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110. どんどん剥がれる

 花の仕分けも終わり、本命の下処理に移った結果は全部消えたり爆発したりで成功したのは一割にも満たなかった。もちろんクエストは失敗扱いなので、素直に補助用具を使いました。


 調合素材の下処理クエストだけでは種と交換する信用ポイントが足らないので、他にもいくつかこなす。枯れ草の処理だったり、薬草採取だったり、ちょっと変わったところではバーミリヲンのおやつを作ったり。

 順当に仕事なんだろうなあというものの中に稀に混じっている、これは確実に私用ではというクエストけっこう好き。簡単というのもあるが、簡単な割に信用ポイントがお高い。もっとちょうだい。

 そんなこんなで要望の種も調達出来たので、あとはリモの毒の花のやつなんだけど……。


「リストにはのっとらんからランダムじゃな」


 クエストをこなして戻ってきても、バーミリヲンはティータイムを続行中だった。

 当初インドアかと思ったバーミリヲンだが、実は外にいるほうが多い。まあ、この島自体がバーミリヲンの領土というか家というかな扱いなのかもしれんが、それはそれで壮大な引き籠もりだな。


「またガチャかあ」


 ちょっと前の動物移住、目当てのものが出るまで耐久チャレンジを思い出す。欲しいって思ったら出ないよな。


「ヒナゲシのやつが戻ってきおったら作れるんじゃがの」

「ヒナゲシ?」

『こいつの使い魔の一体だな』

「あーなんかチラッとみんな居なくなったとか言ってたね」


 最初に出会ったときの説明を思い出しつつ相槌を打てば、バーミリヲンが周りに生えている小さな赤い花を指差した。

 この島はそこかしこに植物が生えてるんだけど、普通の色合いのものの他に赤系統の木だったり植物だったりが多い。普通の色のものはクエスト対象だったりバーミリヲンから許可もらって個人用に軽い採取なんかも出来たりするんだが、赤系統は賑やかしオブジェクトなのか採取や移動ができないようになっている。もちろん破壊も。

 バーミリヲン的にもそれらは触れてほしくないみたいで、個人的に採取するときなんかは注意をされる。間違って引っこ抜こうとしたら信用ガタ落ちしそうだけど、幹や葉っぱなどといった花以外の部分も全体的に赤いから見分けは簡単。


「この領域を護るために純然たる力として根付かせたからの。お主以外の者も頑張っとるし、もう何日かしたら戻せるだろうて」

「うん?」


 パタリとアブチロンの尾が揺れた。わあ、立派なもふもふ……ではなく。


「居なくなったって、崩落に巻き込まれたわけじゃない……?」

「ある意味巻き込まれたようなもんじゃぞ? 使い魔たちを根付かせないと領域の保持すら危うかったんじゃからの」

「申し訳ないですが寡聞にしてこの世界の知識不足なため説明もらってもいいですか」


 小首を傾げるバーミリヲン。私も反対側に首を傾ける。流れる沈黙。ため息を吐き出すアブチロン。


『……そこな、アレのことはどれくらい知っておるのだ』

「アレ、とは」

『名状しがたきもの、名もなきもの、喰らいつくすもの、色々形容されるが特に固有の名はない。崩落の原因となった災厄よ』


 えっと、最終的なボスみたいなもんかな? それとも世界背景を説明しようとしてくれてる?

 このゲーム、復興以外の目的を示されていないけど、そういうものだと思っていた。し、まあ、もともとの目的が酒だったからな。実はちゃんと敵対勢力なんてものがあって、戦闘をする必要があるのかもしれない。ルーラー・ビーのような大型エネミーとしてのボスはいるわけだし。


『知らんのか』

「崩落が起きた、ってのは知ってるけど、アレについてはなにも?」

『お主、所属……ああ、クルトゥテラか。ならば話に触れる機会もなかろうな』

「そういうもんなの?」

『防衛と排除はストゥーデフとインエクスセスの領分ゆえ』

「そうなんじゃな」

『……主には一度説明したはずだが』


 ふむふむと頷いていれば同じようにバーミリヲンも頷いていた。呆れたアブチロンの視線が突き刺さっているがどこ吹く風だ。


『まあ良い。アレはすべてを喰らい尽くす。ただ増殖し、食べ、肥大化していくばかりの存在よ。和解も出来ず、意識もなく、全てを喰らい尽くすまで止まらぬ。この世界はヤツの餌として見つけられてしまったのだ』

「はた迷惑な大喰らいですね」

「ほんに。おかげでわらわがずっと働きっぱなしよ」

『主はすぐサボる。今までのツケを払っているようなものだろうに、同情の余地はない』

「ほほ」


 アブチロンの渋面にはんなりとした笑みを浮かべるバーミリヲンだが、耳先が忙しなくピクピクしているのが隠せていない。

 なんだろうなあ。住人の獣人ってバーミリヲンとエステラーゼしか知らないけど、全員残念属性なんだろうか。いや、エドも居たわ。そうだよいつものメンバー過ぎて忘れそうになるけどエドは住人だわ。あやうく獣人への偏見を持つところだった。


『続けるぞ。アレに攻撃は無意味だ。少なくとも今のところは。だが、攻撃することやエネルギーの防壁を張ることでその内にある大地を護ることはできる。アレは向かってくるものや辿り着いた最初のものを食べる習性があるからな。しかし、食べられれば攻撃は無効化されるし防壁は薄くなる。それを補強するために、残った神が持ち回りで大神の残滓を維持しておるのよ。だがいかな神とて神力は無尽蔵ではない。優先順位をつけ取捨選択せざるを得なくなっている。そのうちの優先順位が低いのがこのエリアだ』


 すごく真面目でシリアスなんだが、優先順位が低いのところでバーミリヲンが中空へあっかんべーをしたものだからこちとら笑いを堪えるのが大変です! いきなり笑ってはいけないを始めるな。


『……バーミリヲン、主がいるから優先順位が下がっておるのだぞ。現実の結果として侵食は防がれ大地は失われておらぬ』

「知っとるわ。じゃがわらわ、道を落とされて逃げられんかったんじゃぞ? 恩情あってもええじゃろうに」

『……渡り人が修復を進めれば、余裕ができよう。要望のひとつやふたつ、検討しておけばいい』

「じゃって、よろしゅうな」

「あれっ!? こっちに戻ってきましたが!?」


 ただ聞く姿勢だったのだが、丸投げともとれる右から左をされた。いやまあ、ここでプレイヤーが動かないと解決できませんにしておくのは、ゲームの都合だと解るんですが。


「クエストはそりゃこなすけど、その、障壁の補強みたいなのはないんだけども」

「おぬしらが関わることに意味があるのよ」

『ああ。渡り人の持つ力はこの世界に馴染むよう変換自体はされておるが、根源は別の世界のエネルギーだ。この世界のエネルギーは食われ減っていくばかり。その矛先がずれるだけでも大助かりよ』

「なる、ほど? アレにとっての味変みたいなもの?」

『あ、味変……』

「ほほほっ」


 え、素直な感想なんだけどどうして呆気にとられたり笑われたりしてるんですかね。

 めっちゃ解せぬという顔をしていたのに気づいたのだろう、アブチロンはやや早めに尾を振っている。ふぁっさふぁっさと風が緩やかに頬に当たるけれど砂埃などは舞い上がらない。なんという器用な尾の振り方なんだろう。感心してしまう。


『コホン。主らの力が混じれば混じるだけ、疲弊した神へ戻るエネルギーも多くなる。それがひいては神力を回復させ、全体を良き方向へ向かわせるだろう。このエリアはもう少しステージが低いが、似たようなものよ。主らが作業をこなすだけ我らの負担が軽減される。実務的にも、エネルギー的にもな。根付いた使い魔を戻すことができるというのは、負担が軽くなっているという証左よ』

「なるほど。まさかおやつ作りも手助けになってるとは」

「あ」

『何?』


 私用とか思ってごめんね、大事な仕事だったんだねえと溢れた言葉にバーミリヲンがしまったという顔をする。隣のアブチロンが凝視していて、あれ、これはもしや。


『バーミリヲン!!おぬしまた島のクエストに私用をまぜおって!!』

「わらわ頑張っとるんじゃもん! ご褒美ほしかったんじゃもんー!!」


 毛を逆立てたアブチロンがクワッと牙を剥く姿、端から見てるとカッコいいです。



想定以上に説明回になってしまった

なおバーミリヲンの好感度はお茶飲んでクエスト関係ないおしゃべりしてたら上がるよ

あまりにもちょろい

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