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9位 忠度 (平忠度)、平家物語 (作者不明)、小説
平忠度。
12世紀、平家の武将である。文武両道に優れた名将だが、惜しくも一ノ谷の合戦で、一騎打ちの末命を落とす。
その時に箙に結びつけられた文を紐解いてみると、そこには歌が一首。
『行きくれて 木の下かげを宿とせば 花や今宵の主ならまし』
にゃっぽりーとっ!
この短いエピソードに込められた、芸術への執念をみよ!
つまりは、文人としての才もあり、そういう生き方をしたかった人なのに……武人として戦の中で死んでしまうのが、忠度という人なのである。
なんという時代の不運!
これに、胸震わせずにいられようかっ!!
さらに後世、彼の執念に共感したのが世阿弥である。
能 『忠度』 。
花の下で宿をとっていた僧侶の元に、忠度の霊が現れる。
そして、勅撰和歌集 『千載集』 に載った自分の歌が、『よみ人知らず』 となっているのが悔しい、ぜひ自分の名を入れるよう頼んでほしい、と僧侶に訴えるのである。
『花や今宵の主ならまし』 の和歌と、それになぞらえたシーンとがあいまって、執念を美しく昇華させた名作能。
機会があれば、ぜひ鑑賞してほしい。