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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

追放貴族は、最強夫婦の弟子になる!!

作者: 黒色の猫

  ハァハァ、追ってきては、いないな…

 走り疲れた俺は、その場に倒れこみ、今までの事を思い出す。


 ◇


「お前は、今日から、この家のものではない。荷物をまとめてすぐ出ていきなさい。」


「わ…分かりました。」


 俺は、父の書斎を出て、自室に戻る。

 懐から、1枚のカードを取り出し、魔力を流す。

 すると、カードに自分のステータスが浮かび上がる。


[名前] フィーア・バルバドス

[レベル] 1 [種族] 人間 [年齢] 8 [性別] 男

[ジョブ] なし

[体 力] 50

[魔 力] 50

[攻撃力] 20

[防御力] 15

[敏捷性] 10

[スキル] 強化

[称号] 子爵家嫡男


 ステータスを再度確認して、ため息をつき、カードをしまう。


「相変わらず、弱いな俺…」


 俺は、魔法にたけているこのバルバドス子爵家の嫡男として生まれた。

 先日、ステータスの儀で、ステータスカードを授かった。

 魔法スキルは、何一つ授からなかった。これを見た、父から今日追放を言い渡されたのだ。

 母さんがいた、以前の父なら追放まではしなかっただろう。だけど、母さんは、5年前、流行り病で無くなってしまった。もしかしたら、そこから、父はおかしくなったかもしれない。

 2年前に、再婚をし、よりいっそう、おかしくなった。一言でいうなら、義母の傀儡かいらいだ。

 たぶん、追放も義母の差し金だろう。俺の義弟…自分の息子を領主にするためだろう。だから、今回の魔法スキルなしは、義母にとって俺を追い出すための最高のタイミングだったんだろう。

 元より少ない荷物をまとめ、部屋を出た。すると、


「あれれ、そこにいるのは、落ちこぼれさんではないですか。まだ、いたんですか?」


 義弟の性格は、義母に似て、最低だった。まぁ、あの親にして、この子ありって感じだ。


「あぁ、もう出てくよ。」


「なんだ、やっと出ていくのですか。これで、同じ空気を吸わなくて、清々しますね。」


「それじゃあ、俺は失礼するよ。」


 義弟の横を通りすぎ、外へとむかう。


「お坊っちゃま。」


 足を止め、振り返ると、執事服を着た、初老の男性がたっていた。


「なんだ、バトラか。」


 バトラは、長年、父の執事をしてくれている人だ。


「どうかしたかい、見送りは、義母が禁止していた筈だけど?」


「渡すものがありまして。これを。」


 バトラは、小袋を取り出し、手渡してくる。

 中を見ると、数枚の金貨が入っていた。


「ペール様からです。」


「父さんが?」


「はい。」


「ありがとうって伝えといて。それじゃあ、バトラ、父さんをお願いね。」


「はい。」


 俺は、屋敷を出て、街へとむかった。


 ◇


 街へと来て、宿屋へむかう。

 ここでいいか。早速中へ入ろうとすると、宿屋と家屋の間に、小さな子供が座り込んでいた。

 俺は、子供に近づき、声をかける。


「どうかしたかい?」


 その子は、顔をあげ、虚ろな目でこちらを見てくる。

 ボロボロの服に、ボサボサの肩まである、紫色の髪。瞳の色も髪と同じ紫色。どうやら、女の子のようだ。

 もう一度、優しく、声をかける。


「どうかしたかい?」


「お…お腹…へった。」


 どうやら、お腹減っているようだ。

 もうそろそろ、お昼時。


「そっか、俺も今からご飯食べるから、一緒にどうかな?」


「い…いいの?」


「いいよ。それで、君の名前は?」


「ま…マリア。」


「マリアか。いい名前だね。俺は、フィーア。フィーでいいよ。」


「ふ…フィーお兄ちゃん。」


「フィーでいいよ。」


 マリアは、首を横にふる。。


「まぁ、いいか。それじゃあ、行こうか。」


「うん。フィーお兄ちゃん。」


 手を繋ぎ、宿屋に入ると、追い返された。

 なんでも、マリアの見た目がダメだったらしい。


「ご…ごめん…なさい。」


 頭を撫でてやる。


「大丈夫だよ。」


 宿屋から出て、近くの屋台へと行き、ご飯を済ませる。


「お腹一杯になったかい、マリア。」


「うん!!」


 輝くような、笑顔だった。


「そういえば、マリアの両親は?」


「い…いない。」


「そっか、ごめんね。」


 沈んだ顔をした為、頭を撫でると、マリアは喜んだ。

 俺はいいとして、マリアの寝る所は、どうしよか…

 そうだ、あそこに行くか。


「なら、ついてくるかい?」


「うん!!」


 俺たちは、街の隅っこにある。教会にむかった。

 ここなら、たしか、孤児の面倒も見てくれるはずだ。


「すみませーん。」


「ハイハイ、何だい。」


 少し、年を召した女性が出てきた。


「ん、何だい、領主のとこの坊主かい?」


 俺は、ここでステータスの儀を行ったので、だから、面識があった。


「それで、今日はどうかしたかい?」


「すみませんが、この子を預かってほしいのですが?」


「ん、何だい、その子?」


 マリアは、俺の後ろに隠れている。


「孤児でして…」


「そうかい。分かったよ。」


「私は、ジェニー。名前は何って言うんだい?」


 ジェニーさんは、膝をつき、マリアに目線を合わせる。


「ま…マリア。」


「そっか、マリアっていうのかい。いい名前だね。マリアは、今日からここに住む事になるけど、大丈夫かい?」


「ふ…フィーお兄ちゃんも一緒?」


「フィー? あぁ、坊主の事かい?」


 マリアは、首を縦にふる。


「どうするんだい、坊主?」


「ジェニーさんがいいなら…」


「分かったよ。ついてきな。」


 そうして、ジェニーさんについていく。

 夜、マリアが寝静まったあと、お世話になるジェニーさんに、今までの経緯を説明する。


「そうかい。坊主も、大変だったね。」


「いえ、これで良かったのかもしれません。そのおかげで、マリアを救えましたし。」


「お人よさだね。まぁ、今日はもう遅い、坊主も、寝な。」


「はい。それじゃあ、おやすみなさいジェニーさん。」


 ◇


 世があけ、目を覚ます。マリアは、隣で寝ている。物音を立てないように、起き顔を洗いにいく。部屋を出ると、ジェニーさんとすれ違う。


「おはようございます、ジェニーさん。」


「あぁ、おはようさん。もう、起きたのかい坊主。」


「はい、一応、居候の身なので、少しでも何か出来ればと思いまして。」


「いい心がけだね、坊主。」


「それじゃあ、顔を洗ってきます。」


 外に出て、井戸から水をくみあげる。

 すると、首の後ろに強い衝撃が走る。

 倒れ様に、振り向くと、黒装束を着た誰かが、立っていた。


 ◇


 バシャン


 坊主に拭くものを持っていこうとすると、水の溢れる音がした。


「何だい、まだ、寝ぼけているのかい坊主は。」


 外に出て見ると、そこには、桶だけが落ちていた。

 今まで、水を組んでいた人物がいなかった。


「どこだい坊主!!」


 呼んでみるが、返事はない。


「坊主!! 坊主!!」


「どうかしたの?」


 マリアが起きて来ていた。


「あれ、フィーお兄ちゃんは? フィーお兄ちゃん!!」


 マリアが呼ぶが、やはり、返事はない。


「お兄ちゃ~~~~~~ん。」


 マリアが泣き出す。

 私は、マリアを抱きしめる。


「ほら、女がすぐ泣くんじゃないよ。坊主ならすぐ戻ってくるさ。」


「ほ…本当?」


「あぁ、本当さ。だから、マリアもしっかりするんだよ。」


「うん、私も頑張る。」


「そうさ、その息さ。」


 坊主どこに行ったんだい。必ず戻ってくるんだよ。

 マリアを抱きしめながら、そんな事を考えた。


 ◇


 ん、ここは。目を覚ますと見知らぬ所に転がっていた。


「はい、捕らえました。どうしましょう。はい、はい。」


 誰かと、話しているようだ。

 自身の体調を確認する。首の後ろはまだ、痛むが、体は動く。あの人が誰だか、分からないが、ここから、逃げないと…


「はい、はい。分かりました、イーブル様。処分します。」


 黒装束の人が、近寄ってくる。


「よし、まだ、寝てるな。処分する前に、用でも足してくるか。」


 黒装束の人は、俺から遠ざかり、森へ入っていく。

 今だ。

 なるべく、音を立てないように、起き上がり、黒装束の人とは、逆の方向に走り出す。

 先程の場所から声が聞こえるが、無視して、全力で走り出す。


 ◇


 用から、戻ってみると、あいつがいなかった。


「くそ、あいつ起きてたのか!! でもまぁ、殺す手間が省けたな。しかも、あいつ森の奥へ、いきやがったな、馬鹿な奴だ。森の奥じゃあ、俺どころか、S級の冒険者でも、尻尾を巻いて逃げ出すほどモンスターがうじゃうじゃいる死の森なのにな。まぁ、一応、森の外で数日間は張っておくか。」


 俺は、数日間森の外で、あいつが出て来ないかを確認する。

 出てこないのを確認し、死んだ事を、イーブル・バルバドス様に報告する。


 ◇


 回想から戻った俺は、思っていたことを口に出していた。


「それにしても、命まで狙うかね、義母…いや、イーブルのやつは。まぁ、でも俺もここまでだろうな。」


 がむしゃら、走った為、道はわからない。この森も、どこか分からないが、予想はつく。バルバドス領で、人を殺しても、足がつかないところといったら、死の森しか思い浮かばない。今まで、モンスターに出くわさない方が不思議なくらい、死の森には、たくさんのモンスターがいたはずだ。どうしたものか…


 ガサガサ


「!?」


 倒れたまま、音のする方を、見てみると、そこには、赤黒い毛の身長が5mはある大型の熊がそこにいた。熊はこちらに気づいているようで、のそのそと近づいてくる。

 力が入らない足に、鞭うって、体を起こし、逃げ出そうとするが、


「がぁ!!」


 強い衝撃が走り、気づけば、木に叩きつけられていた。

 口からは、血が吹き出し、お腹はじわりと熱を帯びてくる。手足は動かそうとするが、全く動かない。意識は失いそうで、失わず、逆に痛みでよりいっそう意識がはっきりしだす。

 唯一動く、目を動かし前を見ると、俺を殴ったであろう、熊は目の前まで来ていた。

 俺は、ここで死ぬのだろうと、思いながら、目を閉じ今までの事を振り替える。

 母さん、父さん、バトラ……最後に何故か助けた少女、マリアの顔が思い浮かぶ…


「マリア、一緒に入られなくて、ごめんね… 幸せに…」


「グルァァァァァァァァァ。」


 ドシンッ


 突然の唸り声と、重たいものが倒れたような音が、聞こえた。

 目を開けてみると、熊は倒れており、そのそばに、金髪の青年が、立っていた。

 何故か、安心したのか、痛みもあるのに俺は、意識が途絶えた。


 ◇


「君、大丈夫かい?」


 木に寄りかかっている、少年に話しかけるが、返答はない。

 焦った僕は、すぐに近づく。


 ヒューヒュー


 良かった、生きているようだ。だが、傷が酷いな。


「回復魔法は、シェーンの得意分野だったから、苦手なんだがな、まぁやれるだけやってみてみるか。 完全回復パーフェクト・ヒール


 しっかり、回復できているのを、確認する。


「良かった。でも、ここにいても危ないよな。連れていくか。」


 少年を背負い、森の奥へ、連れていく。


 ◇


「ん、ここはどこだ。」


 辺りを見渡すが、森の中ではなく、部屋の中にいた。

 うろ覚えの記憶を手繰ると、


 バサッ


 勢いよく、布団をめくり、お腹の傷を確認する。


「あれ? 傷がない。腕も足も動く。」


 ガチャ


「!?」


 扉が開き、巻き角を生やした綺麗な女性が入ってきた。


「あら、起きたのね。体調は大丈夫?」


「は…はい。大丈夫です。 貴方は?」


「あら、ごめんなさいね。私は、ルウよ。」


「ルウさん? 傷は貴方が?」


「傷? 違うわ。傷はロイが治してくれたのよ。」


「ん、少年が起きたのかい?」


 すると、ルウさんの後ろから、先程森で見た、金髪の青年が入ってきた。


「貴方が、ロイさん?」


「あぁ、そうだよ。傷は大丈夫そうだね。」


「はい、おかげさまで。傷を治してくださって、ありがとうございます。」


「どういたしまして。それにしても、何で君みたいな少年がこんな森に?」


 俺は、今までの経緯を全て、ロイさんとルウさんに、全て話す。


「そうか… 大変だったね。 この後は、どうするつもりだい? 街に帰るなら、送り届けるよ。」


 俺は、少し考え、胸の奥に秘めたる思いを口にする。


「お…俺は、強くなりたいです… だから…俺を弟子にして下さい!!」


 俺は、頭を下げる。


「強くなりたいか… 懐かしいな… だけど、僕の弟子になっても、強くなれるかは、分からないよ。」


「それでも… お願いします。」


「ロイ…」


「あぁ、分かってる。分かった。だけど、僕は、厳しいよ。」


「はい!! ありがとうございます。精一杯、頑張ります!!」


 そして、俺は、ロイさんの弟子になった。



 ◇


 ~4年後~


「ロイさん、ルウさん、今まで、お世話になりました!!」


「どういたしまして。でも、頑張ったのは、フィーア君、君自身だよ。」


「そうよ、この4年間、フィー君頑張ったもんね。」


「それもこれも、ロイさんとルウさんのおかげです。」


「それじゃあ、フィーア君、気をつけて帰るんだよ。」


「フィー君、気をつけてね。」


「はい。」


「あ、これは、僕からの餞別。」


 ロイさんから、小さな、鞄を受けとる。


「これは、私から。」


 ルウさんからは、指輪を貰う。


「あの、これは?」


「僕から渡したのが、魔法鞄マジック・バック。僕が冒険者の頃、使っていった物だよ。」


魔法鞄マジック・バックですか!!」


「僕のお古でごめんね。それでも、収納量は結構入るんだよ。」


「いえいえ、全然大丈夫です。ありがとうございます。」


「そして、こっちは、転移の指輪。」


「転移の指輪ですか?」


「あれ、この時代の人は知らないのかな?」


 ルウさんから、説明を聞いて、驚いた。


「そんなものが、あるんですね。でも、本当に貰ってもいいんですか?」


「うん。フィー君、頑張ったから、ご褒美かな?」


「本当に、ありがとうございます。」


 少し、話をし、


「それじゃあ、ロイさん、ルウさん、行ってきます。」


「いってらっしゃい、気を付けるんだよ、フィーア君。」


「いってらっしゃい、フィー君、いつでも帰って来てもいいからね。」


「はい!!」


 そのまま、俺は、振り返らず、その場をあとにした。


 ◇


「行っちゃたね、フィー君。」


「そうだね。」


「それにしても、ほんとうに強くなったね、フィー君。」


「そうだね。まさか、僕たち、2人を相手にして、互角以上まで、戦えるとは正直思わなかったね。」


「そうね。フィー君頑張ったもんね。フィー君、この先、大丈夫かな?」


「大丈夫だよ。何たって、(元勇者)ルウ(元魔王)の弟子なんだから。」


「ふふ、そうね。」


 僕たちは、フィーア君が見えなくなるまで、その背中を見守った。


 ◇


 少し歩くと、何かを通り抜ける感覚がする。ルウさんの結界魔法だ。この4年間で、俺が覚えたスキルは結局2つだけだった。

 だから、俺は、最初のスキルをひたすら鍛えまくった。

 カードを取り出し、魔力を流す。


[名前] フィーア・バルバドス

[レベル] 99 [種族] 人間 [年齢] 12 [性別] 男

[ジョブ] なし

[体 力] 2030

[魔 力] 3020

[攻撃力] 1010

[防御力] 1500

[敏捷性] 1495

[スキル] 強化 初級魔法 料理

[称号] 追放貴族 最強夫婦の弟子


 前よりは、確かに強くなった。それでも、ステータスは、ロイさんとルウさんと比べると、まだまだだ。スキルを使って、やっと相手になるくらいだった。

 カードをしまい、教えてもらった、街の方へ、歩いていく。


「グルァァァァァァ。」


 目の前に、体長5mの熊が現れた。


視覚超強化(鑑定)


[名前] なし

[レベル] 70 [種族] 赤血熊ブラッディー・ベア[性別] ♂

[体 力] 3800

[魔 力] 300

[攻撃力] 1500

[防御力] 1820

[敏捷性] 800

[スキル] 怪力


「これなら、2倍でいいかな。」


攻撃力超強化2倍(神豪力) 敏捷性超強化2倍(神速)


 1歩で、赤血熊ブラッディー・ベアの目の前に来て、頭めがけて、1発。


 パンッ


 赤血熊ブラッディー・ベアの頭は、吹き飛び、絶命する。


「よし、こんなもんかな。強化解除。」


 赤血熊ブラッディー・ベア魔法鞄マジック・バックに入れてから、街を目指す。

 その後も、何度か戦闘を行い、とうとう森を抜けた。


 ◇


 私は、井戸の桶を持ち、空を眺める。


「マリア、戻っておいで。」


「は~い。」


 私は、もう一度、空を見上げ、


「フィーお兄ちゃん… 私、ずっと待ってるね…」


 桶を片付け、教会に戻る。

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