]
おー、おー、流れが更に加速するか。これはもう目で追えませんね。まあ、同じような言葉も多いので大まかには解るけども。
「その相談……というか、情報提供というか……驚かないでね?」
無駄だろうなと思いつつ、それでも一言断って平らに切った岩の上へ蜂蜜ジュースを置く。
これ、画面越しで鑑定とか出来るんか? 鑑定結果の表示とか映るんか?
「製作後に鑑定したら特産品に指定可能でした。蜂蜜ジュースになります。で、これが鑑定結果。確認できるかな? 映ってる?」
[[ ふあっ!? ]]
[[ MP回復薬、だと!? ]]
[[ 特産品ってなんぞ ]]
[[ まっって蜂蜜手に入るの!? ]]
え、そこから? っていうコメントも流れていくが、大体がMP回復薬に食いついている。まあそりゃそうだ。蜂の群れに突っ込んでMP切れでコルトにたどり着けなかったとき、私も欲しかったもん。
「でー、これがその蜂蜜ジュースのレシピなんだけど……見えてます?」
自分のところでは確認できるレシピを表示させる。さっき蜂蜜ジュースの鑑定結果は見えていたようだけど、これは果たして映るのやら。
[[ 名前とアイコンは見える ]]
[[ 肝心の材料見えないんですけどぉ!! ]]
[[ ほー。材料は単純なんだな ]]
[[ 見えないものが見えてるひとがいる ]]
[[ 蜂蜜と水 ]]
「お? 別れた?」
どうやら映っている人とそうでない人がいるようだ。
「調理スキル持ってると見えるのかな? 見えた人持ってます? っと、まってまって流れ早すぎて見えないアンケート機能求む!!!!」
多分答えてくれてるんだろうけどその他の話が多すぎてですね!
[[ wwwww ]]
[[ 運営に要望送ろう! ]]
「えーい、多分調理スキル持ってる人が見える! で、見えてる人! もそうでない人も! 材料は蜂蜜と水で、蜂蜜を水で薄めて温度管理気を付けて放置するだけ! で、多分だけど【菌知識】がいる! 量産してよろしくどうぞ!!」
[[ おっしゃいっちょ作ってみる! ]]
[[ 蜂蜜どこ ]]
[[ 最近ストゥーデフでたまに売ってるよ ]]
[[ コルトで貰えるって小耳に挟んだ ]]
[[ コルト is どこ ]]
[[ クルトゥテラの街道進んだ先だな ]]
「そうそう、クルトゥテラのコルト街道の先。ルーラー・ビーとの戦闘が必要だけど、そこら辺は情報屋が扱ってたはず」
[[ 戦闘いるのか ]]
[[ 純生産にはきっついなー ]]
[[ 持ち込んで作ってもらお ]]
「バーサーカーの皆さん出番です。流通させてください。蜂蜜酒開発のために」
[[ お酒 ]]
[[ そういや見たこと無いな ]]
[[ バーwサーwカーwww ]]
[[ やっちゃえ! バーサーカー! ]]
[[ あ、そっか。なんか見覚えある作り方って思ったらこれミードの作り方じゃん ]]
いやもうまじで頼みます。自分ひとりで周回するの流石に厳しいんだ。毎回いつものメンバーに頼むのも出来ないしさ。材料無いと作れるものも作れない世は無常。
これで頼むことは頼んだし配信停止するか、と操作しようとしたところで見ていたようにモルトからチャットが飛んでくる。
『特産品と影響度ランク上げる他条件調査中の説明』
あ、はい。これは見てますね。そういやそういうのもありました。
「あー、とりあえずこれ、この蜂蜜ジュースが箱庭の特産品に登録されたことで私の影響度ランクは上がったんですけども。その他にも条件あるはずなんで、そこは有志によって調査中です。多分同じもの作っても特産品に指定はできないと思う……おそらく、メイビー」
[[ ふわっふわ ]]
[[ 解放直後だししゃーねーべ ]]
[[ 俺も有志の一員になってくらぁ! ]]
[[ っち、使えねーな ]]
[[ 特産品って? ]]
「そうそう。特産品。これの説明忘れるとこだった。えっとねー、レシピ定着ってありますよね? あれの永続収入版って感じ」
[[ はあ!? ]]
[[ 不労所得!! ]]
[[ え、じゃあ他の人が回復薬作れないってこと? ]]
[[ レシピと同じなら作れはする ]]
[[ 作る側はあんまり関係ないよ ]]
「その通り。作ることに制限はかからないです。ただ、他の人の箱庭特産品には指定ができない。でもそこも縛りはきつくなくって、製法が一部でも違えば別物として登録できるみたい。完全同じ材料で同じ分量で同じ製法だと、私の設定した最低価格を割って販売ができなくなる、っていう制限しか無いですね」
[[ それメリットあんの? ]]
[[ 作られた分だけ懐潤うから ]]
[[ ランク上がるだけで十分なメリットやろがい! ]]
[[ いまが……チャンス!? ]]
[[ まあ、材料と製法が解ってるから、ちょっとだけ変えたやつ登録成功したらOKだわな ]]
「おお、その手が。集合知の勝利」
[[ それ狙いじゃなかったのかよw ]]
[[ 他の条件って何があります? ]]
「MP回復薬ワンオペは死んじゃうので……他の条件はさっきも言った通り調査中です。っと?」
表示されていたオンリーワンのリストに動きが見えて、会話を止める。名前は知らない人だけど、配信者のリストに追加されたってことは条件満たした人が出たようだ。
[[ 配信者リスト増えてるー!! ]]
[[ ちょっ、どっち見れば ]]
[[ 鳩は禁止ですか?? ]]
ファラオ [[ 邪魔するぜ。特産品以外でランク上がった者だ ]]
[[ 素早い!! ]]
[[ 条件プリーズ!! ]]
「お、おお。配信者だとコメントも名前付きなのか……」
[[ 親切設計 ]]
[[ 心折設計では? ]]
[[ 誰がうまいこと言えと ]]
ファラオ [[ 家を建て終わったら解放された。どこから家判定になるかはわからんがな ]]
[[ 家!!? ]]
[[ 家建てたの!? ]]
[[ テント暮らししてたけどテントは家じゃないと申されるか!! ]]
[[ おいキャンパーいるぞ ]]
[[ なるほどキャンプ ]]
「家建つんだ……そこまで作ってもいいと?」
まあ確かに、危険はないとはいえログアウト時に野ざらしだなーとは思ってましたが。まさかプレイヤーが作れるとは思わんやろがい。
[[ 盛り上がってまいりました ]]
[[ 俺んとこ木が無いんだよなあ洞窟利用してみっか ]]
それぞれ思うところがあったのか、コメントの勢いが落ち着いてくる。みんな自分のことに戻ったかね。
「一通り説明したのでそろそろ配信終わります。皆頑張ってねー、あとお酒の情報かお酒があったら高く買い取りますのでご連絡ください!!」
[[ はーい、またねー ]]
[[ また配信しますか? ]]
「予定は未定です!じゃあの!」
蜂蜜ジュースについて
モルト「一気に情報出しすぎだボケ」
N.N.「やっぱりなんか起こしてる」




