052. さらば平穏
< 特産品が確立しました。【ark hortus】影響度を上昇させます >
< 箱庭操作機能が解禁されました。ヘルプをご参照ください >
< 箱庭クエストが解禁されました。ヘルプをご参照ください >
< ゲーム内配信機能が解禁されました。ヘルプをご参照ください >
<< お知らせします。アークにてゲーム内配信機能を開放したプレイヤーが現れました。ネクソム全体に配信機能が追加されます。なお、各固有のアークにて開放されない限り、視聴のみとなり、配信はできません >>
なんかいっぱい、きた。
「ちょ、ちょーっと待ってね」
誰に見られているわけでもないのに思わず口から出る。次の瞬間、見計らったようにモルトからチャットが飛んできた。
『今すぐ配信設定確認しろあとそっち行く』
『はい』
こういうときは反論も言い訳もしてはいけない。
配信設定を意識するといくつもウィンドウが開き、色々と細かい数値やバーが見える。禁止コメントやらミュートやらブラックリストやら配信許可域設定やら。
そして確認しろって言われたの多分これだ。常時配信のチェック。デフォルトがオンになっているようなのでオフに切り替える。これでひとまず安心。……あんしん、かなあ????
見ないようにしていたウィンドウのひとつ。おそらく視聴側のものだろうそれ。
どこぞの動画配信サイトと似たようなレイアウトのそこに、現在の配信者がひと目で解るリストが存在している。
さて、先程開放された……というか私が開放してしまった機能です。
リストに何人載っているでしょう?
答え、ひとり。
「は、はやく皆も開放してくれ……っ」
悪目立ちしてるじゃねーかコンチクショウ!!
『ついた来れるかコルト』
『すぐ行く』
頭を抱えたところでモルトから要請。一人で抱え込むには重すぎたので速攻で回収してくる。
「やらかしたな」
「やらかしました」
箱庭に入って早々の言葉に深く頷いた。
後悔は先に立ってくれないので、するだけ無駄!! とはいっても、一気に変わりすぎて優先順位がつけきれないのも事実。相談できる相手がいるのはありがたい。
「条件は?」
「わからん。特産品の設定、がトリガーっぽいが」
「は? なんだそれ」
予想外のことだったんだろう。珍しいほど目が丸くなっている。まあ、今までのゲームで生産寄りの動きしてないもんなお前。村作りとか箱庭系のゲームでは割とよく見るんだけどな、特産品。
「これ作った時に確認が出てきて」
言いながら見せるのは「蜂蜜ジュース」。本当なら蜂蜜酒になるはずだったもの。蜂蜜発酵してジュースになるのおかしくない? 百歩譲って酢ならまだ解るんだけど!
「お前、これ……MP回復薬!?」
「みたい。酒にならなかった」
「いやいやいやいや、こっちのほうがすごいから!」
「あげる」
「おま、ほんと酒が絡むとへっぽこだな!?」
そんな事言われましても。目的の前には他がどうでも良くなるだけだよ。
でもまあ、今の段階では貴重なものなんだろう。それは理解できる。レシピ定着もされなかったし、作成レシピの開示は条件付きなのかもしれない。そこもまあ頭が痛い要素なわけで。
「もっかいやって作れるとは限らんし……多分出来る気はするけど。お前生産系取ってないだろ? リトかパラトスあたりに調薬で蜂蜜ジュースでてるか確認してくれない? ちょっと他にもいっぱい解禁されてて」
「わかった」
すぅーはーと深呼吸しながらチャットを飛ばすために文字を打っているのだろう指の動き。器用だね。
さて、言ったからにはこちらも諸々を確認しないと。
配信……はさっきちょっと確認した。もーまんま配信である。ゲーム内配信って枕詞の通り、ログアウトすると見れないみたい。ゲーム内のみで視聴できる感じ? 世界観よ!
恐る恐るアーカイブを確認すれば、開放直後から配信設定変更までの短い間に流れた痕跡が伺えた。うーわーもうコメント書き込まれてら……これ削除したらダメですかね? ダメだろうなあ。炎上不可避。目に余る暴言などがないだけ良しとしよう。民度高いねここ。
でも削除できるかだけ試して……出来ないんかーい!
システム的に削除は無理らしい。垂れ流し? 垂れ流しなの? 編集とかも出来ない感じ? あ、そっちは出来るんだへーほー。
編集したのを上げると、編集元の未編集のものとのリンクが確立して、表示も別枠扱いになるんだな。本来と違う意味に取らせるってことが出来ないようになってる……って感じ? ソースを確認させろをシステムが具現化している。
一旦、配信関連はチェックを終えたので、次に箱庭クエストと箱庭操作を確認。したんだけど、これヘルプにユニオンでレクチャーを受けろってしか書いてないな。実際のシステム開いても項目はあれどグレーアウトしている。流石にヘルプ見ろだけで放置とはなっていないようで、おそらくユニオンでチュートリアルっぽいものが受けられるんだろう。また会ったねチュートリアル君。
さて、問題の特産品である。
いくつか設定できるようなUIデザインではあるが、現在設定されているのは一つで、更に他の枠がロック表示になっているから、現状だと設定可能最大数は一つっていうことなんだろうと理解。
で、気になる効果はー、レシピ定着と似た感じ……? 他の箱庭で作る場合に一部利益がこっちに流れてくるのは同じ。あ、でもこれ永続か! レシピ定着は一定期間だけど、特産品は永続収入になるんだな。これだけだと早いもの勝ちになりそうだが、制作方法に少しでも違いがあると別の特産品として登録できるんだ。
それ以外にも、同じものを作る場合は最低価格を下回って販売は不可能、と。
んー、確実に必要になるアイテムがこの枠に入るっぽいかなー?
MP回復薬なんて必需品じゃんね。となるとHP回復薬なんかも登録できるのかな。
……誰かやってそうなもんだけど。いや、普通のやつは三国でも売られてたか。じゃあ住人がすでに権利持ってるってことかな?
「よし、だいたい把握」
まあ結局、何をしたら箱庭影響度が上がるのかって殆どわからなかったけどな! 少なくとも同じものを作ったとして上がらないだろうってことはなんとなく。
多少製法で幅はでたとして、あとになるほど苦しくなるから、メタ考察すると他にも影響度上げられそうな条件はあると思うんだけども。
「ホップ、調薬には出てないみたいだ。料理はノーネームに確認取ってるからまて」
「サンキュー」
一瞬、権兵衛が料理スキルあるのかと思ったけど、情報屋としての人脈でってことね。
ちなみに私が確認しても意味がない! だって出した張本人! 他の人も確認できるのかが重要でして。
「そっちは?」
「何もわからないことが判りました」
「どうにかしろ」
「むーりーだーよー!」
「じゃあ腹くくるしか無いな」
モルトの言葉にぐうの音も出ない。平穏……僕の平穏はいずこ……。
「そばに居て……」
「草葉の陰から見守ってるわ」
「死に戻ってんじゃん!!」
「実際問題、俺が居たところで解決しないだろうが。難しいが条件の洗い出ししてみるから」
「ひとりきりの謝罪会見」
「普段のお前でいけば、まあどうにかなるだろ」
「こういうときだけ心配が薄い!!」
「信頼の証だ。良かったな」
ぽんと肩を叩かれましても、釈然といたしません。
こう見えて人見知りなの! 不特定多数の前で説明とか無理無理無理。
「灰雪あとで連れてくるから。あとになるほど収集つかなくなる」
「解ってる……あー、やるかあ。説明配信。条件の方よろ」
「ん。あと料理にもレシピ出てないみたいだな」
覚悟を決めた直後、追加の情報にうなだれることとなった。
レシピ開示するんで各々作っていただいて……! ひとりで全員分はしんでしまいます。




