第三話 川原で食べるパフェは甘い
放課後。二人はいつもの川原にいた。
「よぉ、こんなとこで……ほんとに何してんだ⁈」
「パフェ食べてる。見ればわかるでしょ?」
「分かるけど、分からない」
「はむ……」
巳波の口にイチゴが消えた。
イチゴにチョコにバナナにアイス。贅沢を詰め込んだパフェグラスはオレンジ色の陽を反射している。
「乙女の食事をそんなにジロジロ見るものではないわ」
「ああ。ごめん」
春樹は謝ると彼女から一歩離れた場所に腰を下ろした。今日は制汗スプレーを使って臭いを消している。
だからか、パフェの甘い匂いが春樹まで漂ってきた。
「何処で買ったの?」
「パフェラってお店。ここに来る道にあったでしょ」
「気付かなかった。パフェの店なんてあったっけ?」
「毎日ここを通っているくせに気が付かないなんて節穴ね。あなたの目は持ち主に似て役立たずみたい」
「凄い言われよう」
巳波はもう一口パフェを食べた。
「どうせ「巳波さんの食べたパフェの残りを舐めたいなー」なんて思っているんでしょ? 気持ち悪いわ」
「なんか、パフェを食べるたび辛口になってない?」
「辛口じゃなくて、悪口よ」
「よりたちが悪い」
春樹は小石を川に投げ入れた。小石は波を立てることなく流されていった。
「で、なんでこんな所で食べてるわけ?」
「川を見ながらパフェを食べるってそんなに可笑しいことかしら?」
「可笑しいよ。あれ? 可笑しいよね? 自信なくなってきた」
「パフェと川は切って切れない関係でしょ?」
「いや、全然切れると思う」
春樹は形の良い石を川に放つ。石は波紋を作り川を進んだが、向こう岸に着く前に川の流れに飲み込まれた。
「なにがそんなに納得いかないのかしら? パフェはテラスでお上品に食べるものなんて誰が決めたの?」
「別に川で食べちゃいけないなんて言ってないけどさ」
「じゃあ私が何処で何を食べようが文句はないわね」
「まぁ……」
巳波は「ふふん」と笑うと見せつけるようにアイスの乗ったスプーンを口に咥えた。
いつしかパフェグラスの中は残り少なくなっている。
「どう? 欲しい?」
巳波が最後の一匙を春樹の目の前にぶら下げた。
彼女はいじわるな笑顔を浮かべ、スプーンを揺らす。
「ありがとう」
「へっ///?」
春樹は巳波の差し出したスプーンに食いついた。
巳波はスプーンを持ったまま固まっている。
「甘いね」
巳波の顔は夕日に照らされていた。
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