41 ようこそシャプリンの街へ
ちょっと寝坊した。10時頃だろうか。
野営は、やはり疲れが残る。
言い忘れたが、こちらの世界の時間は、日本と同じ24時間
1年は365日 この地域の四季は緩やかで、さほど暑くも寒くもない。
何時もの様に亜空間から水を出し、顔を洗った。お湯を沸かし、茶もどきを飲み、ヘアカラの屋台で買った肉パンを食べた。
・
何かがこちらに迫ってくる。100mくらいになる。段々動きが遅くなってきている。
周りを片付け、そちらに走り出した。
そこには、腹を切られ,腸がはみ出しそうになるのを右手で押さえながらよたよたと歩く冒険者がいた。
「大丈夫か?・・・大丈夫そうじゃないな」
駆け寄って、抱きかかえたが息も絶え絶えだ。
肩ではーはー息をしながら
「ハイオークが10匹向かってくる。私を捨てて逃げろ」
顔は、泥で真っ黒、皮鎧もドロドロだった。
良―く見ると、身長180、スラっとしながらDカップの黒髪浅黒の野生児みたいだ。
外人モデルの様な容姿にビキニアーマーは最早フィギアか。
自分が身動きできないのに俺に逃げろなんて男前だな。
俺は、クリーンを唱え、体を綺麗にした。傷口に水を大量にかけ、もう一度クリーンをかけ、掌を腹に宛て、ハイヒールを唱えた。
この世界の人は、簡単にヒールかけてるけど感染症などあるからクリーンは、必須だよ。
手の平を退けると綺麗な御へそが現れた。傷は残っていないようだ。
ん?、お腹だけ真っ白になったぞ。
日焼けで黒いと再生部分は元の色になるのか。
やっぱり戦闘が絡むと童貞暴走は起きないようだ。
「お前、ハイオークが迫ってきてるんだぞ。早く逃げよう」
起ち上ろうとするが、血が足りないのだろう起き上がれない。
俺は、普段からこういうシチュエーションも考え、シュミレーションして来た。
ついに、成果をお披露目する時が来たのだ。
まあ、美人ではないが、初めての女性だ。この辺から始めるのもありだな。
「お嬢さん、ご心配せずとも大丈夫です。私はあなたを守るナイト必ず愛する姫をお守り致します。」
と片膝ををついて頭を垂れた。
「お前、何言ってんだ。人の話を聞いているのか、・・・初めて会ったのに愛する姫・・」ちょっと赤くなる彼女。
ふふ、正解だったようだな。34+15童貞なめんなよ。
どれだけシュミレーションしたことかリア充にはわかるまい。
ガサガサ、茂みの中からハイオークが現れた。
半分は、体格に合わない鎧を纏い、錆びた剣を持っている。
冒険者から奪ったものだろう。
後は、アックス・棍棒・一人槍を持ってるな。
もう勝ったつもりなのだろうか、剣や斧など担いでこちらに迫ってきた。
接敵7m、ゆっくり彼女を地面に寝かせ、立ち上がり背中に背負った木刀を右手に握る。接敵3m、10匹の間を一瞬に移動し、彼女の前に戻った。
ハイオークは、笑った顔のまま頭が横にコロンと落ちた。
血が真上にブシュウと噴水の様に噴き出しながら後ろに倒れた。
「え、何?どうなったの?ハイオークは?」
ちょっと混乱しているようだ。彼女にカッコよく見せるため、スローモーションの動きで、でもオークには視認できない程度のスピードで倒した。
首を刎ねるたび、彼女へ振り返り笑顔付Vサインを忘れずアピールも入れた。プラス10点だ。
「これ、あなたが倒したの?全く見えなかった」
しまった。彼女は貧血で意識が朦朧としていたのを忘れていた。
あんなに遅い動きでも見えないなんて相当血を流したようだ。
やはり躱しながら切った方がカッコ良かったか、でも血しぶき浴びるしなあ。
今後の課題がてんこ盛りに残ってしまった。
しかし、このオーク捨てるのもったいないな。見ている前で収納にしまえないし。
「このオーク持って帰ります?」
「いえ、あなたが倒したオークは貰えないわ」
あ、いいこと考えた。
「では、向こうに荷車を置いていますので、積んでいきましょう」
そう言って、少し奥に行って中くらいの10匹てんこ盛りにすれば乗りそうな馬車を収納から取り出した。
荷車は、冒険者を始める時のため、偽装用に大、中、小を用意してある。
後、椅子の足を切り、荷車の前の方に括り付けた。
ハイオークを後ろの荷台に乗せ縄で縛った。
彼女をお姫様抱っこし、椅子に座らせた。
お触りはしないよ。ここで焦ってワンチャン逃しはしない。
椅子にはクッションが付いている。
完璧だ。
見えない様に収納から水筒とシチュウを出した。
湯冷ましは無かったので、水筒を渡した。
貧血気味なのでヘアカラで買った味の薄いホーンラビットのシチュウを渡すと一気に食べていた。結構丈夫そうだ。
そのまま、街へゴロゴロと行くことになった。
「ありがとう。本当に助かった。君が来なければあのまま食われていた
礼を言う。私は、マリオンだ。冒険者をしている。」
「俺は、タケオ商人だ。シャプリンで冒険者になって生計を立てようと思っている」
「え?商人、剣士じゃないの。それも達人級でしょ」
「いや、きっと貧血でそんな風に見えたんですよ」
「そう、でも ひ、ひ、姫とか・・・騎士とか剣士なんじゃないかと」
顔がちょっと真っ赤になった。
なんかチョロイン臭がするな。
「いえいえ、貴方を見たら誰だってナイトになりたいと思いますよ」
完璧だ、ここまでは、予習済み。
・・・私、男の人にこんな事言われたことないわ・・
・・・この人だって、街に行って私の事知ったらきっと話もしてくれなくなるよね・・・
彼女はその後、余り喋らなくなった。
・
・
街の塀は、約5m 大森林に近い街は塀が高い。これでも低い方だ。
門に辿り着くと、門番が俺を見ず、マリオンを見て
「うお」っと言いながら股間を押さえた。
マリオンは、お色気たっぷりお姉さんとは思えないが?
ストライクゾーンがズレてるのか?
「こんにちは、ここは初めてですが通ってよろしいですか。」
「あ、ああ、通行証が無ければ、銀貨1枚だ。早く通れ」
なんか焦ってるような。何だろうか
銀貨1枚を渡し中に入った。
マリオンは顔パスと言うか、門番目も合わせなかったぞ。
「あ、ようこそシャプリンの街へ」
取り敢えず、マリオンに冒険者ギルドへ連れて行って貰った。
荷車は、ギルドの解体場に預け、査定をお願いした。
ギルドに入ると、皆マリオンを見ると男は必ず股間を押さえた。
やっぱりこっちの人はストライクゾーンが違うようだな。
今は昼なので冒険者は少ない。
「ようこそ、シャプリン冒険者ギルドへ、ご用件は何でしょうか。」
「冒険者登録したいのですが手続きお願いします」
「それでは、こちらの登録用紙をお書きください。なるべく多くの項目をご記入いただくことをお勧めします。技量を元にパーティーへの斡旋も行っています。」
当然必須事項しか記入しない。
記入した項目は、
1.名前 タケオ
2.年齢 15
3.ジョブ 商人
である。
「それでは、この球の上に手を乗せてください。」
そして、名前、ジョブ、レベルが表示された。
1.名前 タケオ
2.年齢 15
3.ジョブ 商人
4.レベル 10
5.罪歴なし
ジョブは、偽装だ。だって“人”って説明できないよ。
「商人 レベ10?」
「冒険者の詳しい説明は必要ですか?」
「いえ、だいたいで結構です。G級見習いスタートでGランク依頼3か月で十件で最低Fランク昇格か、達成できなければ1年間資格停止でいいんですよね」
「はい、その通りです。1ランク上まで依頼は受けられます。その場合はポイント2倍になります。常時依頼は、終了してから結果を報告いただくだけで結構です。依頼にはランクが付いていますので必ずご確認下さい。
魔物の討伐は、解体場に直接卸していただき、結果票をこちらに回してください。依頼でなくとも支払いは、こちらで行います。
冒険者は自己責任です。無理は禁物です。
荷物持ちなどの応援依頼ならば直ぐ出せますがいかがですか」
「結構です。それからこれ結果票です」
「これハイオークですが、貴方ではちょっと無理でしょう。どうしたんですか」
「自分で狩りましたが、ハイオークですよ。ドラゴンでも無いのに」
「え、普通、無理でしょう。ハイオーク10匹なんて商人レベ10なんて不可能です。盗難の可能性がありますので調査します。」
そこにマリオンが進み出た。
「一緒だったので、私が、彼が倒したことを証言します。」
「クラッシャー出しゃばるんじゃないわよ。あなたが男と一緒何てそっちの方が嘘くさいわ!」
クラッシャー?何だ?
「私が、そのハイオークに殺されそうになっていたのを助けて貰ったのよ。恩人の事で引き下がる訳にはいかないわ」
そこに、聞き耳を立てていた胡散臭そうな冒険者が現れた。ここは、鉄板だ。
「俺はC級冒険者ウソックだ。小僧、俺のハイオーク盗んだのお前だな。今すぐ返すなら許してやるが、言い張るなら衛兵を呼ぶぞ。お前この街初めてだろここで人生終わりたいか」
彼は、C級冒険者のウソック。初心者をカモにする質の悪い奴だ。
当然そんな事は知らないタケオだが、この手の類はお掃除時代おなじみの話である。
冒険者ギルド、冒険者、トラブル対応など情報収集は完ぺきだ
「やっぱり盗んだんじゃない。マリオンもただじゃ済まさないわよ」
少し落ち着いて、
「コホン、まず、ここに持ってきたのは、私だという事は、門番、解体場の方に聞けば証明できます。次にあなたが倒したのなら、どこをどう倒したか教えて頂けますか?
そしてどの場所だったか説明できますか。当然血や足跡など全て残っているはずだから、現場検証すれば10匹もいるんですからわかりますね。どうぞお話しください」
・
「・・・お前この街歩けなくなるぞ。忘れねえからな」
敵わないと思ったのか、飛び出していった。
「受付のお嬢さん、何の証拠もなく、一方的に有利な条件の方を正とするのは、最も受付がやってはいけない行為と教育を受けているはずです。
物理的な証拠と結果を重視し、公正に判断することですよね。
相手のレベルやジョブなどの個人情報を漏らす行為は、生死の問題になることから絶対に周りに話してはいけないと教わっているはずですよ。
また、貴方は、私を盗人呼ばわりしましたよね。マリオンが証言しているにも拘らず、ですよ。私が衛兵に貴方が冒険者ウソック?と組んで私のものを盗ろうとお話ししたらどうしますか。
あなたは、先ほど冒険者は、自己責任と言いましたよね。あなたの一言で死んだり、牢屋にいるものもいるかも知れませんよ。
もう少し花形の受付嬢として自覚を持って対応してください。」
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受付嬢は、しゅんとして下を向いたまま、泣き出してしまった。
ちょっとやり過ぎたか?
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二階から中年の渋オジが現れた。
「まあ、まあ、君その辺でうちの受付嬢を許してくれないかな。わたしの教育不足なのを詫びよう。君はギルドに詳しいようだね。その辺も含めてお茶でもどうだい。あ。私はこのギルドの長をしているヤコブと言うお見知りおきを」
「いや、結構です。ギルド長は、B級冒険者以上の強制招集、依頼の結果にともなう重大な問題などB級以外に呼び出しをすることは出来ないとあります。
だいたい、罠だって魔物は殺せるのにたかがハイオークくらいに驚くのが全く理解できません」
「君ね、先ほど、君の持ってきたハイオークを見て来たから聞きたいんだが、首をあの切り口で倒せるものは、この国の剣聖でも無理だよ。どんな剣士でも剣に厚みがある以上、首の中にある血管など曲がって切れるものだ。文献で呼んだことのある大昔の大剣豪タケンゾは、木刀で一切の乱れなく首を切ったと言う。そのレベルだよ。そりゃー聞きたくもなるでしょ。」
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「あー、それは、企業秘密で。もうその魔道具壊れちゃったんで使えないから
ああー、それとその魔道具捨てちゃったんでないですから」
うまく誤魔化せたかな。
「早く支払いしてください。受付のお嬢さんすみません。ちょっと言い過ぎました。訴える気はないですから安心してください。今後は仲良くしたいので、凄くかわいいなと思ってます」
ちょっとでも好感度を上げたいタケオだったが、きっと効果は無い。
受付嬢は、ささっと用意した。ハイオークは、銀貨3枚なので金貨3枚になった。
目を真っ赤に腫らしながら、金貨3枚とG級冒険者証を渡してきた。
俺とマリオンは、そそくさと冒険者ギルドを後にしたのだった。




