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デイドリーム・シンドローム-5-

「...で、なんでここに?」

涼汰を連れてきたのは”西棟、音楽室の第2実習室“。密かにバンドが組めた場合の練習場所を校内探し回っていたのが、ついに役に立つ日が来たようだ。

「先生にお願いして、ここを軽音部として使えるようにできないかってずっと考えていたんだけど、ずっと一人だったから...部活を立ち上げたりなんて踏み出せなかったんだけど、涼汰もいるからついに動けるかなって」

「すげぇ...軽音部かぁ、いいな、うん、この学校軽音部まだないもんな」

「涼汰がバンドに誘ってくれて嬉しかったよ。今まで妄想でしかバンドを組めなかったのに、ついに...ここなら吹奏楽部とも離れているし、あまり使われない校舎棟だからアンプから音を出してもあまり迷惑にもならない、うってつけの場所だと思ったんだ」

「よし、じゃあ早速先生に言ってみよう!対先生の交渉は俺に任せて。奏じゃ緊張して本題になかなかいかなさそうだから」

「ひどいなぁ、その通りだけど。よろしく頼むよ」


 部活動の申請は、涼汰が上手に仲のいい先生に交渉してくれて滞りなく部屋を使えるように許可も下りた。つくづく出会えたのが涼汰でよかったと思う。自分にないところを補ってくれる。そんな存在に出会える人が一体どれだけいるのだろうか。きっと俺は運がよかった。

「なんとか軽音部として活動できそうでよかったな!」

「涼汰が上手に言ってくれたおかげだよ、ありがとう」

「奏とバンドするためなら朝飯前!そう言えば達平を引き入れるための案って何?」

「2人で1曲できないかなって思って」

ギターとドラムのツインはよくある形態だ。うまく決まればシンプルな構成だけれど抜群にかっこいい。2人で楽しくしている姿を見たらきっと達平くんも音楽をやりたくなるはず。人を惹きつけて止まない音楽はいかなる感情もお構いなしに響くものだと思っている。

「ドラムセットは吹奏楽部で余って使わないものを拝借できたから...明日ギター持ってくるよ」

「うわー、何だか軽音部って感じだな!!じゃあ俺はドラムスティック持ってくるよ。スネアも持ってこようかな...ペダルも持ってきたほうが良さそうかな?...なんだかワクワクしてきた」

 涼汰が感じている以上にきっと、俺のほうがワクワクしていると思う。ずっと手を伸ばし続けてきた世界。それがどんどん身近になっていく。焦がれ続けていた。脳裏にずっと残っている、頭にガンガン鳴り渡る音楽と眩しいスポットライトの中の人々。


あぁ、じんわりと何かが満ちていくのがわかった。

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