一喜一憂は良くないと思いました。
目を覚ますと俺は人間ではなくなっていた。ドラゴンだ。
ドラゴン。
それは、ファンタジー世界の最強モンスター。
俺はそのドラゴンになってしまったようだ。
この姿は、ゲームや漫画でよく見るやつだ。翼に尻尾もあるし、牙もある。ドラゴンだがまだ体が小さい。きっと生まれたばかりだろう。
……って、いや、なんでだよ! 俺は昨日まで人間だったんだぞ!? それがいきなりドラゴンになってたらビックリするわ! いや待て。落ち着け俺。
よく考えろ。昨日の記憶はどうなってる? 昨日は……そうだ!仕事が終わってから、家に帰って寝たんだ。そしたらこんな姿になっちまってるじゃないか。
これは夢か?現実なのか? 頬をつねってみる。痛い。どうやら夢じゃないみたいだ。
ならここは一体どこなんだ?なぜ俺はこんな所にいるんだ? 分からない。何も思い出せないぞ。
とりあえず周りを調べてみるか……。
金の装飾が施された壁に、赤いカーペット。そして天井にはシャンデリア。隣にはメルヘンチックな大きなベット。
まるでどこかの城のようだ。
どうなっているんだ?
「あら、起きてたのルー。早起きね」
ベットから少女が起き上がっていた。綺麗な金髪に整った顔立ち。年齢は12歳くらいだろうか? とても可愛らしい少女だ。
ん?ルーって誰だ?俺のことか?……そんなわけないよな。うん、ありえないわ。
そんなことを考えているうちに少女は近づいてきて、俺を抱きしめた。
え!?ちょ、ちょっと待ってくれ!いきなり何するんだ!? あたふたしていると少女が口を開いた。
「どうしたのルー?」
その声は透き通っていてとても綺麗だと思った。そしてどこか懐かしい感じがした。
あれ、なんで俺はこんなに動揺しているんだ?この少女とは初対面のはずなのに。なぜか心が安らぐような感じがする。まるで昔から知っていたかのような感じだ。
もしかして……俺はこの子を知っているのか? そう思った瞬間、頭の中に映像が流れ込んできた。
これは……記憶か?そうだ!思い出したぞ!この子は俺の飼い主だ!名前はルーチェって言うんだ。
そして俺はルーチェのペットで名前はルーだ。この部屋はルーチェの部屋だったのか。
どうして今まで忘れていたんだ?この姿になってからの記憶が曖昧だ。でも今は思い出せてよかった。ルーチェがいれば安心できるな。
よし、まずは状況を整理しよう。
俺は昨日まで人間だったはずなんだが、朝起きたらドラゴンになっていた。これは夢なのか?それとも現実なのか?分からないことだらけだが、とりあえず現状を把握するために情報を集めなければ……。
まずはルーチェに色々聞いてみよう。彼女なら何か知っているはずだしな。
(ねぇ、ルーチェ)
気が付くと本能的にテレパシーで会話していた。あ、てかルーチェ驚くねこれ。
「なぁに?ルー?」
あ……やばい、めっちゃ可愛いなこの子。抱きしめたくなる衝動を抑えつつ質問する。
(えっと、ここはどこなのかな?)
すると彼女は少し困った顔をして答えた。だがそのあと笑顔でこう言った。
「ここは私のお城よ!そしてあなたは私のペットなの!」
なるほど……やっぱりそうなのか……って、え!?マジで!?俺、この子のペットなの!?マジで?
(そ、そうなの?)
動揺しつつ聞き返す。すると彼女は笑顔で答えた。
「そうよ!ルーはね、私が小さい時に拾った子なのよ!」
ああ……そうか……つまり俺は捨てドラゴンだったのか。
なんだか切ない気持ちになるな。でも、今こうして生きているだけでもマシだと思うべきなのかもしれないな。
よし!まずは状況を整理しよう!この城はルーチェのお城ということなので、とりあえず外に出ることはできるはずだろう。あとはこの世界の情報だ。
幸い、ドラゴンになったおかげで、魔力を感じることができるようになっていた。
なんとなくだが、使い方もわかる。
試しに頭の中で魔力を集中させてみる。すると体の中から何かが抜けていくような感覚に襲われた。それと同時に目の前に火の玉が現れた。
おぉーすげー!すげーすげー!俺魔法使えるんだぁ!かっこいいじゃんこれ!めちゃくちゃ興奮してきたわ! ワクワクドキドキしてると、心配そうな表情でルーチェが話しかけてきた。
「どうしたのルー?」
あ……やべっ、つい興奮してたらルーチェの事を忘れてたぜ……。とりあえず安心させないとな。
(ご、ごめんごめん、なんでもないよ!)
そう言うと彼女は安心したような表情を浮かべた。
うん、可愛いね。こりゃモテるだろうな。そんなことを考えていると突然俺のお腹がグーとなった。
その音を聞いてルーチェはクスッと笑い、時計を指さす。時刻はもう昼過ぎだった。まあとりあえず今は飯が優先だ!腹が減っては何とやらってやつだ。早速飯にしようじゃないか!
(それじゃあご飯にしようか!ルーチェ!)
そう言うと彼女は嬉しそうな表情を浮かべた。
「わかったわ!すぐに準備するわね!」
(ありがとう)
そう言い残して部屋を出ようとするルーチェを呼び止める。
(あ、待って!俺も手伝うよ!)
すると彼女は悲しそうな顔でこう言った。
「あなたのことまだお父様に言ってないのよ」
なるほど……どうやらまだ事情を説明していないらしい。まあ無理もないか。いきなりドラゴンが家にいたら驚くもんな。
彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべた。
そんな顔しないでくれ……俺は大丈夫だからさ!むしろ心配かけてすまないと思っているくらいだしね。よし、ここは俺が一肌脱ぐしかないな!とりあえずルーチェのお父さんに挨拶しようじゃないか!きっと良い人に違いないからな! そうと決まれば行動開始だァッ!!
「言い忘れてたのだけど、お父様はドラゴンが嫌いなの」
(え?)
「だからルーも嫌われちゃうかもしれないわ……」
そう言って彼女は俯いてしまった。
(そ、そうなのか……)
「でも大丈夫よ!私が守ってあげるから!」
(ありがとう、ルーチェ)
そんな会話をしていると部屋の外から足音が聞こえてきた。どうやら誰かがこちらに向かっているようだ。そして扉が開き入ってきたのは黒髪のメイドだった。
やばい……めっちゃ怖そうな人だ……絶対この人怒らせたらダメなタイプだろこれ……
「あら……ルーチェ様。そのお方は?」
やばい!めっちゃ見てるよこの人!!
「えっとね……この子はルーっていうの!」
ちょ!?ルーチェ!?それはまずいんじゃ……
するとメイドは目を細めて言った。
「そうですか……」
いや怖っ!!絶対怒ってるってこれ!!てかなんか睨んでない?気のせいかな?いや違うわ!完全に睨まれてるわこれ!! もう嫌だ帰りたいよぉおお!!!誰か助けてくれぇええ!!
「安心してルーこの人は大丈夫だから」
ルーチェは笑顔でそう言った。しかしメイドの表情は変わらない。むしろ更に険しくなった気がした……怖すぎるよこの人!! すると彼女は口を開いた。
そして俺は悟ったのだった……もう終わりだと。
彼女が口を開く前に、俺は土下座した。
(すいませんでしたぁああああ!!)
もう謝るしかないだろう!だって怖いんだもん!仕方ないじゃんかよぉおおおお!!! そんな俺を見てルーチェは言った。
あれ?なんか思ってた反応と違うぞ……?というかなんで固まってるんだ? 恐る恐る顔を上げると、そこには驚いた表情のメイドがいた。
(あれ?怒ってないの……?)
俺がそう聞くと彼女は答えた。
どうやらルーチェが事前に事情を説明してくれていたらしい。そして俺を庇ってくれたようだ。なんていい子なんだ……さすが俺のご主人様だぜ!一生ついていきます!! まあそんなこんなで誤解も解けて俺は無事解放されたのだった。ふぅー助かったぜ……一時はどうなることかと思ったよまったく……でもこれで一安心だな!さてと飯でも食いに行くか! そう思って部屋を出ようとすると、ルーチェが呼び止めてきた。
どうしたんだろうと思い振り返ると、彼女は笑顔で言った。
「ルーはここで待っててね」
あ……はい……わかりました……大人しくしてます……。
ルーチェはメイドと俺の分のご飯を取りに行った。
部屋に残ることになった俺は暇つぶしに周囲を観察することにした。ふむ……この部屋はとても可愛らしい感じの部屋だな。家具も白やピンクなど淡い色を基調としていて女性らしい感じだ。それにこの部屋いい匂いするんだよなぁ。部屋全体を香っているようで、なんだか落ち着くな。
あ、そうだ。せっかくだしこのチャンスを使って魔力の使い方でも練習してこうか!今はドラゴンになっているわけだし少しは役に立つだろうと思うんだよね。まあそもそもドラゴンだから自然と使い方は分かるかもしれないけどさ……それでもとりあえず念の為ってやつね。
さて、そうと決まれば早速やってみるか!! 確か体から出すイメージをすると魔力が出るって言ってた気がするからやってみよう。目を閉じて意識を集中してみる……よし、なんとなくだけど分かるぞ!!体から魔力を放出する感じでいいか?まあ物は試しだし一回やってみよう。えーと確かこんな感じで体の外に押し出す感じだっけ? よし!イメージできた……!それじゃあやるぞ……!! 次の瞬間、体の中から何かが抜けていくような感覚に陥ると、同時に目の前に火が出現した。
(うわあぁあぁああぁぁっっ!?!?)
驚いて尻もちをつく。え!?何俺もしかして魔法使えるの!?すげーじゃん!!
てかめちゃくちゃ眩しいな!火が大きすぎて部屋全体を照らしている。だが不思議と熱くはない。恐らく魔力で生成された火なのだろう。とりあえず消さなければ……あ!そうだ!魔法消す時ってどうやるんだっけ?
あ、火めちゃでかくなってる。やべぇ消すどころかますます巨大化してくじゃねぇか。
ドゴオオオォォォ。
あ、やっちった。




