52話 もう一つの決着
鈴木を倒した俺は、すぐにエミリアとシロに合流した。
合流した俺たちは、領主の元に向かうべく、館に中を走っている。
シロを先頭に置き、ディナやエレスたちの匂いを辿って場所を探しているのだ。
走ってる間、二人は俺になにがあったのか、一切聞いて来なかった。
俺の雰囲気を察してくれたんだろう。
館に残存する敵を排除しつつ、俺たちは三階の部屋に飛び込んだ。
「ワシはまだ終わっておらん……まだ次があるんだ!」
「もう諦めなさい、ラングスっ! あなたはもう終わったのよ!」
部屋の中央に立つ中年の男性が、ミトに叫んでいる。
なんか修羅場っぽい場面に出くわしてしまった。
「もう辞めてください、お父様!」
お父様……つまりあれが領主か。
その父親が、実の娘を人質にしている。
この展開はあり得ない。
「あの〜途中からの参加で悪いんだけど……あんた父親だろ? 娘が泣いて頼んでいるのに、どうして辞めないんだ?」
「なんだ……貴様は! 関係ないヤツは黙ってろ!」
確かに関係は無いですけどね。
でも、黙って見てるわけにもいかないんですよ、こう言うのを見るとな。
「カケル、無事だったんだな……良かった」
「……うん……良かった……」
エレスとダイアは、ほっとした表情をしている。
この状況は、ほっとしている場合じゃないと思うんだけど。
「ちょっと、カケル……って言ったわよね? 今邪魔しないでくれるかしら? こっちは取り込み中なのよ?」
「なんだい、キミは? カケルくんは邪魔してないよ?」
「うん。師匠は邪魔してない。お前こそ黙ってて」
「なによ、あんた達は……」
おいおい。
今度はエミリアとシロ、ミトが睨み合いを始めたぞ。
「……貴様らああ! ワシを無視するんじゃない!!」
鼻息荒くした領主が、怒鳴っている。
別に無視したわけじゃないんだがな。そう見えたのか。
「コホン……領主ラングス。さっさとディナを離して、投降すれば、まだ罪は軽くなるかもしれないわよ」
仕切り直したな、この空気を。
「ふふん……なにを今更。国家反逆は極刑しかないのだ……よってワシは投降するつもりはない。帝釈天殿がいれば、何度でもやり直せるんだ……ふっふっふっふ」
「帝釈天? ああ、ヤツなら俺が倒した。だから諦めろ、おっさん」
「嘘をつくんじゃない! 鬼人傭兵団の団長である帝釈天殿が、お前ごときに敗れるはずが無い!」
どうやら信じてもらえないようだな。
えらく信頼されていたんだな、鈴木のやつは。
なら仕方がない。
少し実力を見せてやれば、信じてくれるだろう。
――加速!
「え? え? ミト?」
「な……え、ディナ?」
まあ、ざっとこんな感じだな。
ミトとディナは一瞬驚いていたが、今はお互いの無事を噛みしめるように抱き合っている。
エレスとダイアは、それほど驚いている様子はない。
散々、俺の実力を見てきたからな。
エミリアは、ジト目で俺を睨んでいる。
加速スキルを使ったからだ。
シロはキョトンとしている。
そして……この中で一番驚いているのは、領主ただ一人だ。
「ななななななぜっ、ディナがそこにいる!? いったいどうやった!?」
「スキルを使って、ディナを取り戻させて貰ったんだ。これで俺の言ってる事を、信じて貰えるか?」
この事実を目にして、領主も諦めてくれればいいんだがな。
「認めない……認めないぞ! 帝釈天がいなくても、ワシ一人でも――!?」
領主の顎に、シロのアッパーが見事に決まった。
「うるさい。もう黙って」
シロが怒ってるように見えた。たぶん、父親らしからぬ領主にキレたんだと、俺は思った。
床に倒れた領主に、ミトが跨った。そして――
「領主ラングス・ドゥ・ウィルター! ミト・アーヴァンドの名の下に、あなたの領主の地位を剥奪するわ!」
「な……なんだと!? ワシの領主の地位を……」
領主は力なく項垂れている。いや、今は元領主か。
そんな父親に、ディナがそっと寄り添っている。
「お父様……これで本当に終わりです」
「ディナよ……ワシはただ……ワシは、お前の幸せだけを考えて……」
ゴツ!
ミトの拳が、元領主の顔面にめり込んだ。
「ミト!?」
「な〜にが、ディナの幸せのためよ! 本当に幸せを願うなら、もっと違う方法を見つけなさいよ!」
ミトの言うとおりだ。
それに本当にディナの幸せを願ってやったことかは、怪しいもんだ。
元々そんな事を考えていたところを、鈴木の誘いに乗ったってところだろうな。
「さてと……ディナ、今度はあなたの番よ」
「私の……?」
ミトは優しく微笑むと、
「ディナ・サン・ウィルター……私の名の下に、あなたに領主の地位を与えたいと思うんだけど……どお? やれるかしら?」
「ミト……私なんかがいいの? だって私は――」
なんか、ミトとディナだけで盛り上がってね?
俺たちのこと、忘れてね?
俺とシロとエミリアだけ、ぽつんと取り残された気分だ。
「なんか……俺たちだけ部外者だな……」
「ボクは気にしないけどね〜」
「……ウチ、お腹減った……」
ミトやディナが盛り上がってるなら、それはいい事なんだろう。
俺たち出来ることは、全てやったんだから……もう大丈夫だろう。
「んじゃ、中庭でまだ戦ってるギルドの連中を、助けに行くとするか」
「「お〜!」」




