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39 大勇者そしてスギン王国へ


途中補給の買い物も終わり、この街を出るため、門の方へ歩いていると、

“わいわいがやがや”する喧騒の中「うもももーもうー」と音がして来た。

牛追い祭りが始まるようだ。


壇上には、金ぴか鎧の痛い人がこちらを指差している。

「xckろphb!―――殺してやT、。・@おn」

ちょっと物騒なような、周りが煩くて何言ってるか遠過ぎて分からない。


領主が焦って、おろおろしながら

「始め―」と叫んでいるのが聞こえた。

“パパラパーパパパーパーパー”とラッパの音が聞こえた。

「ど・どど・どどどどーーー」

牛が一斉に街中に放たれた。皆が必死に逃げ回る。

若い男たちが、角で捲し上げられ宙を舞う。

“ヒャッホウーーー”とか聞こえる。


そう、街中で暴走する牛を躱したり、偶にど突かれるMな人のお祭りなのだ。毎年1,2人死人が出る。いったい何が楽しいのか理解に苦しむ。


街の出口までもう少しの所で、金ぴか鎧の痛い人が牛を引き連れこちらに来るのが見えた。大変迷惑な奴だ。

こっち来るんじゃないよ。まったく!

どんなにHP有ったって、耐久力5万あったって、角で突かれれば痛いんだよ。


「“どどど、どーー”殺してや“ウモーーーー”」

牛のどどどどー、ウモーという声でよく聞き取れなかった。


あ、ど突かれた。

――ドゴーン!グシャグシャ・バキバキバキバキ――プチッ―


あーあ、言わんこっちゃない。牛が金ぴか鎧の人をふみふみしている。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

遠くから、手を合わせて、南無・南無しといてやった。

丈夫そうだし大丈夫、絆創膏貼って貰えば良くなるよ。ドンマイ


俺は、牛が追いつきそうだったので、足早に街を出た。


あの人は何だったんだろう。痛そうな人なので、お近づきにはなりたくないが。


Byばい、ヘアカラの街。

さあ、次は目的地 スギン王国 シャプリンだ。


・・・・・・・・・勇者SIDE・・・・・・・・・


厄災の日から5年、何もなく穏やかな日々が続いている。

人気維持のため仕方なく、各国に出向きイベントなどの催し物のマスコットとして呼び出されている。

結構、過密スケジュールだ。


昨日はサンドラ連合国主催のミスサンドラ美人コンテストの審査員として参加した。

明日の午後には、マツキオン王国のヘアカラで牛追い祭りの盛り上げ役として参加することになっている。

コンテストの後、直ぐここを発つ予定だったのだが、参加者が美人ぞろいだったので、連れ込んで、つまみ食いをしてしまった。気持ち良かったので悔いはない。


発ったのは真夜中になってしまった。


超特急馬車で寝ながらヘアカラを目指した。街に着くころに異変が起きた。

ウトウトしながら船を漕いでいたが、野太い指が現れ、“殺るんだジョー、殺るんだジョー”、とおやっさんの声でヘアカラの街を指した。

最初ヘアカラを滅ぼせと言う意味かと思ったが、城内に入ると指が右斜め前方向を示した。だが馬車は、領主邸の方へ行き、止まった。


領主が、イベント開催の謝辞を述べている。

何とか間に合ったのは良かったのだが、

頭が割れそうだ。今すぐしないといけない焦りに変わっていく。

我慢が出来ず、領主を押しのけ、壇上から見まわした。

ゴツイ指が真っ直ぐ前を指している。

ただ、指がデカい。見ている先に指が映るのだが、指している指がデカすぎて相手が見えない。この指、気合入り過ぎだろ。

頭の中でおやっさんが“殺れ、殺れ、殺るんだジョー、殺るんだジョー”と急かしてくる。段々興奮してきた。俺は思わず叫んでしまった。


「お前―、動くな!殺してやる。殺してやる!」


領主は困った。勇者はイってる奴だ。

こうなったら即始めて誤魔化してしまおうと。

「牛追い祭り、始め!」

“パパラパーパパパーパーパー”

「ど・どど・どどどどーーー」

牛が一斉に街中に放たれた。

勇者は、壇上を飛び降り、誰だか分からないが、指の指す方へ駆け出した。

映っている指が視界の半分以上を覆っているので、下も見にくく、速く走れない。

恐らく、きっと、何となく、近くまで来たはずだ。

後ろから牛が追いついて来るのを感じ振り返ったが、リアルにささくれだった爪に黒い垢が溜まった大きな指がこっちを向いている。最早、牛など写っていない。

前を向きつつ叫んだ。


「お前―、動くな!殺してやる。殺してやる!ミンチにしてやる!」

“ウモーー”“どどどーどー”


ドゴーン!

角が勇者に刺さった。真上に吹き飛ばされ、宙を舞った。

重力は、偉大だ。牛の群れに吸い込まれるように勇者は消えた。

中からは、―――グシャグシャ・バキバキバキバキ――プチッ―

「がああ、痛、痛、痛、痛、此れしき勇者を舐めるな、痛、痛、

あ、“ぷち”」

勇者は気を失った。

牛は、既に別の方へ走って行ってしまった。


暫くして、パーティーメンバーの聖女たちが走ってきた。

「はあ、はあ、はあ、何で急に走り出すのよ。全く何考えてるんだか」

「全身、蹄の跡だらけね。」


「しかし、痛いだろうけど、大勇者が牛ごときに気絶させられるなんて考えられないことですわ」


「ん?、社会の窓が開いて、茶色いせんべいが出てるわよ。それも大判焼き?」

「これ、お稲荷さんじゃない?」


「まさか、だって大判焼きですよ大判焼き。ここまで広がるんですかね」

皆は、まじまじとまじまじと観察した。

「何度も何度も踏まれたようね。」

「やっぱり、どんなに体を鍛えても、ここだけは、別の意味でしか鍛えられないのかしら」ね。」


「しかし、伸びるもんやな。男の子の神秘やねー」


「マリア治せる?」

「あらあら、取り敢えず宿をお借りして大事に治療しましょう。

正しく直さないと、同性のお友達になっちゃうかも」

それから一昼夜、マリア渾身の治療が行われた。

いかな大聖女でもせんべい状態(大判)になってしまっては、ほぼ欠損と言っていい。

デリケートな部分なので、ショックを与えれば不能になる危険性もあるのだ。

優しーく、優しーく撫で撫でしながら、少しずーつ、少しずーつ、ふーふーしながら膨らましていった。

エクストラヒールを連発した大聖女は、ぐったりして寝込んでしまった。

大聖女の治療の甲斐あってか、勇者ジョーは、暫くすると目を覚ました。

「ウーン、ここは・・・」

「大丈夫ですわ、牛に踏まれて気絶してしまったのです。マリアが懸命に治療致しましたの、お加減はどうかしら」


勇者は未だかつてない程の漲るパワーを感じた。


取り敢えず、シッカロール、ミルン、ミリイに試運転をして見た。

3人は1時間でノックダウンとなった。


「大きいヤシの実が2つ・・・振り子になって大きな起動が・・」

「白いココナッツミルクの入った大きいヤシの実が・・・・ぽよよん・・」

と言って寝てしまった。

こいつら、良く寝るな。安眠はいい事だ。


パワーアップした勇者は、街を歩いた。

最早、大勇者のオーラなど必要ない。海が割れるように道が開く。


人々は彼を知らなくても、口々にこう呼ぶ。

「勇者だ、あれは、大勇者だ。大勇者が歩くぞ」


その後ジョーは、世界に知れ渡る。人気取りなど必要なくなった。


魔除けなのか商売繁盛なのか彼のキーホルダーがバカ売れなのだ。

この世界の夫婦は必ず持っている。安産祈願、子宝成就なのか良く分からない。

剛の者は、等身大の焼き物まで作って家の前に置いている。


彼には愛称が付いている。

「大勇者たぬ君」爆誕である。

最早誰もお漏らし勇者などと蔑むものはいない。


踏まれても、踏まれても、ただでは起きない。不屈の勇者だ。


下半身は、名実ともに大勇者になったが、困った問題が起きてしまった。


歩きにくいのだ。

ズボンもパンツも特注でないと履けなくなった。


戦闘の時が困る。

フェイントしようにも下がプルンプルンして行動が前もって読まれてしまう。走るも歩くも前が邪魔で機動力が上がらないし、急所が大きな的になってしまう。


しかし、どうゆう訳かゴブリン・オーク・オーガの雄は、2,3歩後ずさる。

殆ど逃げるのだが、両手両膝をついて戦闘を放棄する奴までいる。


また、分からないのが、ゴブリン・オーク・オーガの雌だ。普段は表に出てこないのに集団で俺だけを襲ってくる。

大聖女のホーリーウォール(巨人族の一撃に耐える)をオーガの雌は一撃で粉砕していた。目が血走って凄い怖い。何度撤退したか分からない。

街中では、俺はお持ち帰りなど絶対しなくなった。


とにかく、酒を飲んだ時、絶対窓を開けられない。

酒場で一人で飲んでいると、いつの間にか騒いでいた男たちは、居なくなる。

ほろ酔い加減になると、代わりに何処からともなく虫が湧くように女が集まる。おむつをした子から90才のお婆ちゃんだろうと集まってくる。

ふーふーふーと物凄い鼻息が聞こえる。

うちのパーティーが飛び込んできて睨み合いながら撤退できたから良かったが、赤ちゃんまで来てしまうと戦うことは出来ない。


宿屋に泊まった時、酒を勧められ、暑かったので、ドアと窓を開けて寝てしまった時があった。

ドアから店主のおばちゃんが物凄い勢いで突進してきた。“ぷぎーー”

すかさず、シッカロール・マリア・ミルンが対応し勢いを受け止めたが、1mほどズズズと引き下がった。押され気味だ。


窓から昼間会った90才の腰の曲がったお婆ちゃんが“シャーー”と言いながら飛んできた。腰もピーンとしていて、長―く伸びきった胸を肩に担いで歯を剝き出しにして俺に向かってきた。

ミリイが即対応したが、暗殺者の蹴りを軽々と躱し、三角蹴りがミリイの肩を襲った。く、と言いながらギリギリで受け止めたが、一進一退だ。

数分後何とか撃退し、ドアを締め、窓を閉めて目貼りまでした。

窓の外を見るとふーふーふーと鼻息の荒い集団の目だけが赤く見えるのが怖かった。だんだん波が引くようにいなくなった。

ギリギリだった。凄い恐怖だったので、賢者に分析してもらった。


シッカロール曰く、ジョーは、酒を飲んだ時、フェロモンが1万倍になる。

耐性のない女性が100m以内で嗅ぐと耐えきれず魔獣化してしまう。

その時の能力は、魔物で言えば最低2クラスアップするくらい能力が上がる。

いかにジョーは無敵と言っても数百人に代わる代わる高速で搾り取られれば、赤玉数十個必死の摩耗は最早煙も出ない針金になる。

(エイリアンが3mmの針金になる?、伝説の赤玉数十個あればドラゴンだって倒せそうだぞ)

「お酒を召し上がらないで寝ている時でも、興奮なさると相当濃厚な香りがします。

我らパーティーでも3日も合わないと「クラッ」とします。

何とか踏みとどまりますが、7日合わなければ、分かりません。

ですから、毎日、最低でも2日に一度は、添い寝以上をお願いしないと守ることは難しいと思います」


「恐らく、魔物の繁殖力の強い雌などは、強い雄に敏感です。強い雄をモノにするためには、全能力を無理やり覚醒させてでも追ってくるでしょう」


怖い。最早狩る側から狩られる側になってしまった。

今後の行動は慎重にしようと思うジョーだった。

それから、あの指は何なんだろう。

前が殆ど見合ない。

殺せ、ということは、生き物を追っているようだが、いかんせん指が邪魔で見えない。

門番にだれがそこに居たか聞いたのだが、牛が迫ってきていたから締めるのに精一杯でほとんど見ていなかったと言っていた。

ただ、お年寄りや子供が逃げてきて外に行ったのは見ていたそうだ。


月に一度のミジンコ攻撃は、寝ないで防いでいるが、前が見えないで特攻かますのは勘弁してほしい。

何か指が横向くと上と下が少ししか見えない。接戦のパネルクイズで端っこの上下だけでパリ旅行は無理だろ。

対策が浮かばない勇者だった。


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