ショートショート⑮ フラッシュモブ
俺の人生はもう直ぐ終わる
あーあこれが走馬灯っていうやつか
頭の中で再生されたのは俺が生まれた時からの人生だった
目の前にいるのは親父とお袋、兄もいる
喜んでるなー
俺を見て
俺の家はいわゆる普通の家庭
会社員の父親と専業主婦の母親
2人は見合い結婚で兄と俺を育ててくれた
兄は特別意地悪でもなく優しいわけでもなく、それなりに仲良かった
小学校では学級委員長になって人気者になることもなく、いじめられて辛い生活を送ることもなく、それなりに友達を作って卒業した。
中学校と高校では、部活には入ったものの漫画のようにエースで全国大会を目指すわけでもなく、同級生との大恋愛もすることなく卒業した
卒業後は地元の会社に流れるように就職し、職場結婚をして子供を2人授かった
そんな子供2人も無事親元を離れ、この間妻にも先立ってしまった
ここまで聞いてくれたあなたならきっとこう思っているでしょう
「本当に普通の人生」
だと
そうなんです
俺の人生は可もなく不可もない人生だった
自分でも不思議でしょうがない
びっくりすることも大きな事件に巻き込まれることもなく終わる俺の人生
とても自分の人生を歩んでいるとは思えないのです
そんなことを話している間にもうそろそろ終わりそうです
人生を辿った走馬灯も
さあお別れです
私の普通の人生
「………」
あれ声が聞こえてきた
「お疲れ様でした」
「これにてフラッシュモブ終了です」
あーなるほど俺は他人の人生のフラッシュモブをしていたのか
それなら普通すぎる人生も納得だ
あなたの人生は他人のフラッシュモブではなくあなた自身のものですか?