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デイドリーム・シンドローム-3‐

 「冗談だよね?」

涼汰の言葉が上手く理解できず聞き直してしまった。

「冗談じゃないない!バンド!組もうよ!ギター弾けるでしょ?」

「え...弾けるけど...何で知って...」

「まぁまぁ細かいことはいいじゃん!俺はドラムね。まだ始めて半年ぐらいだから簡単なリズムしか叩けないけど...始めた頃からバンドは組みたいって思っていたんだ。奏の歌詞見て、今だ!って思ったんだ。一緒にこの音楽を鳴らせたら楽しいだろうなって想像できた。だから...」

「俺でいいの?」

「もちろん。奏じゃないと俺も組もうとか言わないよ」

嬉しかった。ずっと浴びたかった眩しいばかりのスポットライトの世界。むせ返るほどの熱気。どんなに手を伸ばしても独りじゃ届かなかった世界。それが今目の前に広がっているように感じた。

「ありがとう。とても嬉しい。頑張るよ」

「やった!!!俺もすごく嬉しい。改めて、これからよろしく!」

「よろしく。ただ...」

「ただ?」

「ベースがまだいないよ」

「それなら俺に任せて!この日の為に、目をつけていたやつがいるんだ」


 涼汰に連れられて1年生のフロアに向かった。去年まで自分が過ごしていた空間。あの時はとてもじゃないけれど、バンドを組むなんて考えられなかった。今、バンドのメンバーになる人と一緒に廊下を歩いているなんて不思議な気分だ。

「おっ、いたいた。達平!」

涼汰が手を振った先に一人の男子生徒がいた。すらっとした背丈が印象的だ。こちらの呼びかけに気づいたらしく、ゆったりと向かってきた。なんだか緊張する。

「俺の幼馴染で、小森達平っていうんだ。中学校の時に同級生たちとバンド組んでてベースやってるの知っててさ。俺がバンド組めたら絶対、達平誘うって決めていたんだ」

「あの...涼汰くん。バンドするの?」

達平くんが涼汰に話しかけている顔がなんだか曇っているような気がした。

「おう!ぜひ達平にベースで加入してほしいんだ。まだ出来立てほやほやのバンド名も決まってないバンドだけど」

達平くんの顔がさらに曇ったのがわかった。

「...涼汰くん、誘ってくれてうれしいよ。でも...僕は」


「僕はもうバンドはしないって決めているんだ」

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