第21話 AI(愛)の学級対抗戦(前編)
瞬く間に学園生活は過ぎていく
気が付けば定期的に行われる学級対抗戦の時期が近づいていた
FからSクラスまで、代表者を選出し、実技による対抗戦で優劣を決める
その結果によってクラスの格付けが変わるのだ
しかし例年ではSクラスは常に頂点に立ち
裏腹にFクラスは万年最底辺だった
今日のこの時までは
Fクラスは生まれ変わった
頑張ればそれが力になると自信がついた
その自信が更に彼らの原動力となる
かたや、勇樹も成長はしているものの、クラスメートの実力にはまったくついていけていない
しかし、彼を馬鹿にするものは誰一人として居なかった
なぜなら自分たちが苦手な勉強を頑張れたのは
戦闘能力、魔法能力が強くなったのは
すべて彼のお陰だったからだ
「ユウキ こないだのテスト前より10点も点数が上がったぜ!」
「ユウキ 私の魔法をみて教官がびっくりしていたわ」
もう彼らは落ちこぼれでは無かった
クラスメートが嬉しそうに話しかけてくる
それが自分の事の様に嬉しそうな勇気を見て
(馬鹿なんじゃない? お人好しにも程があるわ)
クラスメートが自分よりはるか先に行ってしまっている
なのにそのことを何よりも喜んでいるのが勇樹自身なのだ
彼女にはそれが全く理解できなかった
ただ、憎まれ口をたたいているが、駄女神は駄女神のままだった訳でもない
彼女も攻撃魔法はからっきしだったが、回復魔法ではかなりの実力をつけていた
それが、勇樹のお陰だと彼女も分かっている
だが素直になれない
そんなお年頃なのだ
担任の教師は猛烈に感動していた
(あのFクラスがこれ程の活気をもったクラスにかわるとは)
(すべては彼のお陰だな)
(担任としては恥ずかしい限りだが、人として感謝してもしきれない)
正直、彼は自分の生徒たちを見放してしまっていた
自分の至らなさを棚に上げて
全て、生徒の出来が悪いと言い訳してしながら、毎日を悶々と過ごしていた
彼は自分の過ちに気付かされた
入学したての少年に
如何にも軟弱そうに見えた勇樹に
生徒たちが自分に心を開かなかったのは、彼が心から生徒たちと接しようとしていなかったからだと
だが悔やんでいる暇は無かった
そんな暇があるなら自分に出来る事をやらねば
生徒に申し訳が立たない
「教官 今まで悪かった」
「俺達 何にも分かってなかった」
「だから これからもよろしくお願いします」
クラスメート達から頭を下げられ、嬉しさの余り涙が零れ落ちた
「いや君たちは全く悪くない 悪いのは君たちを理解していなかった私の方だ」
「これからは私の持てる知識全てを、君たちに伝えていくつもりだ」
「君たちが冒険者となり立派に生きていけるように全力を尽くすよ」
勇樹はクラスメートだけでなく
教官の心も救っていたのだ




