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43 ぼっちのマリオン


宿の前に膝小僧を抱えた大きい女の子が下を向いて座っていた。

隣には小さな布袋が置かれていた。


「どうした、こんな所に座って」


「ああ、タケオか、宿を追い出された」

俺は徐にマリオンの横に座った。


「今回タケオに貰ったお金で10日分のつけを払ったんだが、いつ払うかわからん奴は出ていけと言われてな。すまんタケオお前はここに泊まれ、私は出ていく」

今の俺に、オリオンの言葉は全く聞こえない。

なぜなら、膝を抱えて防具が浮き上がった胸に前を見ながら180を超える角度の横目で一点をレーザービーム並の眼力を全集中の構えで凝視しているからだ。。


ちょっと陰になって解りにくいが、ピンキーなちょっと大きめな小豆が見えるではないか。

浅黒い肌にそこだけ色が違う。これはこれでありだわ。


思えば今まで、胸を肩に担いでいた婆さんは論外だが、母親の吸い尽くした黒茶豆しか見たことが無い。

それは、数歳の子のぺったんこ胸は見たことあるが、適齢期は、34+15の俺は生まれて初めて見たのだ。


―――生きてて良かった―――


目から血の涙が出ていた。

(横目で見すぎだよ。目尻切れてんぞ童貞野郎、あと普通の女の子は分かるからな、いやらし目線)

徐にマリオンは起ち上ろうとした。俺は左手をがしっと掴み座らせた。

俺立てないし、いや既に立ってて、起ち上れない。


「行くところはあるのか?」

別にもう一度見たいから座らせたとかじゃないよ。絶対違うよ。本当だよ。針千本飲んじゃうよ。あれ、噓だったら飲むのに先飲んじゃうの。

ち、超天使のラッキー角度がズレてる。


「・・・・・ぃゃ・・・・・」


「じゃあ、新しい宿探しに行くか。あ、ちょっと腰が痛いな」

俺は、この緊急事態に前かがみになりながら立ち上がった。

もうぎりぎりの攻防だ。

しかしあの映像は永久保存版だ、できればもう2,3カット上下に欲しかったが仕方ない何度も反芻し焼き付けなければならない。

ああ、もう俺の下半身は緑色になって爆発しそうだ。


「肩を貸そう」

え、肩かしてくれるの。お前の方が背が高いんだぞ、腰が伸びちゃうだろ。

中で擦れちゃうよ。上下に! 

三歩進んだ。俺は心の奥の奥で小さく叫んだ。

ぁ。ぁ。ぁ₋₋₋₋ 


―――大賢者は、イカの臭いとともに現れる。――――――


俺は速攻でクリーンをかけた。

「いやあ、待たせたマリオン、腰は大丈夫だ。こっちに行けばいいのか」


「え?腰はいいの?なんかちょっとイカの腐った臭いが」

俺はマリオンの手を握り強引に道を歩き出しその場を離れた。

マリオンは、赤い顔をしながら、手をちょっとだけ握り返してきた。


しばらく歩くと、四葉のクローバーのマークの宿屋があった。緑色の壁で明るそうな雰囲気の宿屋だった。一階は食堂になっている感じのいい店だった。


「すみません。ここ泊まれますか」

奥からちょっとたれ目で可愛い20代後半から30代前半くらいの奥さんが出て来た。

ちょっとふくよかで愛嬌がありそうな人だった。


「あらあ、お二人?」

俺たちが手を繋いでいるのをじーと見ている。マリオンは手を振り解こうとするが俺ががっちり握ってやった。

あんな悲しそうな顔されたら勇気づけたくなるよ。

マリオンは、真っ赤な茹でダコみたいになっていた。浅黒いのに。


「1人部屋2つで、おいくらですか」

奥さんは急に怒った顔になった。

「うち、2人1部屋しか空いてないわよ。2人で銀貨1枚でいいわ ニブチン」

何か怖い。

「マリオン空いてないみたいだから次行こうか」

俺は焦らない。ここで強引に迫り、ここまで来たのに振り出しに戻る訳にはいかない。あくまで紳士的に-急がば回ってまぐわっち-である。


「いえ、ここでお願いします」

マリオンは俺の手をぎゅっと握ってきた。

「タケオさんお金は大事です。ここは、破格のお値段ですよ。ここにしましょう」

そんなことしたら、何もしなくても朝チュンだよ。ワンチャンどころかいつでもチャンスの大安売りだよ。

「マリオンがいいなら、反対なんてあり得ないよ」

奥さんがマリオンにパチンとウインクしていた。

マリオンがもう湯気が出そうな真っ赤な顔になった。浅黒いのに。


こ、こ、これは、ひょっとして親父が良く嵌っていたハニトラか?

そういえばここに来る前、宿屋を追い出されたのはわざとか?ここに誘導し、奥さんが黒いボンテージを纏って、鶏並の持続力を笑いながら、“3歩でお終い?“なんて言葉責めにしながら、鞭で叩かれ、鍛えられちゃうのか?


ああ、鍛えられたい。

親父がハニトラ大好きなのが分かってきた。


いやいや、あの真面目なマリオンがそんな超高度な事を考えるはずがない。


本当に貧乏そうだし、ここは、お金の為と考えるのが妥当だろう。

危ない危ない、もう少しで押し倒してダイブしそうだった。


一階で簡単に夕食を食べた。

我らは二階の一番、日当たりのいい部屋が与えられた。

「体を拭くなら外に出ようか」

と言ったら、これしかないからいいと言われた。


今までじろじろ見るのも悪いなと思って部分的な所しか見ていなかったが、彼女の鎧は、はっきり言って役に立っていない。胸当てなど何度も切られ、糸で縫って繋ぎ合わせているだけだ。肩で担がれた時もよれよれだったのでそのままの柔らかい感触があった。

子供の時、飲み屋に来ていた女性冒険者の胸当ては、頬に穴が開きそうなほど硬かった。

ハーフパンツのスパッツは穴だらけでフィットもしていない。


彼女が話を聞いてくれと言いポツリポツリと話し始めた。


「私の母は、元々王都の娼館にいた女だ。父親は知らない。

ただ、毎月仕送りが送られ、それで食べて来た。一度も見たことは無いが、恐らくそれが父親だったのだろう。

8~11才のころは、母親と安酒場の二階に住んでいた。

偶に母親が客をとることもあり、クローゼットの中に隠れていた事も多々ある。

私は、小さい時から身長が大きかった。

9才位になると安酒場の酔っ払いが私の尻や胸を触ってきたりしてくる。

母親は、減るもんじゃないんだから、早く慣れろと言ってきた。

私は嫌だった。早くここから逃げ出したかったが、お金が稼げない。

10才位になると寝ている間に3人ぐらいで押さえつけて上に乗ってきた。

体は大きくとも成人の男性を押しのける力はない。必死になって逃げたが振り解けない。

しかし男性には唯一の弱点がある。

股間を思いっきり蹴ったら泡を吹いて倒れた。それからも何度も何度も襲われた。どんなに私を殴り足を押えても最終的には急所を晒す。膝でも肘でも腰の骨の捻りだけでも急所を狙えるようになった。

気配遮断、気配察知は、その時覚え、出来るだけ逃げる事はできたが、全ては躱せない。


そんなある時、抑え込んでいる一人が母親が混じっていることに気付いた。

この時、最早ここに入れないと思い孤児院に逃げた。11才だった。

それまで、操を守れていたのは、酔っ払いの戯言だったのか、私を見たら汚い、がりがりのっぽで気持ちが失せたからだと思う。本気で何回も来られたら数回はされててもおかしくはない。だって母親が向こうの味方だから。


孤児院では、十分な食事とは言わないが食べていけた。

ただ、体が大きいので、成人を超えたものに食事を与えていると陰口を言われるようになり、針の筵となった。

そんな時、神父が私を疑って鑑定をしたら、マリオン、12才、剣聖だと解かった。

剣聖は、国が保護し戦場で武勲を立てれば貴族にだってなる。

私は知っていたが、神父は隠し、剣士だと説明した。

私を勝手に剣士として冒険者に登録したのも神父だ。私は年齢が満たないので15才まで見習い冒険者として、街に放り出された。

場末の卑しい私が華々しい所に行くのが許せなかったのだろう。


私が場末の卑しい生まれなのは、みんな知っている。

何度かパーティーを組んだこともある。

だいたい、ダンジョンに行くと襲ってくる。お前はどこでも股を開く売女だと蔑んで乗ってくるから条件反射で股間にお見舞いする事になる。

薬草採取やどぶさらいなど生活はいつもギリギリだった。


15才に成り冒険者になれたので、流れてこの街に来たのだが、王都での私を知っている奴はどこにでもいる。噂は尾ひれ背びれが沢山ついてくる。

いつの間にか、クラッシャーとの渾名が付いていることに気づいた。

私は、気に入らなければ必ず玉を潰す女なんだそうだ。潰された男は数知れず、5才時から90才のお爺ちゃんでも容赦しない。楽しい家族計画を潰された家庭は100ではきかないそうだ。

だいたいそんなことしたら捕まっていると思うのだが。

なので、誰もパーティーは組んでくれない。私は、拾った錆びた剣しか使ったことがないし剣聖でありながら剣術も知らない。だからレベル5だ。

宿屋も安い雑魚寝部屋にすると襲ってくる奴がいる。ほとんど寝れないんだ。森の方が安全だが、魔物に襲われ怪我もする。一人部屋の宿に泊まって療養したい。

だが金はない。

これが、17才 万年 F級 冒険者 の私だ。


それから、受付の子がタケオに突っかかって行ったのは私のせいだ。彼氏が執拗い彼女と別れたかったが、結婚を迫ってきたので、私に股間を潰され結婚できないと理由をでっちあげ、隣町で暮らしているそうだ。当然嘘だが卑しい私なら無視されるから反論しないのを皆知っている。だから成り立ってしまう。

他にもきっと知らないうちに使われているかも知れない。


この頃もうどうでも良くなって、宿代も払えないし、森でそのまま食われようかとふらふらしていたらハイオークに襲われたんだ。

あいつら、女だと解り苗床にする気で襲ってきた。今まで男とそんな関係になるのを嫌って来たのに最初で最後がオークってあまりにも寂しい。

思わず股間を強打したら、切られたって言うのが朝の話だ。


今まで人と関わることをなるべくしなかったが最後に煙が見えたので、どうにか逃げるように頑張って伝えたかった。


そしてタケオと会った。

たった一日だが、タケオと会って楽しくて嬉しくて。

17年間誰かと一緒に楽しく過ごしたことはない。

この一日がどれほど楽しかったか、貧血で倒れそうだったが、必死になって街を歩いた。

綺麗なんて言われたのは、初めてだ。

きっとこれが最初で最後だと思う。もう嘘でもなんだっていい。この夢が覚めないで欲しい。きっとタケオはこれで居なくなるだろうけど、タケオに嘘はつかない。」


こいつの魂は卵の殻の内側にある膜ほどではないか。きっと輪廻など出来ずに消滅するだろうな。

だって、地球にいた俺よりぼっちだぞ。

何で俺の周りはぼっちだらけなんだ。あ、ラックは違うな。でもあいつもきっと世界で1匹だ。


こんな奴、一回やって”はいさよなら”なんて出来ないよ。

そんなことしたら自分で自分に唾吐いてるのと同じだ。


ちょっとこの街きて、いきなり重たいな。

でも、それを背負うのも生きてる感じがする。


こんな出会いもあるのかあ。


でも、きっと、絶対、するぞ。

(そこはぶれないタケオだった)


いつの間にか、マリオンは寝ていた。

マリオンをベットに寝かしつけた。


夜は未だ始まったばかりだ。

俺は、ダンジョン産の認識疎外のマントを羽織り、窓から外に出た。

ウソックの入っている路地の突き当りに来た。

蓋を開けると、5人全員居た。唸って煩いので、ヨイショ子に魂をプスッとして貰った。

5人とも痙攣している。

防具を外し、服をはぎ取り、綺麗にクリーンをかけた。

サイに運搬のスキルで運んでもらった。

闇の防具屋に卸したら金貨3枚になった。意外と儲かるな。

スラムに入るとわらわらと人が湧いてきた。なるべく排水溝に近づいてから服をばら蒔いた。“新品だ”と言いながら取り合いしている。新品じゃないよ。

人が一人入れるかの穴が見えて来た。運搬から5人を立てにして移動Bで穴を潜った。

また運搬に戻して森へ行った。真っ裸の5人を並べて置いてきた。

ゴミは、ちゃんと捨てないとね。

だいたい、こんな弱いくせにC級冒険者を騙るとは、絶対ドラゴン倒せないよな。まあ地域によっては、ギルドへの貢献(御寄進)でC級に成る事も出来るらしいが。


宿に速攻で戻った。


起きないように、そーっと背中から入り、マリオンを抱き締めながら眠りについた。

パオ―ンして寝られないかと思ったが、俺と同類の匂いを感じる。


俺を信じてくれるだけでありがたい。俺の方が安心して寝られるよ。

いつか俺の事も話せる時が来るといいな。

やれやれ、モテモテ王はちょっと無理かも。



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