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クールな巳波がデレるまで  作者: 涼ミ音エイ
川原で見た夕焼けは良い思い出になる
3/12

第三話 川原で食べるパフェは甘い

 放課後。二人はいつもの川原にいた。


「よぉ、こんなとこで……ほんとに何してんだ⁈」

「パフェ食べてる。見ればわかるでしょ?」

「分かるけど、分からない」

「はむ……」


 巳波(みなみ)の口にイチゴが消えた。

 イチゴにチョコにバナナにアイス。贅沢を詰め込んだパフェグラスはオレンジ色の陽を反射している。


「乙女の食事をそんなにジロジロ見るものではないわ」

「ああ。ごめん」


 春樹(はるき)は謝ると彼女から一歩離れた場所に腰を下ろした。今日は制汗スプレーを使って臭いを消している。

 だからか、パフェの甘い匂いが春樹まで漂ってきた。


「何処で買ったの?」

「パフェラってお店。ここに来る道にあったでしょ」

「気付かなかった。パフェの店なんてあったっけ?」

「毎日ここを通っているくせに気が付かないなんて節穴ね。あなたの目は持ち主に似て役立たずみたい」

「凄い言われよう」


 巳波はもう一口パフェを食べた。


「どうせ「巳波さんの食べたパフェの残りを舐めたいなー」なんて思っているんでしょ? 気持ち悪いわ」

「なんか、パフェを食べるたび辛口になってない?」

「辛口じゃなくて、悪口よ」

「よりたちが悪い」


 春樹は小石を川に投げ入れた。小石は波を立てることなく流されていった。


「で、なんでこんな所で食べてるわけ?」

「川を見ながらパフェを食べるってそんなに可笑しいことかしら?」

「可笑しいよ。あれ? 可笑しいよね? 自信なくなってきた」

「パフェと川は切って切れない関係でしょ?」

「いや、全然切れると思う」


 春樹は形の良い石を川に放つ。石は波紋を作り川を進んだが、向こう岸に着く前に川の流れに飲み込まれた。


「なにがそんなに納得いかないのかしら? パフェはテラスでお上品に食べるものなんて誰が決めたの?」

「別に川で食べちゃいけないなんて言ってないけどさ」

「じゃあ私が何処で何を食べようが文句はないわね」

「まぁ……」


 巳波は「ふふん」と笑うと見せつけるようにアイスの乗ったスプーンを口に咥えた。

 いつしかパフェグラスの中は残り少なくなっている。


「どう? 欲しい?」


 巳波が最後の一匙を春樹の目の前にぶら下げた。

 彼女はいじわるな笑顔を浮かべ、スプーンを揺らす。


「ありがとう」

「へっ///?」


 春樹は巳波の差し出したスプーンに食いついた。

 巳波はスプーンを持ったまま固まっている。


「甘いね」


 巳波の顔は夕日に照らされていた。

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