57 お荷物は、思わぬ時にやって来る
ずるずると引き摺りながら、四叉路の中央広場に戻った。
檻が2つあり、片方がブラックタイガーウルフの子供と7~9才位の女の子だった。
ブラックタイガーウルフは、檻から出して、森へ帰れと追い払ったが、どういう訳かウンクロにくっ付いて離れない。
同じ真っ黒だからか、くっ付いてお座りしながらぺろぺろしている。
女の子は、鼾をかいて寝ていた。
「ぐごおおおーぷすぷすぷすーぐごごごごおーすぴすぴすぴー」
棒で突いて起こした。
「おい、起きろ」
「うーん?、何じゃお主は、何者じゃ名を名乗れ」
「お前が名乗れ、立場解ってんのか。」
「我は、ヨシコ・ブラームス、侯爵令嬢じゃ。この無礼者が」
「ああ、分かった。無礼者は退散するか」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て、な、ちょっと言って見たい時ってあるじゃろ、そう言うお年頃ってあるじゃろ、な、見捨てないでくれ」
「まあ、どうでもいい、国境まで行くからそこまでなら連れて行ってやる」
・
彼女は何か考え込んで喋り出した。
「実はな、我は奴隷なのだ。複雑な事情があるのだが見逃してくれぬか」
「別に構わん、それではさよならだ」
「いや、そうではなくてだな、か弱い女子なのだ。一人では生きられぬ。匿って貰えぬだろうか、何してもよいぞ。我は処女じゃぞ。疼くだろ。ほれほれ」
と泥で浅黒いドロワーズを見せて来た。
俺は、久しぶりにカカトで幼女の頭をゲシゲシしてやろうと思ったが、幼女なのでこめかみを両拳でグリグリしてやった。
「痛、痛、痛、止めよ。止めるのじゃ。頭が割れる。」
・
幼女なので、お仕置きを少し手加減してやったぞ。このエロ幼女。
「・・・・国境へ行かないならこのまま置いていく。それ以外は交渉に応じない。」
俺には、表に出れない事情がある。勇者も追って来てるお尋ね者なのに、お荷物は背負えない。
それにどう見てもストライクゾーンに入らない。5年は待てないわ。
事情も重たそうだし面倒くさい。
(タケオは、カスである。本当はストライクゾーンが一番の理由なのだ)
彼女はしぶしぶ着いて来た。
・
今、ツルハシ帝国との国境へ歩いている。
スギン、ツルハシ両国は現在仲がいい、国境警備も両側で協力して行っているようだ。
これでいいのか?とも思うが、両国とも辺境の国境は、本国の影響は殆どなくどちらかと言うと忘れ去られている存在のようだ。
通信設備も発達しないこの世界では、遠くの親戚より近くの他人と言う感じなのだろう。
・
30kmの道のりを朝から50人をドナドナしながら国境へ歩いて行った。
「すみません。盗賊の討伐をしたのですが、こちらで引き取って貰えるのですよね。」
「ああ、そうだが。あ、こいつは、ゴモンじゃないか。おい、隊長を呼べ!」
直ぐに隊長がやって来た。
「本当だ。ゴモンだな。しかし、神出鬼没の天下の大盗賊ゴモンを捉えるとは、何処にいたのだ。」
「ここから街道を30km行った所の大森林側の3km先に隧道があります。その中を10km進むとアジトがあります。ただ、そこを埋めてしまったので入れませんが、別の場所に入り口はあります」
「信用しない訳ではないのだが、この他にも500人以上いると言う情報があるのでな。連れて行ってくれぬか」
「このまま行くと一日がかりになってしまうので、全ての処理が終わってからでいいですか」
俺たちは、財宝や剣、ヨシコを渡した。
金銀や食料は、使っても分からないので出さない。
袋から、使うと足が付きそうなものを出していき、目録を作って貰った。
目録は、売買する時、盗品でない証明になるので大事だ。
いつの間にか、ツルハシ帝国の警備隊長まで来ていた。
財宝、剣を見ながら、何やら帳面と照合している。
番号を付ける事600を超えた。
この内、20品目に関して、ツルハシ側から買い取りの要請があった。
金額提示などあまり気にせずOKを出そうとしたら、スギン側の隊長がこれはちょっとと交渉してくれた。
遺品については、そのままだが、侯爵家などの所有物は、4割ほど吹っ掛けた。
600品目のうち500品目がツルハシ帝国のものだったが、要請は20だけだった。
それでも、金貨1200枚となった。
剣・防具などの、ツルハシのマークのあるものはツルハシ側に無償で返した。
スギンのマークのあるものもスギン側に無償で返した。
金の受け渡しは、1か月後またここで行う事となった。
ブラックウルフは、森でウンクロと待機している。
のじゃ姫を引き渡そうとしたら、拒否されてしまった。
そこで、ツルハシ帝国の隊長に聞いてみた。
ヨシコ・ブラームスは、亡国サクラン国の侯爵の長女。
母は、サクラン国の王弟の娘で王位継承権があり指名手配されていたが、先日斬首刑になった。
亡国となったのは、十数年前の事だが、時の侯爵と妻と娘は、コスモンス教国の親類の家に逃れていた。侯爵の裏切りにより指名手配の母と娘が先日捕まり、母は、斬首になったが、娘に指名手配は無い。
しかし、当時の継承権者は全て斬首となったため、今となっては、王族の血筋として、彼女が恐らく1位だろう。
最早反撃の力もないし、犯罪者でもないが、この地域にいてツルハシ側としては、碌な事は起きない。
そこで、永久奴隷としてスギンへ送れば、永久追放ではないが問題ないだろうと言う判断で送り出したが、今回の結果となった。
なので、マツキオン側では絶対受け取れないそうだ。
今度は、スギンの隊長に引き取ってくれとお願いしたのだが、永久奴隷は、売買権利証明書が無いと売買できない。
有るのかと聞いて来たので“無かったぞ”と言ったら無理と言われた。
つまり、タケオが唯一の所有権者であり、売買権利証明書が無いのだからタケオ以外は、所有できないという事になる。
目録にもしっかり明記したので奴隷商へ行って所有者の魔法を掛けて貰えと言われた。
何だ、この疫病神みたいな展開は、だいたいヨシコって名前だけで嫌な予感しかしないよな。
・
その後処理も終わったので、
国境付近で野宿し、明日警備隊をアジトへ連れていくこととなった。
野宿はいいが、邪魔者が出来てしまったな。
「ウンクロこいつの面倒を見ろ」
そう言ってヨシコを渡した。
#主、いくら何でも、子守りは酷くないか。さっきからオシッコとうんちの臭いがするぞ。
「お前ウンコしたいなら、して来いよ。」
クリーンの魔法を二度掛けウンクロに渡した。
テントは、別々だ。
ウンクロは、ブラックタイガーウルフと外で寝ていた。
マリオンと俺は二人で寝た。
ヨシコは、一人で寝せた。
翌朝、早朝から警備隊30人を連れ、鍾乳洞へ戻り、お昼に着いた隊員たちは、隧道を隈なく調べた。
死体が300名以上整然と並べられ、首が全部飛んでいた。
「凄い手練れだな。首を全て一太刀だ。こっちは、額を正確に射貫いている。これは、君たちがしたのかい」
「内容は冒険者として話せないが、魔道具だ。こういった隧道なんかに置くと自動的に動くようになっている。本来は、ダンジョンで使うものだ。ただ、使い切りなので、二度は使えないし、終了後消滅してしまう。
とあるダンジョン産なんだが、秘密だ」
・
訝し気に隊長が、“ふーん”と納得しなさげに見ていた。
「みんな、なぜ裸なんだ?」
しまった。裸の言い訳考えてなかった。
俺が暫く黙っているとマリオンが“私の趣味だ”と言って誤魔化した。
マリオンを見て“にへら”としていた隊員たちは、ちょっと後ずさり、青い顔になった。
小声で“あいつィっちゃてるよ。”
”きっと死んでから、脱がされて棒でツンツンされながら「小さいわね」とか言葉責めしてんじゃね-か”
“そう言えば、ゴモン達も裸で縛られてたな”
“生きてる奴は、縛ってからツンツン言葉責めか”
“あんな美人にされてみて―”
「食料とか何もないな。普通は無いと困るだろうに」
「他にもあるのかも知れません。後、隧道の各所を埋めてしまったので、そこに在ったかは分かりません。」
近頃、誤魔化し名人の称号が付きそうだ。
尻尾を出しそうになって来たので、そろそろ帰りますと言ってその場を後にした。
隊長からご苦労様と挨拶され、分かれた。
警備隊は、明日の朝まで調査し帰るそうだ。
・・・警備隊・・・
「この切り口見たか」
隊で剣の一番の使い手が冷や汗を掻きながら見ていた。
「隊長、これは人間業では在りませんよ。どんな達人だって柔らかい血管は、真っ直ぐ切れません。それこそ伝説の剣士タケンゾくらいしか思い浮かびませんよ。」
「そういえば、あいつも背中に木刀背負ってなかったか、タケンゾは、木刀でオリハルコンを真っ二つに切った。それも切った面は、一切の乱れも無かったと言う伝説があったな」
二人は結論を出した。
「これは、魔道具の件、本当じゃないですかね。十代の子がそんな研鑽を積める訳ないですし、タケンゾだって40代になってからだって書いてありましたし。」
「だとしたら、凄い魔道具だな。ダンジョン産と言っていたが、きっとダンジョンのその一層の全ての魔物の首を飛ばしたり、額を寸部の狂いもなく射貫くのだろうな。消滅しなきゃ神話級アーティファクトだろう。まあ、だから一回ぽっきりなのかも知れん。ずっと存在したらダンジョンなど何処でもクリア出来そうだ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
途中から大森林に入り、ウンクロと合流した。
先ず、ヨシコをガード丸で“プス”っとして気絶させ、絨毯を出して一路シャプリンの街へ戻った。
戻って直ぐ、奴隷商に行き、ヨシコを奴隷登録した。
とにかく言う事を絶対に聞くようにしないと危なくて秘密基地に連れていけない。
一回目で大収穫だ。
盗賊退治は、病み付きになりそうだ。




