#3
ホームルーム。ひまり小学校の五年二組では、
「おめでとう、夏輝君。よく頑張ったね!」
と、彪太郎に担任教師が賞状を手渡していた。賞状には『漢字検定三級・合格』と表記されている。彪太郎は満面の笑みで元気よく受け取った。
同じチェック柄の制服を着た他の生徒達が拍手を送る。その中央席で一際目立つ美少女、美嬉も微笑んでいた。赤のチェック柄の制服がアイドルのように似合っていて可愛らしい。
「姫野さん・・・・・・」
彪太郎は拍手される中、美嬉を眺めて頬を赤く染めた。そんな彪太郎に背後から、
「なかなかやるじゃん、彪太郎」
と、金光が不敵な笑みを浮かべて彪太郎とすれ違う。
「すごいぞ、金光君。三級合格おめでとう!」
担任教師が金光にも彪太郎と同じ賞状を手渡す。
「えっ!? 金光君も三級⁉」
彪太郎はハッとして振り返る。クールに賞状を受け取る金光が目に映った。
「有難うございます」
『キャーーー‼ 金光ク~~~ン』
クラスの女の子達の黄色い歓声が上がる。にやりとニヒルな微笑を彪太郎に見せる金光。歓
声こそ上げていないが、金光にも笑顔を向ける美嬉を見て彪太郎は苦々しく唇を噛み締めた。
今朝のホームルームが終わり、体操服を着た冴子が美嬉と一緒に教室から出てくる。冴子は美嬉とは違ってショートボブで体育会系といった雰囲気の女の子だ。
「さすが、金光君よねぇ~。ルックスは良いし、頭も、スポーツも万能なのよ?」
「うん。そうだね。金光君もだけど、夏輝君も頑張ってたよね」
「えぇ~? あれは漢字が得意なだけで、スポーツ音痴じゃん。見たでしょ? アイツの走り方。この間の持久走の練習だって・・・・・・アハハハ」
冴子が嘲笑しながら美嬉と靴箱へ向かう。廊下の掲示板には『持久走大会・目指せ、2㎞完走!』と表記してある用紙が貼ってあった。
「もう、冴子ぉ・・・・・・」
「だってぇ・・・・・・プププ。今日も見れるかしらね~」