プロローグ
世界はAIに管理されるようになった
そのおかげで環境汚染、戦争、貧富の差と言った問題は日々解決へと向かっている
生涯を共にする伴侶もAIが推奨する候補の中から選ばれる
人々は、不満も疑問も持たず平和を享受していた
彼もそんな世界の住人の一人にすぎなかった
彼の名は、山之内 勇樹
年齢は28歳
中肉中背、容姿は良くもなく悪くもない
平凡を絵にかいたような男
職業はプログラマー AIのアバター作成用プログラムを担当している
彼は愛情を知らずに育った
両親はAIが選んだ相手と結婚し彼が生まれた
国民としての義務、法律で決まっているから子供を作り育てただけ
そこに親としての愛情は無かった
それでも勇樹は両親に感謝していた
愛情は与えてもらえなかったが、それ以外のものはすべて与えてくれた
何よりも自分をこの世界に誕生させてくれたのだから
成人し社会人となった後、両親とは会っていない
そもそも両親が今どこに住んでいるのかさえ知らない
彼はAIを作った
とは言え、基幹プログラムは無償で公開されており、それにアレンジを加えていくだけでよかった
彼には交際相手もいない
会社で何かと面倒を見てくれる先輩に誘われてたまに飲みに行く以外交流も無い
仕事から帰っても、たまにゲームをする以外、特にやることもない
ひと時の話し相手になってくれればと
ふと思いついただけだった
そして今、彼は異世界にいる、彼が作ったAIと共に
「さぁ勇樹! 今日も冒険に出かけましょう!」
「そうだね愛 じゃあ行こうか」
今日もクエストを達成するために、拠点にしている宿屋を後にする
彼がなぜ異世界にいるのか?
それを語るには、時間は3年前に遡る事になる