#4
授業が始まり、校庭の直線トラックでは男の子達が走っていた。その中には彪太郎と金光もいて、それを見るクラスメイト達は様々な反応をしていた。金光に黄色い声援を送る女の子達、そして、大爆笑しながら彪太郎を馬鹿にする男の子達。
それもそのはず、綺麗なフォームでトップを独走している金光と、左右の手足が一緒に動いた奇怪なフォームで最後尾を走る彪太郎が、あまりにも対照的で特に目を引くからだ。
『キャーーー‼ 金光ク~~~ン』
『いいぞー‼ 彪太郎~‼』
冴子も男の子達に混じって彪太郎を指差し、声を上げて大笑いしている。
「ちょっと、冴子ぉ・・・・・・」
隣に座る美嬉は口元に手を当てながらも冴子を窘めるが、
「だって、ロボットみたいじゃ~ん!」
と、彼女の彪太郎に対する嘲笑は止まらない。
「くそぉ~、こんなはずじゃ・・・・・・」
彪太郎は真剣な表情で、涙を滲ませながら悔しがる。
『彪太郎は昨日の裏山での特訓を思い出していた。半袖短パン姿の彪太郎が、超人アスリート列伝の高地トレーニングが書かれたページを開いている。
「体内にたくさんの酸素を取り込めるようになるトレーニングか」
彪太郎は山道から見える住宅街を見渡した。
「ここが、この街で一番高い山だ。よぉし、ここで練習して、一ヶ月後の持久走大会では皆をアッと言わせてやる」
裏山の平地で秘密の特訓をしていた彪太郎。彼は左右の手足を交差させて歩く。
「歩くのはできるんだ。だから、走るのだって、できるはずさ!」
手足を交差させたフォームのまま、彪太郎は走ってみるが、次第に手足が一緒に出てしまう。』
彪太郎は直線トラックを懸命に走りながら唇を噛み締める。
(ちゃんと練習したのに・・・・・・どうして直らないんだよぉ!)
歯を食い縛って心で叫ぶ。その瞬間、
「うわっ!」
左右の足が交差して絡まり、ダイビングヘッドで滑り転んだ。
「あっ・・・・・・‼」
美嬉はハッとなり彪太郎を見つめる。
「くそぉ・・・・・・」
砂にまみれた顔を上げる彪太郎。その姿を見て周囲が大爆笑をする。冴子も腹を抱えて笑っていた。金光も首を振って呆れ顔をしている。
「夏輝君・・・・・・」
美嬉は心苦しそうに胸に手を当て、心配するように彪太郎を見つめていた。