まずはお試し
マイホームを異世界で。なーんてのが不動産屋の広告に並ぶようになった。
うそぉ!?と思うでしょ?
私もそう思ったわよ最初は。
「最近家賃も上がってるし、異世界だと物件も安く手に入るみたいだし」
旦那が、パンフレットを貰って来た。
「マイホーム買うにしても、ローンとか、このご時世で組むのもなぁと思ってさ」
それは分かる。一応共働きだけどね。
終身雇用とかじゃなくなったし、出来たらそれは避けたい。
で、異世界って何処よって話になるんだけど。
最近になって、その異世界との道が繋がったの。しかもこの日本で!
驚いたかって? そりゃ驚いたわよ。まさかそんなことが起きるなんて思ってなかったもの。
そんなこんなで最近は、異世界から人がこっちに来ることもあるし、もちろんこちらから行くこともある。
で、最近人気なのが、異世界の物件というわけ。
「でも、家買うにしてもさ、仕事どうするの?」
と私が聞くと旦那が頭を抱えた。そこなんだよねと。
移り住んだら、向こうで仕事を探すことになると。
えー!?
それって、悪役令嬢のお家の召使とか!?
お城の衛兵とかぁ!?
「いやいやそれ、お前小説の読みすぎ」
旦那は苦笑してとりあえずパンフ読めと言ってきた。はいはい。
パンフには異世界の社会事情とかが詳しく書いてあった。おお、あんまこっちと変わらないじゃない。ちな、旦那の仕事は車の営業だけど、向こうにも似たような仕事がある。異世界だからさすがに車ではなく馬車とかになるのかな?
そりゃそうだ、悪役令嬢が婚約破棄、だけで社会は回らん。うん。
他にもいろんなお仕事がある。(・_・D フムフム、これならなんとか行けそう?
で、やってきた。異世界!
案内された物件はブドウ畑の中の一軒家。二階建てでちょっと古くて、赤毛のアンに出てきそうな雰囲気がめっちゃいい!
日本円で二百万くらい。
安くない?
中を見せてもらうと、ちょっとくたびれてはいたけど、全然、そのまま住める。壁もきれいだし、床もへこみとかないし。
何でもホビットの人がすんでて、お仕事の事情で首都に引っ越したんだって。
あ、道理でなんかミニサイズ? でも私も旦那も背が低いからこれでちょうどイイかも。
いい物件でしょと自慢げに言うケモミミの不動産屋さん。
いいよこれ。すごくいい。
それにお試し期間ってのもあるみたいで、気に入らなかったら契約は白紙に戻せるとのこと。
遠慮なく使わせてもらうことにした。